独立してこれまでにつらいと感じたことはやっぱりお金のことです。やりたいことは次から次へと出てくるんですが、それに追いつくだけの資金が足りない。
自分のやるべきことの本質は全く揺らいでないけど、それをいかに、僕が生きている間に実現するかという点で常に悩んでいます。
資金がうまく循環しながら、僕という存在だけに依存せずに、スポーツという素材で社会が良くなり日本が良くなり地球の平和につながるシステムをつくるにはどうすればいいかということを常に考えています。今のレベルの中では動いているけど、まだまだ全然足りないと実感しています。
例えば100人集まる講演会を年間100回やっても、1万人の人にしか会えないですよね。それを10年やっても10万人。10万人に伝えても、社会や世の中がそんなに変わるとは思えない。じゃあ本でやろうといっても、『スラムダンク』は30万部売れましたが、どの本も30万部はなかなか売れない。それ以外の本は数万部ですから。
だから今はより多くの人びとに伝えるためのひとつの手段としてバスケのプロチームをつくろうと動いていますが、やっぱりまた多額のお金がいる。今のエミネクロスグループの中で常に3億円を捻出できるほどのシステムはありません。僕はビジネスマンじゃないので3億円を生み出す新しいビジネスの仕組みなどなかなか思いつかないですしね。
じゃあ僕自身がもっと有名になればいいのか。その努力をする必要があるのか。でも有名になることが目的ではないし、有名になることで自分のやるべき軸がブレちゃっても困るなとか……。自分のやりたいことや目指す行き先などの根本はブレてないですけど、どうすればいいのかその方法論についてはもう日々悩んでます。
今までも好きなことしかやってこなくて、それがうまくいくと信じてはいるんですけど、やっぱりそこには知恵やしくみが必要。夢を叶えるにはどうしてもお金が必要なんだけど、お金と夢、ビジネスと僕の好きなことを結びつけながら、うまく動かしていくというのがなかなか一筋縄にはいかないですね。
そのほかでは、僕がやってるような仕事って「新しいスポーツ、新しい医療を世の中に普及させる」というパイオニア的なものなので、スポーツ界からも医療界からもバッシングされることも少なくない。どっちも保守的な業界ですから。それにしたってつらいと感じるまではいかないかな。
悩みといえばそれくらいで、この仕事そのものがつらくてやめようと思ったことは一度もないですね。いつもなんとかなると思っていて、実際、なんとかなってきましたから。
ただ、どうして僕がこういうことをやる羽目になっちゃったのかなとは思います。きっと、こういうことをやる天命が下ってるからやってるんだろうけど、なぜ下るのが俺じゃなきゃならなかったのかって。下ったことに対してはやるしかないから、やめようと思ったことはないけど、なぜそれが俺だったんだろうっていうのはいつも思ってますね。 |