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魂の仕事人 第28回 其の四
仕事とは人生を楽しむこと 自分のために働くことが 必ず他人のためになる
「スポーツで社会貢献」という理念を胸に、東奔西走を続ける辻氏。彼には「東京にプロバスケチームを作る」ことのほかにも、実現すればまさに日本を変えてしまうくらいの大きな夢があった。シリーズ最終回の今回は辻にとって仕事とは何か、何のため、誰のために働くのかに迫った。  
スポーツドクター・エミネクロス代表 辻 秀一
 

「5年後に学校設立」がもうひとつの夢

 
学校で子供たちを前に講演を行うことも多い(写真提供:辻秀一氏)

 東京にバスケのプロチームをつくることのほかに、もうひとつ大きな夢があるんです。それは「学校を作りたい」という夢です。

 これまでのメンタルトレーニング等の活動を通して、QOLの豊かな社会をつくるためには、人づくりがすごく重要だと痛感しているんですね。子供を対象としたバスケのスポーツ塾はやってますが、子供や親にQOLを豊かにする考え方がまだまだ伝わってないと実感しています。

 そういう意味では講演会をやったりメンタルトレーニングをしていくよりも、スポーツ心理学をベースに教育を行う学校法人を作れば、まさに人間づくりができちゃうんじゃないかなと思っているんです。

 どういう教育を行うかというと、豊かな人生を送るために必要な「揺らがず、とらわれず」という心の状態を自分自身で作り出せるようになるための教育です。それを小中高一貫で行う。

「揺らがず、とらわれず」という心の状態をフロー状態というんですが、このフロー状態を自ら作り出せる力を「社会力」と呼んでいます。究極の教育目的はこの社会力のある人材を育てるということです。

PTAのお母さんに向けて講演する辻氏(写真提供:辻秀一氏)

 そのためには教育する側も非常に重要で、「コーチ力」のある教師をこれまでのネットワークから集めたいと思っています。「コーチ力」とは人の心をフローにしていく心の力のことです。コーチ力のある人が身近にいれば、人は自然にどんどんフロー状態になっていきます。コーチ力を別の言葉で言うと、「支援の力」です。人を教育するためには、指示と支援のバランスが絶対に必要で、指示だけしててもだめなんですね。ところが今の多くの教育者や指導者って、指示も苦手で支持もあいまいなんですよ。彼らは何かというと「いいから頑張れ」ってすぐ言うんですが、指示はあいまいで、支援にもなってないんですよ。「いいから頑張れ」って言われても困るでしょう? だから指示と支持のバランスのとれたコーチ力のある、僕の考えに賛同する人材が集まってくれれば、夢も持ってるし、いい教育ができるんじゃないかなと思っているんです。子供だけじゃなく親に対してもフローな状態をつくれるし、フローになった親が家庭でも子供をフローにしていくことができますしね。

人間力のある人間を育成
 

 そういった社会力とコーチ力の両方のバランスの取れている人間のことを、応用スポーツ心理学では「ライフスキルがある人間」と呼んでいるんですね。日本の言葉で言えば「人間力」ですかね。人間力のある教員たちにより、人間力のある子供と保護者をつくることが基本的な教育理念ですね。

 こういう社会力のある教育をしていれば、おのずと成績も上がるだろうし、スポーツでも勝てるようになると思うんですよね。結果として文武両道の学校が作れると思います。

 でもそうしようとするとまた莫大な資金が必要なので、例えば中部電力とトヨタが共同出資して作ってる学校のような感じで、複数の企業から出資を募って作れればいいなと思ってます。現在複数の企業のメンタルトレーニングを行っているんですが、その活動を通して「こういう考え方を子供のうちからやろうと思うんですけど」って言ったら賛同してくれる企業がけっこう出てくるんじゃないかなと思っているんです。

 そんな感じで、賛同してくれるいろんな企業からスポンサードしていただいて、学校経営に関しては経営の専門家を入れつつ、僕は校長として社会力のある子供を育てるための教育の方法論を考えると。名称は「学校法人エミネクロス学園」ですかね。そこから将来のオリンピック選手が出たり、日本を変える政治家が出たりすればいいなあと思っています。

 設立目標はプロチームと同じく5年後です。そのとき僕は51歳ですが、そこからさらに100歳まで生きるつもりだから、残り50年でたぶん何かちょっとぐらいのムーブメントは起こるんじゃないかなと思っているんですよね。

