バトンを回すということに関しては、競技バトンもKAのようなショーも基本的には同じです。競技バトンの世界も、技術点のほかに芸術点があるので、表現性や芸術性が全くないわけではありませんし。もちろん、いろんな観点で見ていくと様々な違いがあります。
単純に1回だけの演技で比較した場合、演技時間は世界大会が2分半、KAでのソロ演技が3分半(※1)ですが、世界大会の方がよりアクロバティックな演技をします。でもKAはほぼ毎日、しかも1日に2回本番があります。
※1 KAでのソロ演技が3分半──スタート当初の予定は2分だったが、クリエイション時に増えた。
また、競技大会は自分が練習してきたものがどれだけ本番で発揮できるかという自分との戦いなので、どういう結果になっても自分だけの問題として済みますが、KAは高いチケット代を払って私たちの演技を観に来る大勢のお客様がいます。ちょっと今日は調子が悪かったな、ミスしちゃったな、では済まないわけです。
ですので、1回の演技だけを考えると世界大会時代の方が体力的にはきついですが、毎日2回の本番、観客がいることによって生じる責任などを考えると、KAの方が大変かもしれないですね。
最大の違いは、KAの場合、私は物語の中の一部として演技をするので、「どうして私がここでバトンを回さなければならないのか」ということも含めて、「キャラクターとしての気持ちを観客に伝えないといけない」という点です。バトントワリングの高度な技を見せればいいという役割ではないので。
世界大会とは違ってKAにはバトンのスペシャリストが見に来るわけじゃないので、KAの観客がすごいと思うことと私たちが難しいと思うことは違うことがあります。そういうことを感じながら演技を作っていくことは大事ですね。
つまり簡単に言えば、同じバトンを回すにしても、競技バトンは技術に重点をおいて、KAでは気持ちを表現するのに重点を置くということです。 |