今、「あなたの職業はなんですか」って聞かれたら? それに答えるのが一番難しいですよね。映画監督で食えてるわけじゃないですからね。自主映画だから趣味の領域といえばそうだし。しいていえば、作家なのかな。「ドキュメンタリー作家」なんて変な造語も誰かにつけてもらったんですけど、でもノンフィクションだけを書いてるわけでもないし、まだテレビディレクターも辞めたつもりもないし。それでドキュメンタリーと作家を合わせたんです。自分でも変な言葉だと思うけど、他にないんですよね。
もちろん映像関係の仕事に対して情熱を失ったわけじゃありません。『A3』は作ります。いずれ必ず作ります。『A2』の時に使わなかった素材がたくさんありますし。3部作で完結したいんですよ。『A2』のラスト、あれはto
be continuedのつもりですから。
でも今はお金がない。制作が始まったら1年、2年かかっちゃうし、作っても客が来ないのはわかってるから、貯金しなきゃいけない。今は蓄えの時期なんで、みなさん本買ってくださいって言ってるんですけどね(笑)。
書く方では恋愛小説とか書いてみたいですね。誰も僕に頼む人、いないでしょうけど(笑)。
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テレビの方では、今年は天皇をテーマにしたドキュメンタリー番組をフジテレビのNONFIXでやることになってたんだけど、製作途中で突然「手法に違和感がある」って編成の方から言われて、その後何度か交渉したんですが、結局撮影中止になっちゃったんです。以前から今上天皇には興味があって彼を被写体にしたドキュメンタリーを撮りたいと思っていただけに残念でした。
あとは前々から興味があった中森明菜さんのドキュメンタリーを撮りたいと思ってたんですが、やっぱり自分の作りたいものはもうテレビじゃ無理なのかなって。今回の天皇のドキュメンタリーが中止になったのでトドメじゃないですか? もうテレビのプロデューサーは僕を使おうとは思わないでしょう。もっと優秀で安全なディレクターは、たくさんいるわけだし。
でもやはり、今のメディアのありようには危機感を感じて、別の見方を呈示したいという思いはあります。
マスメディアの代表のテレビは、だれもが分かりやすくするために脅迫的に説明しなきゃいけないっていうのがあるんですが、でもね、表現って説明しちゃいけないんですよ。いけないというか確実にポテンシャルが落ちる。つまり表現っていうのは与えるものじゃなくて感知するものなんですよ。観る側、聞く側、読む側がね。その人が持ってるものが感応するんですよ。それが僕は表現だと思ってるんですけど、テレビっていうのはどんどん与えるだけですよね。それだと見る側が感応できなくなるわけですよ。
そうすると思考停止に陥っちゃって、テレビや新聞から流される情報を鵜呑みにしてしまうようになる。結果、ものすごく多くの人があるきっかけで同じ方向へどっと行きやすくなる。イラクの日本人人質事件が起きたときの、本人や親族に対するバッシングなんていい例だと思います。
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