取材後記 今回の取材についてのあれこれ
 

「サラ金事件専門のすごい弁護士がいるのよー」

「魂の仕事人」企画の立ち上げ準備中、人選の相談をした際、元編集長のN氏は言った。

調べてみると確かにすごかった。

サラ金事件だけではく、オウム真理教や豊田商事事件など、名だたる大事件に絡み、被害者救済に尽力、時には法律まで変えていた。

知れば知るほどすごい人だった。

取材依頼の電話をかけると、即快諾していただいた。

取材当日、わくわくしながら東京市民法律事務所を訪ねると、宇都宮弁護士は相談者と電話中だった。

電話口でも熱かった。

取材前の挨拶。初めて見る宇都宮弁護士は小柄で痩せ型、失礼だが優しそうなどこにでもいるおっちゃんという印象だった。

とても巨大暴力団組織やカルト宗教、国を相手に戦っている熱血漢とは思えなかった。

さらに挨拶で驚いた。開口一番「私のような落ちこぼれの弁護士の話が果たして役に立つかどうか……」と言った。

謙遜にもほどがある!

インタビューは最初から宇都宮弁護士の独壇場だった。2時間のインタビューのほとんどを宇都宮弁護士がしゃべり倒した。

ひとつの質問に対して10も20も答えが返ってくる。話は四方八方に飛躍し、さらにすべての話がおもしろすぎて、次の質問を挟むのに難儀した。

しかもじっくり座って答えるというスタイルではなく、常にキャビネットや引き出しから本、資料、ファイルなどを引っ張り出しながら熱く答えていただいた。

なるべく正確に分かりやすくそして正直に答えようという誠意がありありと感じて取れた。

特筆すべきはその記憶力。クレジットカードの発行枚数、利息、法律の内容と施行年月などの各種データ、さらに自分年表(○年○月に○○をした)などがよどみなく語られた。

インタビュー中、時折やさ
しそうなつぶらな瞳が、一瞬ぎらりと凄みを増した。この目で巨悪と戦い、弱者を守ってきたんだなと思った。

この人には覚悟がある。あるいは肚のくくり方が半端ではない。そう感じた。

インタビュー終了後、「弁護士を目指す人にはこういうことを話す機会があるんだけどね……」とおっしゃったので、「法曹界には関係のない、一般の人にとっても非常に有意義なお話です!」と答えた。

すると「そうですか」とうれしそうににっこり笑った。

その笑顔が忘れられない。

きっと、お父さんと一緒に開拓に汗を流していた少年時代も、
こんな顔で笑っていたんだろう。
そう思った。

(編集部)