キャリア&転職研究室|転職する人びと|第6回・後編 33歳からのキャリアチェンジ挑戦

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  普通の人HOTインタビュー 転職する人びと    
       
 
一年間に転職する人の数、300万人以上。
その一つひとつにドラマがある。
なぜ彼らは転職を決意したのか。そこに生じた心の葛藤は。
どう決断し、どう動いたのか。
そして彼らにとって「働く」とは—。
スーパーマンではなく、我々の隣にいるような普通の人に話を聞いた。
第6回 後編 中野和弘さん(仮名) 33歳/経営コンサルタント
突然の不当解雇が人生を変えた 33歳からのキャリアチェンジ挑戦
転職した先では仕事も順調、人間関係も良好だったにも関わらず、経営コンサルタントを目指して転職を決意した中野さん。だがやはり未経験職へのキャリアチェンジは困難を極めた。
目の前に立ちはだかる未経験の壁
弱気の虫を必死に振り払う
 
 2004年11月、経営コンサルタントを目指して転職を決意した中野さんだったが、転職活動は出だしから難航した。まず大手転職サイトや雑誌で求人検索から始めてみたものの、33歳未経験で応募できる経営コンサルタント職はほとんどなかった。

 もちろんスカウト機能も使ってみたが来るのは営業職の求人ばかり。経営コンサルタント職でのスカウトメールは皆無だった。たまに求人検索で見つけた希望に近い職種に応募しても、書類選考さえ通らず、通ったとしても一次面接のその先へはなかなか進めなかった。

 これまで営業としての実績もあるし、中小企業診断士の一次試験に合格している。しかし企業にはなかなか認めてもらえなかった。

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 「仕事や勉強をしながらの転職活動だったので、時間をひねり出すのがたいへんでした。だから不採用通知が届くたびに本当にがっくりきて、次の会社へ応募しようという気になるまでに時間を要しました。ストレスも溜まっちゃって、お酒の量も増えましたね」

 
 やはり未経験で経営コンサルタントはムリなのか……。一時は転職をあきらめようと思ったこともあった。しかし本当にそれでいいのか。己に問うてみた。ここであきらめたら10年後、俺は絶対に後悔する。心の声がはっきり聞こえた。思い出せ。なぜ経営コンサルタントになりたいかを。

 やはり一切の妥協は排除しよう。中野さんはそう心に堅く決め、改めてネットで検索。行き着いたのが【人材バンクネット】だった。

一通のメールがもたらした希望の光
応募企業が見つかった
 
 「以前、人材バンクを利用したことがあるのですが、やはり登録しに行くと1社で2〜3時間かかりますよね。それが【人材バンクネット】なら1度登録してキャリアシートを公開するだけで、自分のスキルを求める人材バンクがキャリアシートを閲覧して、声をかけてきてくれる。これは便利だと思うと同時に、これでダメだったら、もう転職はムリだろうと思っていました」

 祈るような気持ちでキャリアシートを公開してみたところ、その日のうちにスカウトメールが10通以上到着。これならいけるかも。暗闇の中に一条の光を見出したような気がした。

 【人材バンクネット】からのスカウトメールは2週間で計20通ほど届いたが、やはり建設関係の営業職が中心だった。キャリアシートの自己PR欄に「これまで経験してきた営業の仕事はやりません」とはっきり書いたにも関わらず。

 それでも、もしかしたらスカウトメールを送ってきた人材バンクの中に、経営コンサルタントかそれに近い求人をもっているところがあるかもしれない。そう考えた中野さんは、経営コンサルタントの仕事がやりたい旨を改めて明記して、届いたスカウトメールに返信した。その中で最初に「だったらこういう仕事がありますよ」という返信をくれたのが株式会社ビジネス・リーフの土田拓己氏だった。

 
 土田氏からの返信には「業務の一環として経営コンサルティングも手がけている会計事務所がコンサルタント候補を募集している」と書かれてあった。

 「このメールをもらって一週間考えました。確かにやりたい仕事に一番近かったのですが、経理・会計に関する知識は皆無。会計事務所がどういうものかすら分かっていませんでしたから」

 
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 しかし会社の経営は売り上げから成り立っている。これからコンサルタントになるには、まず財務・会計から入っていくのが一番の近道(※1)なのかもしれない。現時点での自分のキャリアでは難しいかもしれないが、話だけでも聞いてみよう。中野さんはメールを受け取った一週間後に、ビジネス・リーフに赴いた。
年収ダウンより夢の追求
目標が人を強くする
 
 「未経験だからといって不安に思うことはありません。そもそも会計と経営の両方が分かる人なんて滅多にいませんから。それよりも経営コンサルティングという仕事に使命感をもち、新しいことにチャレンジしようという意欲を持った人を企業は求めてるんです」

 ビジネス・リーフの土田氏のこの言葉に胸が熱くなった。そのほか会社についての情報や業務内容などの説明をひととおり聞いて、ベストに限りなく近いベターな求人だと判断。応募を決意した。

 

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転職動機
●やりたい仕事−コンサルティングができる
  ● 財務の勉強もできそう
  ●未経験でも大丈夫
 
