経営課題のための人材・組織戦略

経営資源としての人材・5/5

株式会社クイック ヒューマンキャピタル総合研究所

人材の3つの要素

もちろん、どの段階でも企業はよい人材・優秀な人材を求めてはいるのですが、現実の企業の採用力と妥協して、せめてこれだけはという内容が、まず意欲、次に能力、最後にパーソナリティという順序になっているようです。さて、そこで最初の問いかけに戻ります。皆様は、意欲、能力、パーソナリティの3つの中でどれが最も扱いやすく(マネジメントしやすく)、どれが一番扱いにくい(マネジメントしにくい)と思われますか。

答えは、意欲→能力→パーソナリティの順になります。社員にやる気がないとお悩みの経営者の皆様には意外かもしれませんが、意欲が最もコントロールしやすいのです。朝一番やる気満々で出社した社員が、上司の不適切な一言でその日一日やる気を無くすというのはよく見かける風景ですし、反対に夫婦喧嘩でもしたのか不機嫌に出社したものの、お客様から良い内容の電話でも頂こうものなら、一転やる気が出てくるものです。

短期的な周期でのやる気の変化から、深く長期的な変化まで多様ですが、後で述べる他の条件さえ整えば、やる気に関してマネジメントすることは、さほど困難なことではなくなります(社員にやる気(意欲)がないとお感じなら、社員にとってのマネジメント環境を作り出しているご自身の経営のあり方を見直されてはいかがでしょうか)。

次に能力ですが、もちろん時間はかかるものの、真面目に仕事と自己啓発に取り組んでいれば、経験と学習とともに伸びることは間違いありません。最後にパーソナリティですが、これは先天的ともいえる気質の部分と、4〜5歳程度の幼少期までに両親の育て方や家庭環境で定まる性格からなり、そもそもコントロールの対象と考えるべきものではありません。その人の持ち味(持ち前の特性)を活かす方法を考えねばなりません。

このように見てくると、本来採用の可否と採用後の適性を判断する為に重要視されるべき要素は、[図2]とは反対で、入社後最もマネジメントしにくいパーソナリティの重要度が高く、次に能力、最後に意欲という順序が適切です。特に、組織の成熟度が高い段階の企業に比べ、量の確保が重要であるというような未成熟な企業程、実際には人材一人一人の経営上の重みが大きいわけですから、なおさらパーナリティ重視の採用を行う必要があります。

実はこのパーソナリティという、人間(心理)の根っこにあるものが、職務や職場との適合(合う、合わない)、しいては成果や生産性に大きな影響を与えるものであり、仕組みや教育を含めマネジメントでは対処しにくいものなのです。したがって、まずはこのパーソナリティを重視することが、以降の人材マネジメントの効果を大きく決定することにもなります。

では、なぜパーソナリティを重視した人材マネジメントがあまり行われないのでしょうか。それは、高度な専門性を有するような困難なことなのでしょうか。答えは、人間心理に関する多少の知識や理解は必要ではあるものの、適切な支援ツールさえ用いれば、決して困難なことではありません。むしろ能力や意欲よりもパーソナリティが重要である、という認識が低かった事が原因でしょう。

株式会社クイック ヒューマンキャピタル総合研究所
人材・組織コンサルティング事業(人材開発・組織開発・人材課題・組織課題へのソリューション)、制度企画コンサルティング事業、各種組織管理制度の企画・策定・運営をメインに、人材採用から教育開発・最適配置、組織デザインなど人材と組織における経営課題へのトータルソリューションを展開。
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2002.05.06 update

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