成功するシニアの採用

「シニア・プロフェッショナル」を「監査役」として迎える

森村 学

前回の事例で書いた「顧問・アドバイザー」と同様、「監査役」も閑職・名誉職というイメージが強い職種です。「閑散役」と呼ばれることもあるくらいですから。
しかし、昨今の監査役は「閑散役」では済まされなくなってきていることは、本コラムをご覧の皆様には言うまでもないことでしょう。責任も厳格化され、重要なポジションであることが明確となりました。
特にIPOを目指す等、更なる成長を考えている企業、急成長をしている企業においては、その事業規模の拡大に組織(企業)の成長が追いついていかないことがしばしばです。実務を担っていただく方として的確な人材を採用する必要があるのは当然のことですが、全体を俯瞰する役割が重要となってきます。本来であれば経営者が担うべき役目ではありますが、中小企業・ベンチャー企業では、経営者といえども現場の実務を自ら担うことも多く、細かなところまで目は行き届かないのも事実です。「小さなひずみ」が取り返しのつかないことに発展しないとも限りません。
そこで必要となってくるのは、豊富な経験をもとに、現状の不備な点を指摘し、改善策を練り提案できる監査役の存在です。

長年のビジネスマン経験の中で、在籍していた企業の成長や落ち込み、自らの成功も失敗も数多く経験しているシニア・プロフェッショナルが経験や知恵を伝授していくという観点から、シニア・プロフェッショナルの豊富な経験を活かすためには、監査役はうってつけです。実際に、プロフェッショナル・マスターズの紹介実績で最も多いものは、更なる成長を目指す中小企業・ベンチャー企業の常勤監査役です。
「常勤監査役=経理経験者」というイメージをお持ちの方も多いですが、最近では非常勤監査役に士業(会計士、税理士、弁護士等)の専門家を置き、常勤監査役には業務監査が強く求められます。つまりは、経理財務の実務経験がなくても、その他の職種・分野での豊富な経験があれば、常勤監査役となることは可能です。むしろ、営業や経営企画を経験された方がマッチするようなケースも多くなってきています。

紹介事例については別の機会に書かせていただくとしますが、大企業の常勤監査役と、中小企業、特にベンチャー企業の常勤監査役では、役割が明確に違っています。
監査計画はおろか、社内の仕組み自体をこれから構築していく状況であるため、自ら積極的に動いて情報を収集していかなくてはなりません。
選任スタッフもいないので、書類作成にしても、自ら手を動かさなければなりません。
成長過程の中で発生する諸処の課題について、経営者の良き相談相手にもならなければなりません。
若い社員とも目線を合わせて接していき、時には「ガス抜き」をしてあげなければなりません。
知識や経験以上に、人格力が強く求められます。

監査の経験はなくとも、監査役の業務を行うに必要な知識については、ビジネスマンとして豊富な経験の中で備わっている方は多くいらっしゃいます。ですが、年功序列の社会に染まり、度々登場する「シニアに対する先入観」そのもののような方では務まらない仕事です。
豊富な知識・経験と人格力を兼ね備えた方、つまりはシニア・プロフェッショナルならではのポジションと言えるでしょう。

森村 学(もりむら まなぶ)
株式会社ライフデザインコンサルティング プロフェッショナル・マスターズ事業部 事業部長
1966年生まれ。
システムエンジニア、営業職を経て、2000年、人材紹介業界へ転職。ベンチャー・中小企業を中心に担当。

2006年、監査役・顧問・アドバイザーを専門とした人材紹介サービス「プロフェッショナル・マスターズ」の設立に参画。
豊富な経験と知識を持つ「シニア・プロフェッショナル」を成長企業の常勤監査役や課題解決のための顧問・アドバイザー職としての採用実績を重ねている。
2007.12.13 update

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