さて、現在は医療関係のシステム屋さんとして日々東西奔走している私です。
今回の仕事でよく一緒に行動しているのは、元々同じ会社の部下で、2人でよく会社に文句ばっかり言ってたエンジニア。
「え!?まじ!!、ほんまそんなんやったらこっちもやってられませんで!」
などと雄たけびをあげるコテコテの関西男でぶっきらぼうなエンジニアですが、彼はなぜか昔の習慣がまだ抜けないらしく、未だに私を
「先生」
と呼んでおります。
(とりあえず面倒な年上は“先生”で済ませるという関西独特の習慣なので、私を師とあおいでるわけではない)
ここ最近はだいたい2人で日本中の現場に出かけ、日中は医者と話をし、システムを触ってもらって要望を聞いたり、システム稼動前の最終調整や稼動後の立会いなどをし、夜は異国の地で地元の食材をお酒で流し込みながら
「毎日出張して医者に怒られ、それでも朝になったらまた別の病院に呼ばれて飛行機に乗ってまた別の医者に怒られてて、いったいなにしてるんかいな俺は!って毎日思てまっせ、ほんまに・・・姉さんビール!!」
みたいな愚痴を言い合う毎日を過ごしている。
そんな彼が、出張先の郷土料理居酒屋で少々酔っ払いながら、その風貌とは全然そぐわないエピソードを話しだした。
「こないだ医者に、錠剤に書いてる番号とか薬の色とか包装してる紙とかから、何の薬か調べられるパッケージを無料でノートパソコンにインストールしてと言われて、はいどうぞって入れてあげたんですわ」
「え?そのシステムって、データベース使うし、定期的に薬の情報を更新したりする必要もあるし、普段は○○万とかで売ってるけっこう高価なパッケージなのに大丈夫なの?」
「いや、もうどんどん持ってってくださいって言って片っ端からノートパソコンにインストールしましたがな」
「で、なんでまた?」
「なんか東北の震災で、かかりつけの病院のカルテが全部津波で流されて、何の薬を飲ませていいか全然わからんのにそのままほっといたら危険な状態になる被災者がいっぱいいたらしいんすよ」
「なるほど」
「で、残ってた薬袋とか錠剤、飲んだ後の包装から、医者がなんとか同じ処方箋を作り直すのにこのシステムが必要やったらしいんすね」
「おー。それはいい貢献をしたんじゃないのか?」
「そーすよ。丁寧な礼状もらっただけで金は儲からへんけど、俺多分その時はじめてこの仕事やっててよかったって思った瞬間でしたわ」
「それはいい経験をしたなあ」
「そーなんすよね。仕事のやりがいって案外そんなもんなんすよね」
地方都市の居酒屋で酔っ払うひげを生やした怪しい男と、関西弁でガーガーまくし立てる男という、はたから見たらどう見ても反社会的勢力にしかみえない2人(実際、今思うと店員のお姉さんもあまり近寄ってこなかった)からは想像もつかない、なんという優しいエピソード(笑)
しかし異国の地で少々酔っ払って感傷的になっているとはいえ、こんな泥臭い男が、
「仕事のやりがいって、銭金じゃなくてそんなちょっとした社会貢献を身近に感じる瞬間なんすよね」
なんて言葉を、嘘くさくなく、真剣な顔して話すことにちょっと驚きもした。
ニュースでは、やれ株価操作がどうだ、粉飾決算だ、円高だ、TPPだと色々経済用語が飛び交って、
「このままじゃ日本は沈没しますよ」
なんて物知り顔で熱弁する経済評論家とかキャスターがテレビで偉そうにしてたりする。
でも、結局のところ日本という国をちょっと優くていい感じの国に育ててるのって、こんな見かけからは想像もできない人間にも潜む日本人独特の“優しさ”なんだろうなと再認識させてくれた。
よし
「えっ、刺身ないの!まじ!?信じられへん」
とかいって居酒屋の若いお姉さんを恫喝してないで、さっさとホテルに帰って寝て明日もいい仕事しようかな。
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