座学、実技と覚えることがとにかく多いので3年間はハードです。相当の覚悟が必要です。塾生も「大学どころじゃなくて大学院くらい忙しいんじゃないですか」とよく言っていますよ。また1年の過程が終了するごとにテストがあります。点数が悪ければ卒業に響きます。日本の大学のように入れば自動的に卒業できるというわけではありません。さらに1年次50万、2年次40万、3年次30万の授業料もかかります。だからみんな必死で取り組むので、見る見るうちに上達していくのです。
中には途中で挫折して辞めていく塾生もいるし、こちらから辞めさせる塾生もいます。それだけ生半可な気持ちではできないということです。
辞めていく塾生にもいろいろな子がいます。以前、志を持って入塾したけど1カ月で辞めた青年がいました。すごくいい子だったんですけどね。お父様が大工で「親父を喜ばせようと思って大工育成塾に入った」という子だったのですが、「僕には向きませんでした」と辞意を伝えに来ました。そのとき「これから何になるの?」と聞いたら「調理師です」と答えたので「それもいいね」と言いました。
また、美容師の家の子がいて、入塾のための面接のときに「どうして美容師にならないの?」と聞いたんです。そうしたら「調理師や理容士という職業は人を喜ばせるのは一瞬ですよね。今日おいしいものを食べたなって思っても、明日になったら忘れちゃう。髪の毛をきれいにしていい気持ちになっても、次の日頭洗ったら終わっちゃう。だけど住まいというのは一度建てたら何代ものご家族に喜ばれて、何人もの人がそこで育っていく。だから塾長のおっしゃった“家づくりは人づくり”なんですよね」って答えたんです。本質をわかってくれていたので、すごくうれしかったですね。だから「よくわかっているね。あなたも人に喜んでもらえるようないい仕事をやりなさい」って言ったんです。
塾生として3年間の全過程をやりきった人は技術的にかなりの水準に達しています。修了時の「修了制作」は木造軸組構法の2階建て住宅の建築なのですが、みんなで協力して短時間で立派に一棟を建てますからね。修了後は受入工務店にそのまま就職する子が多く、実家の工務店に帰る子もいれば、ほかの進路を選ぶ子もいます。 |