「まずは面談してくれるスカウトメールにだけ、返信を出すことにしました。せっかく届いたスカウトメールの半分ほどは無視することになってしまいますが、直感的に直接会って、私を知ってもらう以外にアピールできる方法はないと思ったのです。キャリアシートはいわば、挨拶文。名刺のようなもの。そこから〈私〉という素材を引き出してもらわなければ、自分を活かすことはできないと思ったわけです」
確かに、澤田さんの場合、キャリアシートをそのまま読めば、『事務職のキャリアはないようなものです』『わずか1年程度で転職したいと考えています』ということになってしまう。もちろんそれは事実なのだから、積極的に採用したいと思う会社は多くはないだろう。よって、キャリアシートに現れていること以外の何かに期待してくれる会社にしか、活路を見出せないのではないか。それが澤田さんの考えだった。そこで、会ってみようと言ってくれた企業に直接電話して、面談の日取りを決めることにした。(※3)
「でも、面談を甘く見ていました。最初に行った人材バンクでは、ほとんど露骨な言い方で『あなたに適した仕事は当社にはありませんね』と告げられました」
それでも別の人材バンクで何社か紹介してもらえた。しかし面接で、やはり澤田さんのキャリアの浅さが問題にされてしまう。
面接官:この局面で、わからないことがあったらどうしますか?
澤田さん:まずどなたかご存じの方におうかがいします
面接官:その人の貴重な時間を割いて教えてもらって、その分の代償をあなたはどう補うつもりなのですか?
確かにキャリア採用の場合、企業が求めるのは「即戦力」。ひとつひとつかみ砕いて教えてもらう余裕はないだろう。澤田さんは、理屈が通っていると思うとそれにこだわらない。すっぱりとあきらめることができた。
「ダメだとわかっても、それで暗くなるということはありませんでした。あの会社とは、単純に合わなかった、相性が悪かったんだ。(※4)そう思っていました。あれこれ悩むのだったらひとつでも多く面接をするべきでしょう。企業の方も1人雇うだけでも大きな投資ですから、それこそ必死のはず。たくさんの人の中から、本当に会社の発展に貢献する優秀な人材を捜し出さなければならないのですから、簡単に採用するはずがありません。何社か落ちるのは、むしろ当たり前のことだと考えていました」
|