「宇宙って黒いよな」
「？　まあ黒いですね」
「戦闘メカという観点から、ガンダムの赤白青ってデザインはどうなんだ」
「なんで？」
「現代戦において黒バックに赤白青の物体って、"私を撃って下さい！"って言ってるみたいなもんだぞ」
「百式の金色に至っては太陽反射しちゃって、すごい目立つぞ！」
「ああっガンダムはね。騎士道精神に基づいた話なんですよ」
「それはまた異なことをおっしゃる（笑）」
「いやいや、昔武士はデッカイ飾りついた兜被って"ヤアヤア我こそは"って口上述べて戦ってましたよね」
「ふむふむ」
「あれと一緒で自分の勇敢さ、強さを表現して敵と刃を交えるのがガンダム騎士道の世界なわけです」
「おまえ、誘導弾とかレーザーが発達している未来の戦闘で"ヤアヤア我こそは"なんてやってると、"ヤア"って言った瞬間蒸発させられるぞ」
「ああっ、ひげぱわーさんミノフスキー粒子知らないんですね」
「みっ、ミノフスキー？」
「宇宙世紀0069年、ミノフスキー博士が発見した素粒子で、
ガンダム世界ではそいつのせいで電波とか赤色の光とかが伝わらないんです」
「ほほう。」
「だから遠距離の誘導弾攻撃はできないしレーダーも偏光するわけですね。
ですからシャアのモビルスーツが赤いのは逆に迷彩カラーなわけですよ」
「なっ、なるほど」
「というわけで、ガンダムはミノフスキー粒子の為に派手なモビルスーツ作って
真正面からガチンコで戦わざるをえなくなった、騎士道アニメなわけなんです」
「超納得。みっミノフスキーすげぇ」

職場メンツの飲み会で議論を挑んだ方も40代、スラスラと答えてる方も30代後半。
同席していた新人女性社員が異星人を見る目で私達を見ている。
まったくオタクここに極まれりというか、双方大ばか者である。

　学生の頃から、「大人のサラリーマン」という言葉から連想されるステレオタイプなイメージを持っていて、
それは部下には
「君〜！　いかんじゃないか！」と難癖をつけ、
上司には
「はっ部長、本日はお日柄もよくガハハハハ」と媚を売り、
若い女子社員との不倫願望があり、汗臭いテカテカした顔で、
ちっとも面白くない下品な話でガハハハと高らかに笑い、
ゴルフが趣味で週末は嫁子供ほったらかして仕事と理由付けてゴルフ場に通い、
夜はもっぱら大阪なら北新地、東京なら銀座あたりでお姉ちゃんはべらして酒を飲み、
「いやーんパパお寿司食べたい〜」
と言われたら
「ガハハハよしよし」
と自分の社会的ステータスを勘違いして恍惚感に浸る。
という、ちょっと書いてて笑ってしまうぐらいの酷いサラリーマンなわけですが、
幸いな事にこのIT業界という所はあまりそんな学生時代に恐れていた、おっさんサラリーマンに出会うことは少ない。

　かといっていい年した大人が酔っ払いながら、ガンダム世界の物理学を真剣に語り合うのはどうかとも思うが、
「まっまっ社長！　そんな手酌なんて！　週末ゴルフよろしくです！　ガハハハ！」
といいながら飲む酒より、女性社員の白い目に耐えながらそんなバカバカしい話を真剣に語り合うお酒の方が、突拍子も無いビジネスチャンスを見出したりしそうで（まあそれはない）有意義に感じたりするわけです。

　うーむ、今度中途採用する時があったら
"1時間プレゼンテーションしなさい。テーマ「ガンダム」"
とか出題してみようかしら（笑）

　ちなみに自己弁護するわけではないが、普段の私は海を愛し山を愛し、初老のオーナーが作ってくれるドライなマティーニを愛するナイスミドルです。
ガハハハハ‥‥あっ