もし自分がプロデューサーじゃなくて、クリエイターとして作りたいものがもっとあったとしたら、まず自分でそれを作ろうと頑張ったと思います。だけど最初にタツノコに入って制作進行の仕事をしたときに、自分はクリエイターのように実際にプレーする側と、プロデューサーのようにプレーする環境を作る側だったら、後者の方がやりたいというか、自分を生かせる道なのかなと思ったんです。そちらの方が向いてると思ったし、やってて楽しいし、力も出せたんですよね。
クリエイターになりたいという欲求はなかったか? うーん……(約15秒間の思考)……そういう強い思いはあまりなかったですね。監督になりたいとか、芸術的な作品を作りたいという気持ちはないです。それにはあまり魅力を感じないというか、つまらないだろうと思いますね。
でも急に絵がうまくなってアニメーターになりたいって思ったことはありますよ。なぜなら会社経営なんて大変なことをしなくて済むから。ひとりで完結できるから。でもそれはそれで大変だろうなとは思いますけどね(笑)。
とにかく僕は自分が小さくて無能だってことを誰よりも知ってるから、その無能な人間が何ができるかと考えたとき、自分に足らないものを集めて埋めることだと、若い時に気がついたんです。それがたまたま「プロデューサー」という職業だったということなんですよ。だからいまだに自分で何かをプロデュースしているとか、そんなたいそうなことをしているなんて思ってないです。
ほんとうに自分はプロデューサーとしては大したことないなって思ってます。プロデューサーとしては、二流、三流ですよ。だからこそ一流の、世界に通用するプロデューサーをI.Gで育てたいという気持ちが強いんです。ここでならできると思ってる。そう信じているんです。
そのために何をやってるかというと、チャンスを与えてる。チャンスを与えて、勝負させて、経験を積ませる。成功体験を重ねさせる。これしかないですね。 |