同時に減量もやるんですが、試合が近づくにつれてだんだん厳しくなってきますね。練習してると胃液が出そうになります。胃の中に何も入れてないから。身体から水分がなくなってるから、唾も吐けないし。夜も眠れません。空腹でというのもあるんですが、水分を摂ってないから、顔の皮膚が突っ張っちゃって、目がぱっくり開いちゃうんですよ。そんな状態で夜、歩いてたら、警官に職務質問されたことがありました。顔の皮膚にハリがないし、目がぱっくり開いちゃってギラギラしてるから、シャブ中の人に間違えられちゃった(笑)。
減量はほんとにきつかったです。死ぬ思いでしたね。僕のボクシングキャリアのメインはライト級だったんですが、ライト級のリミットは61.2キロ。通常時の体重が73キロくらいですから、2〜3カ月で10キロ以上落とさなければならない。
階級を上げればもちろん減量は少し楽になるんですが、ほんとの限界まではそうしたくなかった。ライト級という階級にこだわりがあったんです。1999年まで、東洋人でライト級で世界チャンピオンになったボクサーってガッツ石松さんだけだったんです。次は絶対俺がなってやるんだって、そういう気持ちでやってました。
減量は、練習だけでもハードですから、1回の練習で2、3キロ落ちます。失った分の栄養はカロリー計算しながら補給していきます。炭水化物は栄養がありすぎるから、たんぱく質オンリーでいくとか。もちろん量はごくわずかでね。でも水が一番いいんですよね。ノンカロリーだから。僕は日本茶が一番好きだったな。
でも最後の方になるといよいよ水も飲めなくなります。うがいだけですよね。本来なら練習が終わった後は水分補給して循環させることがいいんだけど、そうもいかなくなるから。最後の500グラムってなかなか落ちないんですよね。サウナに行ってもなかなか汗が出ないし。いよいよとなったらガムをかんで唾液を出すなどして身体から水分を搾り出してました。
飲まず食わずでよく練習できるって? それができちゃうんですよね、不思議と。試合が近づいてくると、食べたいとか飲みたいとか眠りたいとか、そういう欲がなくなってくるのがまた不思議。テンションも上がってくるしね。
でも今、ジムの若手の練習を見てて、すげえなと思いますよ。ほとんど飲まず食わずでも動けるんだから。考えられないことやってたなって、僕自身も。 |