集まった80万円を早速NGO テックジャパンに送金し、スリランカで裁縫センターの設立準備を進めてもらいました。そしてイベントから5カ月経った2008年の10月、遂に裁縫センターが完成し、テックジャパンのスタッフと5人のゴスペルメンバーで現地へ赴きました(※2)。実際には建物を建設したわけではありません。縁あって協力してくださることになったアメリカ人のロリオ神父様が、小屋をひとつ貸してくださることになったんです。お陰でミシンの購入や裁縫講師の派遣といった出費だけで済み、寄付予定の半分の額をこの先1年の運営費に回せることになりました。
ロリオ神父はもう50年以上もこのトリンコマリーという町に住み、学校を開くなどの奉仕活動をしている方でした。内戦中のスリランカでは、民間人への暴行、レイプ、殺害は日常茶飯事で、北部の村の人々は自宅で寝るのも危険という悲惨な状況です。そこで教会が地域のシェルターとしての役割を果たしており、ロリオ神父も地元の人々からとても信頼されている人物のようでした。
ロリオ神父から縫製工房として貸与された建物
私たちはオープニングセレモニーでゴスペルを歌い、その後日本から同行した裁縫講師によるワークショップをお手伝いしました。研修生は10名の女性。仲良くなったある女性は内戦で父親を亡くしており、5人家族だけど現在誰ひとり職をもっている人がいないということでした。 内戦という厳しい現実の中で私たちの活動がどこまで成果を生み出せるのか、保証できるものは何もありません。でも、オープニングセレモニーで歌い終わった後、ひとりの研修生が「今の危険なスリランカに実際に来るということが、どれほど勇気ある決断なのか私たちもよく承知しています。私たちは、明日はどうなるかわからないというつらく暗い思いで毎日を過ごしていました。でも今、こうして遠い日本で私たちのことを応援してくださっている方々がいるということが、私たちの心に希望の光を灯してくださいました。本当にありがとうございます」と言って涙を流してくださいました。
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オープニングセレモニーでテープカットするナナさん(左)と歌うメンバー(右) |
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裁縫指導の様子(※それぞれクリックで拡大) |
ただお金やモノをぽんと送るとか、本当の支援というのはそういうことじゃないと思うんですよね。実際に現地とこまめに連絡をとり、足を運び、一緒になって汗を流す国際協力NGOの方々の働きがあって初めて、「希望」という一番大切なものを贈ることができる。このときはNGOテックジャパンの皆さんの熱い思いからも本当に多くのものを学ぶことができました。これからも日本で私たちにできることを、多くの人たちと一緒にやっていきたいと思います。
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笑顔でミシンを踏むスリランカ女性 |
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日本からのメンバーと現地の人々と一緒に(※クリックで拡大) |
※2 現地へ赴きました──現地視察の様子はこちら。ちなみにこのWebサイトもナナさん制作。
2008年6月には、NGOゴスペル広場のメイン事業である「ゴスペルスクエア」を渋谷にオープンさせた。それはまさにナナさんにしかできないゴスペルスタジオだった。 |