独立してこれまでただがむしゃらに走ってきた。その結果、さまざまな分野で成果が出始め、辻イズムに理解、共感を示す人々も年々増えてきた。しかしここにきて行き詰まりを感じるようになったという。

大きな夢を実現させるために
5つの組織を再編成
 
チアリーダー「エミネッツ」のみなさん(写真提供:辻秀一氏)
 

 独立してからこの9年くらいは、とにかく目の前にあることに一生懸命取り組む、来た仕事は全部受ける、自分の好きなことをやり続けるといった感じでやってきたんですが、大きな夢の実現のためにも、昨年(2007年)の秋くらいから、少し仕事を整理しなきゃと思い始めました。スポーツドクターとして、まず2008年は何をすべきなのかもう少し整理した上で、たくさんある夢の優先順位を付け直した方がいいんじゃないかなと。

 というのは、今までプロチームを作りたい、学校も作りたい、個人や企業のメンタルトレーニング事業、NPOの運営、子供のバスケ塾、車椅子バスケ、趣味としてのクラブチーム「エクセレンス」の活動やチアリーティングの指導など全部自分で抱え込んでやってきたわけですが、いろいろ頑張ってる割に前に進んでるという実感はあまりなくて、その場にいながらただ平面的にいろんなことが広がっていったような気がするんですね。より多くの人に僕の思いを伝えるための本だって、これまでは年に数冊は書いていたのに、去年は忙しさのあまり1冊も書いていないから、このままではいかんなと思っていて。

 それでいろいろ考えた結果、エミネクロスグループのシンクタンクであり、僕にしかできない仕事を遂行する「オフィスドクター辻」の中で答えが出てるのは、ひとつは、いろんな企業に対しての社員の健康管理の方法として、カンパニーチームドクターという新しい産業医のあり方を提案し、実行していくことです。今の企業にいる産業医は臨床医だから、通常の社員の心を元気にできる医者ではないんです。そういった社員の心を元気にするメンタルトレーニングを行うカンパニーチームドクターは、僕にだったらできるんじゃないかなと思っていて、それは資金源にもなるし、夢の実現のためのネットワークにもなりえますしね。

 また、メンタルトレーニング事業は、僕の夢をかなえる資金を生み出せるキャッシュフローになりえてないので、対象やレベルをもう一回見直そうと思っています。確かにクリエイツジャパンで行っている企業のメンタルトレーニング事業は、収益としてはエミネクロスグループの中では一番高い。そこを少しずつ増やしていくことは、エミネクロスグループの資金源にはなっていくんじゃないかなと思います。でも、全体を動かしていくための資金としてはまだまだ全然弱いんです。

 この新しい産業医としてのカンパニーチームドクター事業とメンタルトレーニング事業を資金調達の2本柱にして、プロチーム、学校という夢に向かっていくのがいいんじゃないかと。もちろん横軸には講演会、書籍の執筆、取材への対応をおき、その周りに趣味としてのクラブチームの運営や子供バスケ塾などを配置して取り組んで行こうかと思っています。要するに、大きな夢に向かって、これまでのいろんな組織や事業を再編成しようとしているところなんです。

 占いに行く度に、あなたはお金が入るけど出る人だねってよく言われるんです(笑)。確かにエクセレンスという単なるバスケのクラブチームの運営費だけでも年間400万円くらいはかかるし、他の事業のスタッフの人件費だけでも年間かなりの額のお金が出て行きますからね。

 占い師にもその出ていく方を整理して何とかしない限りは、本当にやりたいことはできないよって言われるんで、今年のテーマは、本当にやりたいことを絞りつつ、支出の方もやっぱり考えなきゃいけないなと思っているんです。

 
女性経営者たちへのメンタルトレーニングを行っている(写真提供:辻秀一氏)

夢を実現するには資金がいる。辻氏のように次から次へと夢が湧いて出てきて、しかもその夢が社会を変える可能性をもつほど大きいとなると、まさにいくらあっても足りないだろう。しかしどんなにたいへんでも仕事がつらくて辞めようと思ったことはない。そう言い切る辻氏にとって今の仕事は、やはり天から与えられたものだった。

