また、『自殺って言えなかった』(※2)という本があるんです。自殺で父親・母親、主に父親を亡くした高校生や大学生の遺児たちの手記集です。
遺児たちはみんな親の自殺に打ちひしがれて、自分は世界一不幸だと思ってしまうのですが、この本の中に、彼らがどうやって親の自殺のショックから立ち直ったのかが書いてあるんです。
親を亡くした子どものための学資支援と心のケアを行っている「あしなが育英会」(※3)という団体があって、毎年夏に泊りがけでキャンプに行くんです。サポートを受けている遺児たちは全員参加で、そのキャンプの中で自分の親はどうして亡くなったのかを話す時間があるそうなんです。
みんな、病気や事故などいろいろな理由でお父さんやお母さんを亡くしている。その中でも親が自殺してしまった子どもは、親が自殺で死んだとはなかなか言えないんですね。キャンプ生活で仲良くなったけど、みんなの前でそう告白したら、「『あいつの親は自殺で死んだから弱いやつだな』と思われるんじゃないか」と思ってなかなか言えない。話す順番になったけどなかなか言い出せなくて、長い沈黙が続き、やっと5分くらい経ってから自殺の「じ」が言えたっていう子どももいたそうです。でも思い切って自殺だったと告白して、「もうダメだ、もうこれでみんなから相手にされなくなる」と思うんですが、話し終わったあと、みんなが集まってきて優しく受け止めてくれるんです、「つらかったね」と。それによってやっと受け入れてもらえる、自分はひとりじゃないと気付けて、つらい親の自死という事実を受け入れて、立ち直るきっかけをつかむ。そういったことが書かれてあるんです。
まさに衝撃的でしたね。このような手記を読んで、誰かが救ってやるんじゃなくて、本人が勇気を出して告白して、みんなに受け入れてもらうことを体験することによって、やがて立ち上がっていくんだと教えられたんですね。
この本を読んだときも「知らなくてごめんなさい」という気持ちになりました。遺児が勇気を出して書いてくれた手記から、私なんかが彼らを救うなんておこがましいにもほどがあると思い知らされたのです。
※2 『自殺って言えなかった』──小学生から大学生まで、18人の自死遺児たちが思いをつづったはじめての手記集。あしなが育英会から奨学金を受けている大学生、専門学校生で組織する自死遺児編集委員会が、自分たちの「思い」をまとめた。自死遺児編集委員会、あしなが育英会編集/サンマーク出版。詳しくはこちら
※3 「あしなが育英会」——何らかの理由で親を亡くした子どもの「自助・自立」をサポートしている団体。これまで6万人の遺児の「進学支援」と「心の支援」を行っている。公式Webサイトはこちら
|