転職お役立ち情報|30歳!誰のために働きますか?|30歳で一度立ち止まってみる勇気の大切さ(後編)

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30歳!誰のために働きますか? 宮崎 健
自分らしく働く。自分で働き方を切り拓く。流動的な時代に意思を持って生きる30歳たちの「今」を、『京都の30歳!』編集長がリレーで紹介しながら、これからの時代のキャリア・働き方へのヒントを探ります。

宮崎 健

最終回 30歳で一度立ち止まってみる勇気の大切さ(後編)

 管理職として業績を上げてもバブル後の新しい収益構造を少しでも早く確立するために、次々と新しい役割は増えていく。いつまで経っても楽にならない仕事に、さすがに「本当にこのままの働き方をしていていいのだろうか?」と疑問を持ち始めます。上司の期待に応えたい、頑張る部下たちに結果を残してあげたいと、引き続き懸命に働きながらも疑問は募る一方。そして「仕事人生を考え直そう」と、11年も所属した事業部を飛び出て「働く人のモチベーション」を研究する社内機関へ異動したいと強く希望して、そのメンバーに選抜されました。34歳でした。

 研究機関での半年間では、さまざまな背景をもったいろいろな人の立場に立ってモチベーションというものを考えるために、まず自分自身にこびりついた価値観を可能な限り捨て去る作業に没頭します。すると5カ月も経つと自分のことまでが客観的に見れるようになってきて、妻や子どもたちが「何不自由ない生活」以上に求めていることが見えてきます。そして、私自身が作りたかったのは、「温かくて笑顔の絶えない家庭」であって、決して「贅沢ができる家庭」ではないこともわかってくる。強い衝撃を受けました。

 しかし再び現場に戻ると、会社は個人成果主義の給与体系をさらに強化している。管理職になれば安泰するのではなく、なおさら実績を残せなければ収入が大きく減る時代。一度手に入れた生活水準を落としてしまう勇気もなくまた仕事に没頭する。自分が本当に目指していた家庭作りがわかっても、長年をかけて身につけた働き方も簡単には変えられない。そして1年後に35歳になって長男が小学校に入学。限られた時間の中で、職場や家庭以外に地域社会での親としての役割や責任ものしかかる。母親も65歳になって体も弱ってきていていつまでも放っておけない。理想の家庭への道のりがますます遠のいていきます。「笑顔の絶えない家庭」どころか、子どもが起きているときですら、会社でのストレスを顔に浮かべて、ささいなことでも苛立って怒鳴っている自分がいた。

 とにかくいつまでもこの状態ではやっていけないと、自分の時間を自由に使えるフリーで働く道として、社労士の資格を目指して疲れた体を引きずって土日に専門学校にも通う半年間。しかし社労士の仕事自体への魅力を失ってしまっていよいよ将来が描けなくなります。その気持ちを誰にも相談せず、自分以外の「大成功を目指しているわけではない普通の同世代」が何を考えているのかを知ろうと、時間ができれば書店に出掛けてくまなく本を探して、深夜にインターネットでも検索し続けます。しかしそんなメディアは見当たらない。ついに、「とにかく今はこの働き方を辞めることが大切だ」と、リクルートが20年前から常設している38歳からの早期退職制度を利用して、退職の道を選ぶのです。

 リクルートにかかわらずこれからの会社は、社員に40歳前後でその後の進路の決断を迫ってきます。30歳前後で「働く目的」を深く考えずに盲目的に働いてしまって迷い道に入り込んだこの私の経験を、後輩の世代には味わって欲しくない。30歳前後で一度立ち止まって、シッカリと「大切にしたい生き方」とそれを実現する「働き方」を考えてもらいたい。そんな思いで創刊したのがこの『京都の30歳!』というメディアだったのです。

 幸いなことに、懸命に働いた16年間のおかげでさまざまな実務能力を身につけ、私自身を買ってくださる多くの方々のご支援もあって、なんとかこの2年を乗り越えることができました。しかしあくまでこの独立の目的は「暖かく笑顔の絶えない家庭づくり」であって、まだまだその実現は遠いのが現実です。むしろ休みは今のほうが少ないし、年収も4分の1まで減って家族にも心配をかけている。しかし京都という場所を選んだことで家族に何かあればいつでも駆けつけられ、妻に仕事を手伝ってもらうことで共通の話題が少しでもできて、過去に比べればほんの僅かでも理想に近づいてきたのでは、とも勝手に思っているのです(笑)。

 これでこのコラムは終了です。長らく読み続けて頂いて有難うございました。こんな私の勝手な思いが、30歳前後の皆さんの何かのお役に立っていれば幸いです。

 1970年代生まれは「新しい時代のトップランナー」です。パイオニアですからさまざまな苦労も多いのですが、みなさんはそれを乗り越える力をこの厳しいビジネス環境の中で間違いなく身につけています。「大切にしたい生き方」を自信を持って実現してください。何もできませんが京都の地から応援しています。


2005. 1. 4
NPOワーカーズ・オープンコミュニティ・エイド
 『京都の30歳!』編集部  宮崎 健

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宮崎 健(みやざきたけし)

NPOワーカーズ・オープンコミュニティ・エイド代表。 1962年生まれ。株式会社リクルートにて16年間勤務。数百社の採用・企業内研修・CI・企業広報・イベント企画と、リクルートメディアの企画立案・組織オペレーション、働く人のモチベーション研究などに携わる。2002年独立し、働く30歳が自分らしい働き方を発見するためのコミュニティサイト「京都の30歳!」を立ち上げる。2004年5月には雑誌『京都の30歳 第3号』を発行。京都を中心に精力的に活動中。


2005.01.04update
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