つらくて辞めようと思ったことはない
 

 独立してこれまでにつらいと感じたことはやっぱりお金のことです。やりたいことは次から次へと出てくるんですが、それに追いつくだけの資金が足りない。

 自分のやるべきことの本質は全く揺らいでないけど、それをいかに、僕が生きている間に実現するかという点で常に悩んでいます。

 資金がうまく循環しながら、僕という存在だけに依存せずに、スポーツという素材で社会が良くなり日本が良くなり地球の平和につながるシステムをつくるにはどうすればいいかということを常に考えています。今のレベルの中では動いているけど、まだまだ全然足りないと実感しています。

 例えば100人集まる講演会を年間100回やっても、1万人の人にしか会えないですよね。それを10年やっても10万人。10万人に伝えても、社会や世の中がそんなに変わるとは思えない。じゃあ本でやろうといっても、『スラムダンク』は30万部売れましたが、どの本も30万部はなかなか売れない。それ以外の本は数万部ですから。

 だから今はより多くの人びとに伝えるためのひとつの手段としてバスケのプロチームをつくろうと動いていますが、やっぱりまた多額のお金がいる。今のエミネクロスグループの中で常に3億円を捻出できるほどのシステムはありません。僕はビジネスマンじゃないので3億円を生み出す新しいビジネスの仕組みなどなかなか思いつかないですしね。

 じゃあ僕自身がもっと有名になればいいのか。その努力をする必要があるのか。でも有名になることが目的ではないし、有名になることで自分のやるべき軸がブレちゃっても困るなとか……。自分のやりたいことや目指す行き先などの根本はブレてないですけど、どうすればいいのかその方法論についてはもう日々悩んでます。

 今までも好きなことしかやってこなくて、それがうまくいくと信じてはいるんですけど、やっぱりそこには知恵やしくみが必要。夢を叶えるにはどうしてもお金が必要なんだけど、お金と夢、ビジネスと僕の好きなことを結びつけながら、うまく動かしていくというのがなかなか一筋縄にはいかないですね。

 そのほかでは、僕がやってるような仕事って「新しいスポーツ、新しい医療を世の中に普及させる」というパイオニア的なものなので、スポーツ界からも医療界からもバッシングされることも少なくない。どっちも保守的な業界ですから。それにしたってつらいと感じるまではいかないかな。

 悩みといえばそれくらいで、この仕事そのものがつらくてやめようと思ったことは一度もないですね。いつもなんとかなると思っていて、実際、なんとかなってきましたから。

 ただ、どうして僕がこういうことをやる羽目になっちゃったのかなとは思います。きっと、こういうことをやる天命が下ってるからやってるんだろうけど、なぜ下るのが俺じゃなきゃならなかったのかって。下ったことに対してはやるしかないから、やめようと思ったことはないけど、なぜそれが俺だったんだろうっていうのはいつも思ってますね。

 
辻氏のオフィスには井上雄彦氏の直筆の色紙が飾られている(※クリックで拡大)
今の仕事は天職
 

 今の自分の仕事は天職だと思っています。エミネクロスのコアとなっているメンタルトレーニングのやり方だって、スポーツ心理学を学問として体系立てて学んで生み出したわけじゃないんですよね。

 人の心を元気するにはスポーツ心理学のメソッドが必要だと思って自己流で学び始めて、『スラムダンク』を使って指導していたものを一冊の本にしようと思っていたとき、突然、メンタルトレーニングの体系みたいなもの、人間の心の普遍的システムってこうなんだっていうのがばーっと降りてきたんですよ。今まで体系立ててスポーツ心理学を勉強してきたわけじゃないのに。今でも不思議なんですけどね。

 また、やり始めたときから僕の講演って好評で今でも依頼がしょっちゅう来るんですが、その大勢の人前で話すことだって、習ったことはないですしね。

 よく天職って自分で探して得るものじゃなくて、天から与えられたものだっていうじゃないですか。そんな感じなんだと思っています。

自分のために「与える」
 

 よく、自分が得てきたものを社会に還元するために仕事をしているという人がいますが、僕は還元という言葉はあまり好きじゃない。「与える」の方が好きですね。「フォワードの法則」というのがあって、人間、プレゼントをもらうとうれしいですよね。これはもらう喜びです。誰にでも起こる感情の反応で、動物にでも起こります。

