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あの本を書いたあの人が教えるキャリアの極意

「プラン」や「デザイン」せずに、幸せなキャリアを創る方法
講師:所由紀氏

もっと内なる声に耳を傾けるべし 判断基準は常に「自分」!

自分の中にある「漠然とした不安」が何か、というのが具体化されたら、次にとる行動は? 今まで不安を抱えてずーっとやってきた仕事生活、これからどうすればイイのか?

所由紀/1985年、東京外国語大学外国語学部卒業。86年にリクルート入社、人事・マーケティング関連調査の企画・分析・レポーティングを担当する。94年にフリーとして活動をスタート。99年中小企業診断士登録。人事コンサルタントとして、企業のコンサルティング・研修を行う傍ら、講演や専門誌への原稿執筆を積極的に行っている。2005年CTIジャパン応用コース修了。インディペンデント・コントラクター協会会員。
生徒:青木康祐/28歳。大学卒業後、ゼミの先輩のコネクションで現在の会社(中堅商社)に就職。6年間、ノルマに追われて必死で働きそこそこの成績もあげてきた。忙しい毎日に、ある日ふと我にかえった時、今後の職業人としての将来像が見えず漠然とした不安を抱えている。

他人の価値観と
自分の価値観を混同しない

—— 自分の「漠然とした不安」が何か、ということが分かったら、後はどうすればイイんでしょうか? 例えば、会社がイヤだっていうのがハッキリしたら転職した方がいいんですか?

それは、その時の青木さんの気持ち次第になりますね。もしかして今お話した中で「自分がイヤなのは会社だ」って思ったんですか?

—— ハッキリしたワケではないんですが、職種を変えるべきか、会社を変えるべきか、って思うとそうかなって。少なくとも仕事自体は嫌いじゃないですからね。でも今の会社、安定してるし結構名の通った会社なんで、前にちょっと転職の相談を友人や先輩にした時に「もったいない」って言われちゃったんですよ。それで動きとれなくて、余計悩んじゃったというか……。

その「もったいない」という言葉ですが、周りの声はともかく、自分自身も「もったいない」って思っているんですかね?

—— うーん……どうもその辺がハッキリしなくなってるかもしれないです。自分の価値観っていうものがそもそもシッカリしてる、ってのでもないので。

わかります。でも、そこは注意して自分の心に問いかけてみてください。もし「もったいない」と言っているのが自分の声だとすれば、何に対してそう言っているのか、というのを、冷静に分析する必要がありますね。

—— でもどうやって……。

転職するリスクと留まるリスク、それぞれをリストアップしてみるといいですよ。紙に書き出して目に見える形にすれば、思考の整理にもなりますし、「自分はこんなふうに思ってたんだ」って改めて分かりますから。人と会って自分の考えを話すのもいいですよ。とにかく自分の頭の中だけであれこれ考えるのが一番よくないんです。

—— 確かに今まで同じ考えばかりがグルグル頭の中をめぐって、そのうちワケがわからなくなくなってしまって……。どうすればいいか身動き取れなくなっちゃった、みたいな感じです。

重要なのは「今、この瞬間」

転職するにしても留まるにしてもリスクはあります。いずれにしても、各々の選択に不安定な要素や不確定な要素があるわけで、その都度、どの部分、どの点が不安なのか、ということをその時に考えていけばいいと思うんです。先のことなんて誰にも分からないし、そこでの選択が、その先、70歳80歳という人生を全て決定付けてしまうものでもないと思いますし。重要なのは、「今、この瞬間、自分がどうしたいか」なんですよ。

—— 今、この瞬間……。

そうです。自分の気持ちというのは分かっているようで実はあまりわかっていなかったりするんですよね。なので、常に「○○に対して今、どう思っているのか、どう感じているのか」を自分の心に問いかける習慣をつけた方がいいですね。そうしないと、だんだん自分の本当の声って聞こえにくくなってくるんですよ。

—— あぁ、今、目からウロコがもう一枚落ちたような気がします。自分の心の声に耳を傾ける前に、他人の言葉に引っ張られたような気がします……。動ける人と動けない人の差はそのあたりにあるのでしょうか?

基本的にそのとおりです。あとは「動くといいことがある」と思えるかどうか、というか、全体としてそういう前向きな人生観とか価値観をもっているかどうか、という気がします。例えば、「やってみてダメでもいいじゃん。ダメってことが分かるだけでも収穫だよね」とか「もしダメでも死にはしないし」とか。

—— 僕は元々それほど楽観的なタイプじゃないし、そういう価値観があるかどうかすらも疑わしいのですが、大丈夫でしょうか?

