中学のとき、どうしても入りたい高校がありました。神奈川県立神奈川総合高等学校という当時の新設校で、学校案内の第一文が「校則なし」というとても自由な学校だったんです。県内一の人気校で、推薦枠が14倍という、公立高校としては異常なほどの高倍率でした。
この高校を見つけたときから絶対に入学したいと思っていたので、中学時代は内申点のためだけに生きてましたね、まさにガリ勉。テスト勉強は1カ月前くらいから朝一時間早起きしてガリガリやったり。その甲斐あって中間、期末テストなどでは学年トップを取れるようになり、推薦で入学できました。
この高校は単位制高校のはしりで、生徒は150ほどの科目から興味のある授業を自由に選んで勉強できるんです。この高校に進学したのもある意味で運命的でした。
高1の終わりの3月にたまたま音楽室にいた5人くらいの同級生が、聞き覚えのある歌を歌い始めました。その歌は中3のときにハマった映画「天使にラブ・ソングを」の中で使われていた歌だったんです。私も完全に暗記していたので、その場ですぐ歌に加わりました。
そのときは、新入生の歓迎会が毎年4月に開催されるのですが、その中のイベントのひとつ「30秒間部活PR」で歌うために練習しているとのことでした。
まだできたてほやほやの5人くらいのグループだったのですが、4月の新入生歓迎会での発表の後、それを見た新入生がけっこう入部してくれて、ちゃんとした同好会になり1年後には正式な部活になりました。
途中から仲間に入れてもらったのですが、2年目からは仕切り役もさせてもらい、いろんな曲をゴスペル風にアレンジしたりしてました。「天使にラブ・ソングを」シリーズの曲も片っ端からやりましたが3年になって最後に残ってしまったのが、一番の代表曲である「ジョイフル・ジョイフル」。複雑でノリのいいこの曲はとてもピアノ一本では表現できず、つい後回しになっていました。しかし、これを歌わずして卒業できないと、毎日放送室に置いてあったシンセサイザーと格闘し、見よう見まねで何とか打ち込みのカラオケができあがりました。放送部には嫌がらていたかもしれません(笑)。そういういろいろな挑戦をさせてくれる高校だったんですよね。
卒業生を送る会で “ジョイフル・ジョイフル”を歌う (ソロで歌っているのがナナさん)(写真提供:ナナさん)
「ジョイフル・ジョイフル」は卒業生を送る会で歌いました。連日、朝練でダンス、昼や放課後に歌を練習してきました。「送る会」なのに私たち3年生が一番目立ってましたよ(笑)。
一方で、ボイストレーニングや声楽も習わせてもらっていました。この頃はまだ、いわゆる歌手デビューを夢見ていたんですよね。でも、高校の同じ合唱部に、群を抜いて歌のうまい後輩がいました。ホイットニー・ヒューストンの歌も高校生とは思えない迫力で歌ってしまう。いつも彼女の隣で歌っていた私は、密かに自分の声に大きなコンプレックスを持っていました。細くて芯のない自分の声が好きになれない、もっとうまく歌いたいのに下手なのが嫌。歌が大好きなのに歌うのが苦しい、人前で歌うのがこわい……。この頃は、単純に楽しいだけじゃなくて、こういう複雑な思いを抱えてもいたんです。
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