本当にあった「うれしい!」話し
経営コンサルタント 佐藤 修一
今回は、キャリアについてお伝えしたいと思います。一説によりますと、最近は、キャリアブームだとか?
思いつくままキャリアに関しての単語をあげてみると、キャリアコンサルティング、キャリアカウンセリング、キャリアデザイン、キャリアディベロップメント等然り!
キャリアとはいったいどのような意味なのか?様々な、解釈があるようです。
私は、キャリアとは、轍(わだち)、車が通ったあとに残る輪の跡、それを称して人生そのものと解釈しております。
仕事(経歴)そのものをキャリアと解釈する事もできますが、人生行路としてとらえると、ライフキャリアになると思われます。
前置きはこのくらいにして、私は、仕事柄、キャリアカウンセリングを担当させていただくことがあります。
その体験談を、ご参考に、お伝えしたいと思います。
東北地方のあるメーカーでのことです。工場内で常駐し、カウンセリングを担当しました。
そのメーカーは、不況から、工場を閉鎖する事になり、工場トップを含めた、従業員全員にカウンセリングを実施し、各人の今後の方向性を確認したいとの要望がありました。
ある28歳の男性が業務の合間に、カウンセリングブースに来られました。椅子に座るなり
「工場が閉鎖になることを知り、何も考えられません?」
と話し出しました…………。
一息つき、
− これからどうしよう?
と話しかけると、
「働きたいけれど……」
− やってみたい仕事はあるの?……。
「分からない…」
「高校を卒業して、10年間、早出、夜勤をしながら、毎日、工場と寮の往復で過ごしてきました」……………。− それでは、何かできることは?
「今の工場の製品は作る事ができます」
「それ以外の仕事はあるのですか?」
私は、机の上にある資格全集を見せながら
− 資格を取得しましょうといっているのではなく、資格のある仕事だけでも、世の中にこれほどあるのですよ!
と伝え、渡しました。
10日程過ぎ、彼がやってきて、
「見つかりました。フランス料理の料理人になりたい!」
− やりたい事が見つかりましたね………。キャリアを考える時に大事な要件としては3つあります。
- できる事
- やりたい事
- その仕事に社会的意味、意義を感じられるか
このうち、2は決まったけれど、1はまだだ、どうしよう?
すると彼は
「調理師の資格を取る、フランスに渡りレストランで修行をする、日本に戻り日本のレストランで修行をする、店を出す」
とこたえました。
− 3は、どうかな?
「店に来てくれた家族のお母さんと子供が、“おいしい、おいしい”、といい、お父さんも、“おいしい、明日も頑張るぞ”といってくれるようにしたい」
− それで、3つの要件は、満たされますね?
できる事であっても、やりたい事でなければ、うまくありません。
逆に、やりたい事であっても、できる事でなければ、うまくありません。
できる事、やりたい事が満たされ、さらに、社会的に意味、意義を感じられる事により、動機づけが促進され、やる気が削がれることなく、継続されます。
つまり、1、2、3の要件が重なり合う事の必要性が不可欠となります。
現在、滞ることなく業務を推進されている方も、キャリアの節目には、点検、確認をされることは必要と思われます。
今のままで行くのか、方向転換をはかるのかを自己考察(洞察)し、次のステージに移ります。
前のステージで点検、確認をし、気持ちを引き締め、新たなる意識を持って望むことにより、ソフトランディングが可能となることでしょう。
この移行(転換)期のことは、トランジションといわれています。
トランジションは、無の境地で、何の
制約もなく自由な発想で望む事が肝要です。
悩み事は、辛く厳しいものだけとは限りません。
前向きに悩む事も大切です。
逆に悩みが大きいほど、実りも大きなものになると信じたいと思います。
最近、彼から、連絡がありました。日本でお店を開いたそうです。