現在の私の仕事の立場・役割は大きくわけて4つあります。 1つ目は実家である浄土真宗本願寺派安楽寺の副住職。でも副住職としてお寺の仕事はあまりできていないんですがね(笑)。というのは、お寺の外に出て、 自殺対策に関わることにほとんどの時間を費やしているからなんです。
2つ目は、ここ最近のメインの仕事なのですが、「NPO法人自殺対策支援センター ライフリンク」(※1)(以下ライフリンク)の事務局の仕事です。ライフリンクとは日本の自殺対策 の現場のつなぎ役と推進役であるNPO法人です。 自死(自殺)遺族支援を行っている団体や自殺防止の相談機関など、自殺対策に取り組んでいるたくさんの団体が連携するように働きかけたり、国や社会に対して自殺対策に関する具体的な提言をしていくなど、自殺対策のためのフレームワークを築いていくことが主な活動内容です。その事務局スタッフとして裏方の運営事務全般を主に担当しています。
3つ目は自殺念慮者のための電話相談員です。「NPO法人国際ビフレンダーズ東京自殺防止センター」(※2)(以下ビフレンダーズ)を含む2団体で、1カ月に5回、1回につき3〜4時間ほど、自殺したいと思うほど悩み苦しんでいる人からの相談に耳を傾けています(※3)。もちろん無給のボランティアです。
そして、4つ目は「自殺対策に取り組む僧侶の会」(※4)の代表としての活動です。ライフリンクやビフレンダーズ の活動を通じて、自死遺族や死にたいと電話をかけてくる人たちの生の声を聴いて気付かされたことがありました。そういった “気付き”を私だけのものにするんじゃなくて、より多くの人と共有したい、知ってもらいたい、さらに僧侶だからこそできることがあるんじゃないかと思って、2007年1月から自殺対策に関心を持っていた知り合いの僧侶2名と頻繁に連絡を取り合うようにしました。
一人じゃできないけれど有志で集まればやれることが色々あるんじゃないかと話が盛り上がり、よしグループを立ち上げようということになったんです。それから、主に私の個人的なチャネルを通じて徐々に有志を募り、2007年5月に私のお寺に集まったのが「自殺対策に取り組む僧侶の会」の初期メンバー11名です。
現在は浄土真宗、 曹洞宗、日蓮宗、浄土宗、臨済宗、真言宗の6宗派、総勢25人ほどの僧侶が集まってくれています。メンバーは徐々に増えていますが、まだまだ少ないと思っているんですけどね。
主な活動は、 自死に関する悩みを手紙で受け付ける「自死の問い・お坊さんとの往復書簡」です。現在は月に50通ほど届いており、通算では750通を越えました。(2009年4月6日現在)また、自死遺族支援として、2007年から自死者の追悼法要を、年に1度だけですが開催していますし、自死遺族の分かち合いの会を、もう少ししたら毎月開催するようにしたいと思っています。
※1 NPO法人自殺対策支援センター ライフリンク──自殺対策という「生きる支援」「いのちへの支援」に取り組んでいるNPO法人。「自殺対策基本法」の成立(2006年)において中心的な役割を果たした。「新しいつながりが、新しい解決力を生む。」がモットー。Webサイトはこちら
※2 NPO法人国際ビフレンダーズ東京自殺防止センター──自殺を考えている人々、苦悩状態にある人々に感情面での支えを提供することを目的としたボランティア団体。深夜の電話相談を中心に、自殺したいほどのつらさや苦しみを安心して訴えられる場を提供している。電話番号03(5286)9090(毎日午後8時〜午前6時。毎週火曜日は夕方5時から受付開始)Webサイトはこちら
※3 「自殺したいと思うほど苦しんでいる人の話を聞いています」──ビフレンダーズの電話相談は主に夜から深夜、明け方に行われている。インタビューした日も早朝まで電話相談を行っており、ほぼ徹夜状態だった。
※4 自殺対策に取り組む僧侶の会──自殺(自死)対策に取り組むことで「一人ひとりが生き生きと暮らし、安心して悩むことのできる社会づくり」を目指している。自死者追悼法要「いのちの日 いのちの時間」や「自死の問い・お坊さんとの往復書簡」という手紙相談が主な活動。手紙のあて先は、〒108‐0073東京都港区三田4-8-20 往復書簡事務局。メールでの問い合わせ先はbouz@mbe.nifty.com。Webサイトはこちら
複数の団体での活動に加え、自らも「自殺対策に取り組む僧侶の会」を立ち上げ、僧侶としてまさに寸暇を惜しんで奔走している藤澤氏。そのルーツは子どもの頃の体験にあった。
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