 2月4日に行われた面接には社長と直属の上司となる経理課長が登場。まじめな性格の中野さんは当初かなり緊張していたが、担当コンサルタントの土田氏が同席し、要所でフォローしてくれたおかげですぐに落ち着きを取り戻せた。

 「未経験だけになぜ経営コンサルタントになりたいかや、コンサルティングという仕事にかける意気込みを一生懸命語りました」

 それが奏功したのか、二日後、土田氏経由で内定を知らされた。しかし条件は厳しかった。最初の1年間は通常業務を行いつつファイナンシャルプランナーの資格取得を目指して勉強すること。さらに提示された年収は前職に比べ30万円ダウンの金額だった。

 「未経験の場合、どこでも最初の2〜3年は修行でしょう。年収もダウンしましたが、それよりもやりたいことに一歩近づけたことの方が重要ですから。やる以上は必ず一年後にファイナンシャルプランナーの資格を取って、年収交渉のテーブルにつきますよ。でもあくまで資格取得じゃなくて、会計の知識を身に付けることが目的ですけどね」

 現在中野さんは決算書の分析や経営者向けのセミナーの準備など通常業務の傍ら、ファイナンシャルプランナーと中小企業診断士の勉強に打ち込んでいる。平日は帰宅後深夜まで、土日は丸一日勉強に費やす日々。しかしそんな毎日も苦ではないという。

 「私には経営コンサルタントになって、中小企業の経営をよくしたいという夢がありますから。それが私のように突然解雇される人を減らすことにつながると思うので」

 目標があれば人はここまで強くなれる。中野さんの目はそう語っているようだった。

 
 転職活動データ
  活動期間:4カ月
応募:10社
面接:5社
内定:2社(1社は営業職だったので辞退)
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コンサルタントより
株式会社ビジネス・リーフ
 代表取締役 土田拓己氏
  志望動機と今後の目標を
 明確に言えたことが大きい
 
土田拓己氏
   中野さんの第一印象は「真面目で誠実」でした。  

 物腰は非常に柔らかで、こちらの話をよく聞き、論理的に話せました。今回の求人は会計事務所の経営コンサルタントだったので、そんな全体からにじみ出る誠実さがプラスになると思いました。

 また、経営コンサルタントとはいってもコンサルティング、営業、セミナーの講師など仕事は多岐にわたるので、未経験の仕事でもチャレンジしてやろうという熱意のある人を探していましたので、この点でもぴったりでした。

 経営コンサルタントと営業は仕事の面で重なり合う部分が多いんです。営業の延長線上にあるのが、経営コンサルタントといっても過言ではありません。どちらも最終目的は企業の問題解決ですから。中野さんの営業としての経験・実績はかなりのアピールポイントになりましたね。

 さらにこの仕事は一生勉強を続けていかなければなりません。中小企業診断士の勉強をずっと継続していたのもプラスに働きました。

 面接でよかった点は「なぜ経営コンサルタントになりたいか」と「なってからどうしたいか」を終始一貫して理路整然と語れたことだと思います。ここは採用判断時にもっとも重視されるポイントですからね。

 現在、会計・財務業界は業界再編の変動期にあります。これからは営業ができない経営コンサルタント、会計士、税理士は間違いなく淘汰されていくでしょう。そういう時代のタイミングも味方してくれたのかもしれませんね。

 そういう意味では、今回のような求人は現時点では希少ですが、今後増えてくることが予想されます。経営コンサルタントの経験はなくても、営業の経験、もしくはその適性があると思う方ならチャンスはあります。特に提案型営業のウデを磨きつつ、あきらめずに求人検索をしていれば可能性は高くなると思いますよ。


採用のポイント
   
 誠実、真面目な人柄
 志望動機、将来の夢が明確だった
 営業のキャリアがあった
● 未経験の仕事でも挑戦したいという強い意欲
  ● 勉強を継続していける資質  
 
プロフィール
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東京都出身の33歳。大学卒業後、建築機材のリース会社(約5年半)→印刷用紙の卸会社(約2年半)→紙加工会社(約2年)で営業職を経験。今年3月から会計業務と経営コンサルタントを行う会社に転職。業務の傍ら、ファイナンシャルプランナーと中小企業診断士の資格取得を目指して勉強中
中野さんの経歴はこちら

※1 財務・会計から入っていくのが一番の近道
経営コンサルタントには、税理士や公認会計士など会計畑出身のコンサルタントも多い

 
 
取材を終えて

新しい環境、新しい仕事、資格取得のための勉強と、転職したばかりでストレスもかなり感じているであろうにも関わらず、中野さんは快く取材に協力してくださいました。

話しぶりは静かで、誠実で温和な感じのする方でした。しかし現在の状況や今後の目標を語るときの目はらんらんと輝き、経営コンサルタントになる決意の強さ、さらに人としての芯の強さが現れているような気がしました。

今回、中野さんの話を聞きながら、私の「頑張れる元」は何だろうと考え込んでしまいました。皆さんの「元」は何ですか?

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