 一方、与える側のエネルギーも実は上がるんです。これは人間だけが持っている法則なんです。プレゼントはもらってもうれしいけど、あげてもうれしいでしょう? あげようと考えてるだけでも、人間はエネルギーが上がるんですよ。

 この場合は与えた相手が喜んだ分、損したと思わないんですよ。自分もうれしいから。つまりエネルギーが両方とも上がる。これが「フォワードの法則」で、その与えるという主体的な行為が、自分の人生も相手の人生も豊かにしていくためにもっとも必要なことなんです。これは物理で習うエネルギー普遍の法則とはずいぶん違いますよね。

 その法則がわかっていて、自分から与えるという主体的な生き方をすれば、いつも元気でいられるじゃないですか。

 一方、もらう喜びは、もらえないとストレスになるんですよ。なぜなら「もらう」という行為は受身で、自分で決められないから。主導権は相手にあるから。そうするともらえたとしても、自分が満足できないものだったら、もっといいものはほしいとか、もっとたくさんほしいとか絶対ストレスが発生します。もらう側の喜びはいつも与える方で決まるから、いつも不安定なんですよね。

 だから僕は「みんなのために」という自己犠牲の精神でいろいろやってるわけじゃなくて、いつも自分のためにやってるんです。自分がいつも元気でいることが、一番他人のためになると思っているから。本当に自分のためにすることが相手のためにもなるんです。

 それと、医者の家系の中で育ったことと、中高時代にキリスト教の学校に通ってたことで、奉仕や愛という精神が目に見えない僕の遺伝子の中に組み込まれて、そこにプラス自分のために生きるということがあいまって、僕の生き方のひとつの指針として「与えたい」という心が根付いているような気がします。だからもらったものをみんなに還元するというんじゃなく、ただ与えるということなんですよね。

一日のうちのほとんどの時間を仕事に費やしている辻氏。しかしネガティブな感情は微塵も感じられず、むしろ全身からエネルギーを発散させ、周りの人々すら元気にさせるほどに輝いている。そんな辻氏にとって仕事とは何か、何のために、誰のために働くのか。そして彼をここまで衝き動かしているものは何なのか。

仕事とは人生そのもの
 

 僕にとって仕事とは何か。うーん……ただひたすらに楽しんで生きることが、仕事のような気がしますね。少なくとも自分の今やってることを仕事だと考えたことはないですね。僕のモットーは「play」なので。playというのは、とにかく何でも楽しんですることだから、「play life」、「play business」、「play basketball」。根底はplay。play=仕事、生きる、っていう意味。仕事もworkじゃなくて、playって感じですね。だから人生そのものが仕事ともいえますよね。当然プライベートと仕事との境がなく、毎日寝て起きて、生きてることが全部仕事。毎日6時に起きて2時に寝てますから、20時間くらい働いてますね。でも毎日楽しいんですよね。playだから。

自分のためにしか働いていない
 

 じゃあ誰のために働くか? それは自分のためです。自分のためにしか働いてないですね。でもそれが世の中のためになると信じてますから。自分のために、本当に自分にできることを一生懸命楽しく元気にやっていれば、それがみんなのためになると思ってますね。

「子供や家族のために」とも思っていません。もちろん子供はとても大事で特別な存在で、死ぬほど愛しているし、あげられるものは全部あげたいと思ってるし、本当に幸せになってほしいと心底思ってます。でも子供たちのために働くなんてこれまで思ったこともないし、今でも微塵もありません。あくまで自分のためです。でもそうすることが子供や家族のためになると信じているので。

 第一に子供や家族のためといって働いている人たちは、まず自分のためというのがないからしんどいし、ストレスが大きくなると思うんですよね。家族のためにって思ってると、家族から理解や見返りが得られないと、俺はおまえらのためにこんなに頑張ってるのにって文句をいいたくなるから、それは結局家族のためもなってないんですよ。

自分で決めて自分でやれ
 

 特に組織の一員として働く人々は、給料や仕事の中身など確かに自分で決められないことの方が多いですよ。オーナーですら自分で思い通りにできないことが多い。

 誰でもみんなしなきゃいけないことは持ってるけど、「どうやってそれをするか」だけは自分で決められるんですよ。給料は決まっているけど、どうやって1カ月を過ごすか、今日のスケジュールは決まっているけど、どうやって過ごすか。そういった「どうやってするか」を考えたり、それを実際に「する」か「しない」か、最後に決めてるのは絶対自分なんです。

