自分らしく働く。自分で働き方を切り拓く。流動的な時代に意思を持って生きる30歳たちの「今」を、『京都の30歳!』編集長がリレーで紹介しながら、これからの時代のキャリア・働き方へのヒントを探ります。 |
先日、伏見工業高校定時制の就職活動を控えた高校生のみなさんにお話をさせて頂く機会がありました。「みなさんに、将来、カッコいいおっちゃん、おばちゃんになってもらいたくて今日は来ました」と、私が考える「カッコいい大人」の条件を3〜4つお伝えしたのですが、そのうちのひとつが「決して『他人』のせいにしない」でした。そしてそのかっこ良さを感じたのが、ジェイアール西日本伊勢丹の田路幸江さん(32歳)の物語でした。 田路さんは、気分屋で暴力も振るう父親のもとで育ち、引っ込み思案で数少ない友人にも言いたいことが言えず、中学のときには断りきれなくてイタズラに加担することもあったそうです。母親は「お前が変わらないと周りは変わらないよ」といつもやさしく慰めてくれて、東京へ進学して環境が変わったのを機に「弱い自分」と戦おうと、うまく自己表現ができなくても思ったことを相手に伝える努力を始めました。 就職をしてもなかなか職場仲間の輪に入れずに苦労をしますが、親しい同僚や顧客からの感謝の気持ちに支えられて頑張ります。1年かけて会社が奨励する手話の資格を手にすると、頑張れる自分を証明できるものができて自信が生まれ、仕事に手応えを得ます。 その後も管理職としての苦悩や育児ストレスもなんとか乗り越え、今は会社から「育児をしながら働く道を後輩たちに作ってやってくれ」という大きな期待をかけられて、家族や多くの同僚に支えられながら、目の回るような日々を送っています。そしてすでに他界された父のおかげで「強く生きる」ことを学んだ、とまで思えるのだそうです。 私たちは、あまりに思い通りに進まないことが連続すると、どうしても周りの環境や「他人」のせいにしてしまいます。実はときには、思い切って自分の気持ちの中で「他人」のせいにしてしまうこともとても重要なのですが、それには絶対的な条件があります。「考えられる可能な限りの努力を、自分がやり尽くしたこと」です。 田路さんを見習って、私も少しでも「カッコいいおっちゃん」になりたいと思うのです。
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