心配しなくても大丈夫。後天的にそういう価値観は身につけられるモノですので。 あともうひとつ、『偶キャリ。』に出てくる皆さんの中にはなんとなく、「曖昧耐性」があると感じました。最初から全てを決定づけたり、計画を立ててそれに沿って動くというより、計画に縛られていないからこそ、幸せな偶然を呼び込めるんですね。「Planned Happenstance」って言うんですが……。

偶然がキャリアを創る?
Planned Happenstance

—— Planned Happenstance? それ、具体的にはどういうことなんですか?

「Planned Happenstance理論」は、スタンフォード大学のクランボルツ教授らによって提唱された新しいキャリア理論で、日本語に訳すと「計画された偶然理論」ということになります。「計画」と「偶然」という相反する単語の組み合わせで表現されているこの理論は、

1 職業生活(あるいは人生も)は、実は「たまたま」や「偶然」の出来事や出会いなどによって決まっていくことが多い

2 しかし、その「たまたま」や「偶然」は、本人がそれとは意識しないで行っていたことによって生じている

というものです。

—— その時その場で動いたコトが、後につながっている「偶然」ってすごいですよね。「出会いは必然性のある偶然」って前にどこかで聞いたことがあるんですが、こういう、仕事に関する出会いっていうのもそうなんじゃないかな、っていう気がしました。

その通りです! その「出会い」だって、まずは自分から行動を起こさないことには始まらないですよね。普段から人との出会いを大事にするとか、こちらから会いたいと思う人に会いに行くというのも大事です。あとは「プランはないけど夢がある」というのもPlanned Happenstanceな人びとの共通点です。夢に一番近いと思う人に会ってみたいと思う、そして実際に会いに行く……。叶えたい夢、好きなコトだったら、行動できるし、熱中できるんじゃないですか?

—— 確かに。嫌いなコトは集中しろといわれても多分無理だけど(笑)好きなコトなら時間や労力を考えずに行動できますね。

それでイイんですよ。その「好き」という感情も、自分の声に耳を傾けててないとわからなくなりがちですからね。

メディアに乗せられるな!
判断基準はあくまで自分

とにかく物事の判断基準を常に自分においておけばいいんです。そうやって「好き」からおこしたアクションに対して、もし挫折や失敗があったら、その時にどう向き合うか考える。そしてまた、そこで自分の判断基準に素直に従って、次の行動を起こしてみる。直感を信じる、インスピレーションを信じる、ということも心掛けてみてください。

—— あんまり「外野」の意見に振り回されないように気をつけなくちゃ(笑)

神経質になることはないですが、そういう注意は必要かもしれないですね。私がいうのもなんですが、いわゆるキャリアに関する本とか、人材ビジネス系の講座とかも結構あると思うんですが、要するにアオリますからね。

—— そうですね。「なんかしなきゃ!」って思わされますね、確かに。そもそも僕が「キャリアプランを立てなきゃ」と思ったのも、何かの雑誌や本で読んだからのような気がします。でもなぜあそこまでアオるんでしょう?

それがメディアの性ということもありますが、そこに市場があるからです。でも受け手側としては、そこはちょっと冷静にみる必要があって、まず「これはマスメディアの言ってることなんだ」ってちゃんと認識すること、そしてそれらに流されないというのも大事です。もっと言うと、そこに正解を求めてはいけないというか、そもそもそんなところに正解なんてないんですよ。

—— 答えは自分の中にしかない……。

その通りです! わかってきましたね〜。

—— えへへ。なんとなく僕も一歩が踏み出せそうな気がしてきました。

それはよかった。次回では「Planned Happenstance的な人びと」の具体例を出しながら、動き方についてお話しましょう。

所由紀氏から学んだ、胸に刻んでおきたい3つのこと

1.自分の心の声に耳を傾けろ

2.計画を立てないからこそ幸せな偶然を呼べる

3.物事の判断基準を常に自分におく

今、全てを決める必要なんてない!まずは自分の中の曖昧な不安を具体化することから始めてみましょう

「好き・嫌い」の気持ちをもっと大切に 心の針の振れた方向を目指して行けば 幸運な偶然に出会える!

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