まだイソ弁でサラ金問題をやり始めたころは、やり方が分からないから被害者と一緒に実際にサラ金の店舗を50、60店回ってね。社員と直接交渉してたんですよ。でもサラ金を規制する法律がまだできてないから、やっぱり脅されたりすごまれたりで全然埒があかなくてね。
今までで一番怖かったのは年配のサラ金業者が若い暴力団風の取り立て屋を連れて事務所まで乗り込んできたときですね。事務所には他の相談者もいたので、近くの喫茶店で対応したんですが、暴力団風の取り立て屋はドスをちらつかせながら「一切手を引け、引かないんだったらおまえが全額払え」っていうんですね。
そのときは慣れてないこともあり、さすがに怖かったですが、ここでビビってナメられたら終わりだと思って「あんた方、交渉に来たのか、それともケンカしに来たのか、ケンカに来たなら話し合う余地はありません! 弁護士のケンカは裁判ですから、本件は訴訟提起します!」って他の客にも聞こえるような大声で言って店を出たんです。事務所から近かったんですが、帰る道のりが普段の何倍にも長く感じましたね。事務所から自宅に戻るときも怖かったですね。つけられてるかもしれないってね。
で、その日から毎日、夜中の2時3時に無言電話がずーっとかかってくるんですよ。電話の向こうはわいわい騒いでいるから事務所に乗り込んできたサラ金業者と取り立て屋に間違いないと。そこですぐ裁判所にそのサラ金業者を被告として債務不存在確認訴訟を提起したんですが、そのとたんに無言電話はぴたっと止まりました。
そして裁判所の文書提出命令で、サラ金業者に帳簿とか全部出させた。そして利息制限法で計算すると、150〜160万円請求していたのが数万円で済むとわかった。被害者はそれを払って解決したんですね。
この話には後日談があって、裁判が終わった後、サラ金業者に裁判所の廊下で「頼みたいことがある」と話しかけられたんです。話を聞いてみたら、「先生の事務所に連れて行った若い衆が主婦を恐喝して警察に逮捕されてしまったから、その弁護をやってくれないか」ということでした。もちろん「私に頼むと弁護料は高いよ」って断りましたけどね(笑)。
当時の取り立てはこういう感じだったんです。被害者から、朝5時6時に自宅に電話がかかってくるんですよ、眠いのにね。当時は自宅の電話番号も教えてたから。で、どうしたの? って聞いたら、「サラ金の取り立てが来てて、子どもが学校に行けないし、ダンナも会社に行けないから帰るように言ってくれ」っていうの。その頃はサラ金を規制する法律ができてない(注1)からね。しょうがないから電話口に取り立てに来てるサラ金会社の社員を呼んで、「朝っぱらから何やってんだ!」とガンガンやるでしょ。するとその社員は「自分も来たくて来ているんじゃない。店長に金取って来いと言われてるからしょうがなくやってるんだ。店長と話してくれ」と言うんですよ。しょうがないから、じゃあ店長の電話番号教えろって、今度は店長と話すわけです。何やってんだってね。そしたら後から取り立てに来てたサラ金会社の社員から、「先生ありがとうございました、やっと帰れました」ってお礼の電話がかかってきたこともありました。
そういうのが一日中ですよ。夜中も11時12時に押しかけて、眠らせないわけです。そういうときも電話がかかってきて、「夕方から取り立て屋が来て座り込んで帰らないから、何とか先生の力で帰らせてほしい」と。同じく取り立てに来てる社員を電話口に出させて、「何やってんだ」とやりあう。朝と同じことをやってたんですね(笑)。
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