こういう仕事を自分の楽しみとして実行していましたが、自動的に多様な技術分野の人達とうまく話し合い、それぞれの特徴を引き出すインタビュアーとしての技術と、それをわかりやすく書く技術を磨く機会にもなっていたのだと思います。同時に、こういうコーディネーター的な役割で、さまざまな産業分野のトップクラスの専門家からダイレクトに話を聞くことで、各分野の最新知識を蓄積することができました。これも大きな収穫でしたね。また余談になりますが、後に、カーエレクトロニクスや自動車用新材料を総括的に解説する本を書いているのですが、その元となったのはこの経験です。
そのうち、逆に取材した人たちの紹介で、雑誌の記事を書く機会や講演に呼ばれる機会が増えました。もちろん、来る依頼はすべて引き受けてどんどんやりました。記事も講演も、読者や聴衆が楽しめるようになるべくおもしろくしようと工夫しました。また、本も積極的に書きました。暇なので今まで吸収した知識をじっくり時間をかけてまとめることができたんです。
それから、新聞や雑誌や自動車メーカーが主催する論文コンテストに応募しまくりました。1年半で応募した6つの論文コンテストのすべてに入選しました。朝日新聞の懸賞論文では最優秀賞を受賞してヨーロッパ旅行に行けたし、トヨタ自動車の懸賞論文では150万円の賞金を貰いました。
まさに「窓際族にしてくれてありがとう」です。だから窓際族になったときほど、積極的に組織内の仕事、それも人が嫌がる仕事の中におもしろい、新しい仕事を作り出して、スキルを磨いたり、新しいスキルを身につけたり、これまでやりたくてもできなかったことに没頭すればいいと思います。特に独立を考えている人は、こういうことが独立後の戦いに役立つ重要な武器になるでしょう。 |