 だから、この「主体的に決める自分」を持っていない限りは、他人からやらされてる側になっちゃうからストレスが大きくなるし、しんどいんですよね。だからどんなことでも、どうやってやるのかを考えて決めるのは全部自分なんだと知ることが必要だと思うんです。

 みんなそれを知らないのは学校教育のせいだと思うんですよ。自分の頭で考えて決断して行動するんじゃなくて、なんでもやらされてるから。そういう教育を受けてきた人たちがまた親として教育してるから、その子供も同じようになっちゃってると思うんですよね。僕が学校法人を作って教育したい理由もひとつはそこにあります。

生まれ変わったら2メートルになりたい
 

 生まれ変わっても、同じ仕事がしたいか? うーん……まず仕事の前に身長を2メートルにしてほしいですね(笑)。仕事よりもバスケットボールの選手として成功したいです。今でもバスケをしている夢を見るほど大好きですから。可能性だけで言えば、これから何でも叶えられる可能性はあるけど、唯一、もうバスケのプロ選手としてプレイすることだけはもう僕の人生では叶えられない。だからもし生まれ変われたら、身長2メートルでNBAにチャレンジしたいと思いますね。

 仕事をするなら……分からないですね。やっぱりサラリーマンじゃなくて、自分で何かやりたいですけど、それが何なのかは分からない。それは神様が与えてくれる天命で才能だと思っているので、それにしたがって自分で何かやりたいという気がしますね。でも、同じことをもう一回やれといわれても、決して嫌ではないですけどね。

みんなに気づいてほしい
 

 僕を動かしている根本のエネルギーは、「みんなに知ってもらいたい」という欲求ですかね。知ってもらいたいのは何のためかというと、みんなにもっと良くなってもらいたいからですよね。「良くなる」ということは、みんなにもっと元気でいてほしいとか、幸せでいてほしいとか、言葉にするとクサいけど、みんなのQOLを充実させたいということです。同時にそれが自分の一番の幸せだと思っているんです。

 QOLは他人と比べることはできません。100万円の給料と20万円の給料だったら、100万円のほうが良さそうに見えるけど、QOLって人それぞれだから、20万円でもいいからやりたいことをやれるほうがいいという人もいるかもしれません。その人にとっては20万円の方がQOLが充実する生き方なんですね。

 でもそれがなかなか自分で気づいていない人が多い。その人にとっては20万の方がQOLを高くできるのに、100万円の方にいっちゃうとかね。これはひとつの例ですが、つまり、その人にとって今より少しだけ豊かなQOLにするヒントがいっぱい周りに転がっているのに、それに気づいてない人がいっぱいいる。だからそういう人たちに気づいてほしいなと思うんですよ。

 その気づかせる手段が僕の場合はスポーツの中にあったんです。井上先生はそれが漫画で、『スラムダンク』や『バガボンド』や『リアル』なんだろうし、仲良くさせていただいている佐渡裕さんという指揮者だったら、それが音楽でクラシックなんじゃないかなと思っているんです。

世界的指揮者の佐渡裕氏と(写真提供:辻秀一氏)

 今、いろんな分野の優れた人と不思議と出会ったり、意気投合したりしているんですが、そういう人たちって、みんながもっといろんなことに気がついて良くなってほしいという願いをもっていて、それを自分にしかできない素材で気づかせようとしている人なんじゃないかって思うんです。手段は人によって違うけど、そういう人たちとシンクロして引かれあって出会っているような気がします。これからまたどんな人と引かれあって出会えるかが非常に楽しみなんですよね。

 ここに登場してくるような「魂の仕事人」はみんなそうじゃないですか? みんなつながってるんですよ。魂の仕事人同士がつながらなくても、その人の存在によって、気づいてよくなってほしいと思った人が別のところでつながってる可能性はありますよね。そういう「つながり」で、どんどんみんな良くなっていくんじゃないですかね。そう願いたいですね。


 
第1回 2008.1.7リリース 個人のQOLを上げて 豊かな世の中に
第2回 2008.1.14リリース自分と向き合い内科医から スポーツ医学の道へ
第3回 2008.1.21リリース QOLの重要性に開眼 運命的な出会いで独立
第4回 2008.1.28リリース スポーツで社会貢献 次々と組織を設立
第5回 2008.2.4リリース 5年後の夢は学校創立 仕事とは楽しんで生きること

