中小企業の「強い組織」のつくり方

適材適所を実現するために、まず個人の強みを把握する

株式会社ヒューマンロジック研究所 代表取締役 古野 俊幸氏

[profile] 関西大学経済学部卒 新聞社、フリージャーナリスト、出版社・教育会社を経て、組織能力開発を専門とする株式会社CDIヒューマンロジックの設立に取締役として参画。小林博士のもとでFFS理論の活用、商品開発、組織変革コンサルティングに従事。これまでFFS理論を三百数十社へ導入、組織の最適化、チームビルディングを担当してきた。著書に「人材の適正配置と最適組織編成マニュアル」(共著)、「組織変革への12ステップ」(組織人事監査協会)その他論文多数。

第2回  適材適所を実現するために、まず個人の強みを把握する

組織・人材を把握し、組織デザイン、チーム編成を可能にするFFS理論

FFS理論の基本マトリックス

前号で紹介しました組織体監査は、FFS理論に基づいておこなわれます。今回はFFS理論がどのような理論なのかを説明したいと思います。FFS理論は米国海兵隊の最適組織編成プロジェクトで提唱されたもので、以下の3つの特徴があります。

1. 人間の個別的特性(個性)分析論
5つの基本因子とストレスの概念で、人の思考行動パターンを計量できる
2. 個別的特性(個性)の類型法
個性群を任意の概念で類型できる(ポートフォリオ分析として4タイプ、キャリアデザイン用として31タイプ、その他目的に合わせて何タイプにも類型可能)
3. 個性間の関係性測定法人と人の「人間関係」という心理的な距離を多変量解析し、系統樹と相関係数で表示できる

以上の特徴を利用することで、生産性の高い組織、チームを固有名詞で編成することが可能になるのです。
ではFFS理論の基本因子を説明していきましょう。

●凝縮性因子(自らを固定・強化しようとする力の源泉となる因子)
この因子は、いわゆる「価値観の強さ」に関係し、自分自身を維持・発展させるために、自分が今までの経験上、獲得してきた基準(言葉、習慣、風習、法律、家風、校風、社風など)に合っているものを凝縮し、合っていないものを廃絶してしまう機能を持っています。
特 徴/権威性、支配性、道徳性、理想性、責任感、指導的
●受容性因子(自らの外部の状況を受け入れようとする力の源泉となる因子)
この因子は、「外部の状況」に対して無条件に受け入れる機能を持っています。従って、外部の状況が幸福なときにこそ、自分も幸福になれると思う傾向にあります。
特 徴/寛容的、養育的、受容性、保護的、共感的、肯定的
●弁別性因子(自らの内部・外部の状況を相反分別しようとする力の源泉となる因子)
自分の置かれた状況や自分の心理状態などに関して、それが適性であるか不適正であるかを二分的に弁別する機能を持つ因子です。
特 徴/数理性、合理性、論理性、現実性、分析性、理性的、確率的
●拡散性因子 (自らを拡張・発展させようとする力の源泉となる因子)
自分の現在の内的・外的な状態を維持しようとする時に、外部のエネルギーを積極的に利用し、自らのものとしてしまう方法を選択させる機能を持つ因子。
なおこの因子は、(移動遊牧民族を特徴づけているかのように)遺伝的に決定されている要素が強いです。
特 徴/奔放性、外向性、開放性、創造性、積極性、楽天的、野心
●保全性因子 (自らを保全・維持しようとする力の源泉となる因子)
自分の現在の内的・外的な状態を維持しようとし、その際に自分のエネルギーの損失が最も少なくてすむ方法を選択させる機能を果たす因子。なおこの因子は、(農耕定住民族を特徴づけているかのように)遺伝的に決定されている要素が強いです。
特 徴/内向性、協調性、慎重、敏感、几帳面、順応、従順、妥協

全ての人間は、以上の5因子を全て持っていますが、そのバランスは一人ひとり違います。その違いこそが個別的な特性となり、その人材固有の持ち味、言い換えると「強み」を表すことが出来るのです。
さらに、チームとして組み合わせた時(配置)に、意思の伝達がスムーズに行くか、感情的なぶつかり合いがおこるか、不快になるか、似ている同士が故に議論は対立せず合意形成は早いものの議論不足になってしまう傾向があるか等々を客観的に分析することが出来るのです。
また、ストレス値を同時に診断することで、個々の持ち味がプラスに発揮されているか、ネガティブになっていないかを診断することも可能なのです。
なお、このFFS診断は、三者択一で答える80問の質問文が用意されています。時間的には、6分程度の時間で全て答えることができるようになっているため、データ収集にあまり負担がありません。

さて、FFSデータが取れて組織体監査が終了したとします。これから、組織の最適化を考えていきましょう。

株式会社ヒューマンロジック研究所
コンビネーション・マネジメントのメソッドを活用して、経営支援(組織の最適化、組織変革、チームビルディング、チームマネジメント)、経営代行(労働集約型企業の経営請負)、事業開発(新規事業開発、FC化)を手掛けている
URL:http://www.human-logic.jp/
2004.1.15 update

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