プロフィール

つじ しゅういち

1961年生まれ、46歳。東京都出身。「スポーツで社会貢献」という理念の下、4つの会社、1つのNPOを運営するスポーツドクター。大学卒業後、慶應義塾大学付属病院の内科医となるが、医師としての適性に疑問を抱き、スポーツ医療の道へ。映画「パッチアダムス」でクオリティ・オブ・ライフの重要性に開眼。慶應義塾大学スポーツ医学研究センターを経て、37歳のときに独立。以降、トップアスリート、芸術家、ビジネスマン、企業などのメンタルトレーニング、複数のバスケットボールチームの運営、講演、セミナー、書籍執筆など、スポーツ、医療、教育、芸術、ビジネス等の世界で八面六臂の活躍を見せている。

【主な資格・役職】

  • 日本体育協会公認スポーツドクター
  • 日本医師会公認スポーツドクター
  • 認定産業医
  • 医療法人杏会理事
  • NPO法人キッズチアプロダクション理事
  • 都立三田高校学校連絡協議会委員

【主な監督チーム】

  • バスケ・クラブチーム「エクセレンス」監督
  • 車椅子バスケ「No Excuse」アドバイザー
  • 聾バスケチーム「Rough」監督
  • チアリーディングチーム「ライブリーズ」監督

【主なサポートチーム】

  • レラカムイ北海道バスケットボールチーム 2007〜
  • ラグビー日本代表チーム 2006〜
  • NECラグビー部 2005〜
  • 慶應義塾大学バスケットボール部 1990〜2001
  • 全日本車椅子バスケットボールチーム 1999〜2004

【主なサポート選手】

  • 和智健郎 / 喜理子(競技ダンス) 2005〜
  • 柳沢将之(プロサッカー) 2005〜
  • 小池葵(プロボディボーダー) 2002〜2004
  • 芹澤信夫(プロゴルファー) 2000〜2004
  • 佐藤文机子(プロライフセーバー) 1998〜2004
  • 平澤岳(プロスキーヤー) 1995〜2003
  • 野田秀樹(プロレーシングドライバー)1999〜2000

【カンパニーチームドクターとしての主なサポート企業】

  • 株式会社東京スター銀行
  • 株式会社ジャパネットたかた
  • 全日本空輸株式会社 客室本部
  • 株式会社ドリームコーポレーション

【主な書籍】
『仕事に活かす集中力のつくり方』(ぱる出版)
『感じて動く』(ポプラ社・指揮者佐渡裕氏との共著)
『スラムダンク勝利学』(集英社インターナショナル)
『ほんとうの社会力』(日経BP)
●そのほかの書籍についてはコチラ

【関連リンク】
■オフィスドクター・辻

■公式ブログ・元気!感動!仲間!成長!DIARY

■エミネクロスグループ

 
おすすめ!
 
『スラムダンク勝利学』(集英社インターナショナル)

社会現象にもなった井上雄彦氏の漫画作品『スラムダンク』を題材に、スポーツの社会的価値、人生との共通点を伝えようと、渾身の想いを込めて書き上げた一冊。2000年の発行から現在もなお版を重ね、30万部を記録しているベストセラー。

『仕事に活かす集中力のつくり方─“辻メソッド”でフローに集中する人生を獲得する』(ぱる出版)

長年研究してきたスポーツ心理学をビジネスに応用し、「最高の集中力を生む、揺らがない、とらわれない心のつくり方」、「ここ一番で集中するための方法、切れた集中を取り戻す方法」、「降格人事等でモチベーションが維持できないときどうするか?」などのメンタルノウハウを伝授。仕事の成果を挙げたい、充実した職業人生を送りたいと願っているビジネスマンは必読!

『ほんとうの社会力』(日経BP)

「社会力」とは「自分を元気づけ、自分らしく社会で生き抜く力」だと辻氏は定義している。その「社会力」を自分軸、他人軸、時間軸という3つの観点から分析し、更にアメリカバスケットボール界のスーパースター、マイケル・ジョーダンと、『スラムダンク』や『リアル』で大人気の井上雄彦氏の漫画作品『バガボンド』の宮本武蔵を実例にする事で、人生に必要な「社会力」をわかりやすく解説している。自分らしく生きたいと思っている人は必読。

 
 
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