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魂の仕事人 魂の仕事人 第3回 其の三 photo
命懸けの真剣勝負の中からでしか「いいもの」は生まれない この仕事は私の天職であり人生そのもの 死ぬまで仕事してるでしょうね
 
イエローキャブ辞任ではさまざまなトラブルをいまだに引きずり、再スタートを切った新事務所でもいろいろな問題を抱えている野田社長。それでも「この仕事は天職」と笑顔で言い切る。野田社長をそこまで仕事に駆り立てるものは何なのか。そして今後の目標は──。
  サンズエンタテインメント代表取締役 野田 義治
 
タレントは大事な仕事のパートナー マネジャーも仕事に命を懸けなければならない
 

 18歳で上京して、これまで40年間経験してきたことすべてが「今」につながっていると感じます。役者をやってたことで演技のこともある程度分かるし、ジャズ喫茶では芸能ビジネス関係者と話すことで人脈もでき、業界の雰囲気もつかめた。ディスコ時代のバンドのブッキングの仕事は、今やっていることと基本は同じです。何ひとつ無駄なことはない。

 でも次はこうしたい、あそこへいきたいと確かな戦略をもって歩いてきたわけではありません。そのときに自分がやりたいこと、興味のあることに必死に打ち込んで、気がついたら今があるという感じです。今思えば、「有名になりたくて役者を始めた。でもそれだけじゃ食えないから、どうやって食っていこう」というところからスタートしてるんですね。

 
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 今の私の大きな仕事はタレントを育て、売り出すことですが、タレントを「商品」だと思ったことは一度もありません。彼女たちは仕事の上での大事なパートナーです。だから時にはプライベートなことまで立ち入って聞いたり、相談に乗ったり、アドバイスしたりするんです。彼女たちはみなさんに「かわいい」と思ってもらうことが成功の絶対条件なので、肉体や精神の健康面がよくないと仕事に支障がでます。

 「タレントは売れてきたら清水の舞台にいるのと同じ」です。舞台の前の方へ行けば多くの人に見てもらえるけど、そのぶん転落する危険も増す。マネジャーはタレントが転落したときは真っ先にその下に飛び込み、クッションになって守らなければならない存在なんです。自分がケガをしてもタレントは無傷でいられるように。つまりトラブルやスキャンダルから体を張って守らなければならない。それほどマネジャーという仕事は大事なんです。

 

 私は所属タレントが危機的状況に陥った場合、その現場にいつでも駆け付けられる体制を作っています。実際常にどこかしらの現場にいますから。タレントに「私は会社に守られている。どんなことがあっても社長は私の味方なんだ」という安心感を持ってもらい、信頼関係が築ければうまくいきます。

 タレントは仕事に対して常に「自分に求められているものは何か」を考えています。強制されているわけじゃない、自分の代わりなんていくらでもいるという危機感が彼女たちを真剣にさせる、いつも自分との勝負なんです。そんなギリギリのところで身体を張って戦っているタレントに対して、マネジャーだって命懸けにならなきゃダメなんですよ。タレントの持ち味や魅力を理解し、どうすれば人気が出るか戦略を練り、必要なレッスンは受けさせるなど、我々自身のもてるすべての力を限界まで費やす。すべてはお客さんの喜ぶ納得のいく仕事をタレントにさせてやるためです。これはマネジャーの義務なんです。

 でも残念ながら多くのマネジャーにはあまりその意識がない。よく現場でタレントが撮影してるときに担当マネジャーは外で他のマネジャーたちと騒いでるなんて話を聞くのですが、私だったら許しません。どんな弊害があるかっていうと、タレントのテンションが落ちます。すると自然と仕事が減る。そんなことでタレントが育つわけないじゃないですか。だから私はマネジャーは特に厳しく教育します。有能なマネジャーを育てることが、売れるタレントを作ることにつながるからです。

方程式がないから難しい人の教育 タレントもマネジャーも求められるのは"頭の良さ"
 
 とはいえ、マネジャーを育てるのは非常に難しい。ある意味タレントを育てるよりも。それは方程式や教科書がないからです。

 タレントを守り、より良い仕事を取ってくるには経験も武器ですが、最も重要なのは決断力と行動力。そして頭の良さ。それも学校の成績が良いようなタイプではなく、状況を判断して最善の選択をしていけるような、ある意味野性的な強さがないとダメですね。

 何をやるにしても正解は時と場所、状況によって変化するからです。我々の仕事で過去の事例を持ち出して正解を主張しても通用しません。「今」という空気を読んで切り抜けていく能力が求められます。これはすべてのビジネスの現場でいえることかもしれませんね。

 

 私も若いときはよくやりましたが、マネジャーには仕事を取るためにハッタリをかませる度胸も必要です。例えば制作側が歌って踊れる巨乳のコを探していたとする。でも売り込みたいコが巨乳だけどあまり歌やダンスが得意じゃない。でも相手には「ウチにぴったりのコがいますからぜひ使ってください」と言うんです。内心ドキドキですが、要は本番までにそのコが歌って踊れる状態になっていればウソをついたことにはなりません。ですから、すぐにそのコに歌やダンスのレッスンを受けさせ、本番までになんとか間に合わせます。要はハッタリをかました以上、何が何でも現実にしてやるという強い意志と実行力が必要なんです。もちろん、絶対ムリだと思ったらそんなことはしません。単なるウソつきになってしまって、逆に信用を落とすことになりますからね。このコならできそうかどうか、その辺を見極める目も重要です。

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売れるタレントと有能なマネジャーの発掘・育成。これら難易度の高い課題にチャレンジし続けている野田社長。どんなに大きな壁にぶち当たっても、決してあきらめず考え、行動することで突破口を開いてきた。野田社長にとって仕事とは、そして究極の目標とは──?
大好きだから苦難も乗り越えられる まずは自分のため。それが他人のためにもなる
 
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 タレントのマネジャー、芸能プロダクションの社長という仕事は、私にとって天職ですね。まだ世間に知られていないコを見つけ出し、育て、売り出すというこの一連の仕事そのものが楽しいんです。発掘するのも、育てるのも、売り出すのも本当に難しい。それが売れたら楽しさ、うれしさは数倍ですよね。タレントと一緒に大きな目標をクリアしたときがマネジャー冥利に尽きる瞬間です。

 人と会って話しをするのが好きだし、男として女の子も好きだし、親子ほど歳の離れているコたちと対等に話せることもすごく楽しいしね。そして大事な娘を預けてくれる親御さんの気持ちもうれしい。こんな私を信用してくれてるってことだからね。こういったことが仕事に対するエネルギーになってるかな。

 収入面はあまりモチベーションにはなってないですね。「俺、頑張ってる割にはあまりお金もらってねぇぞ」って思いますよ(笑)。お金が入ってきても、ほとんどがタレントの発掘、育成に消えてなくなりますから。それでも売れるコはほんのわずか。「財産はどのくらいありますか?」って聞かれても、何もないですよ。

 

 でもそれでもいいわけですよ。お金を稼ぐためだけにやってるわけじゃないですから。それよりは、いいタレントを世に送り出したね、いい仕事をしたね、未だにイエローキャブといえば野田さんですよねって言われる方がすごくうれしい。ああ、今まで頑張ってきてよかったなと思いますよ。

 仕事とは、命懸けでやるものだと思うし、実際にそうしてきたという自負はあります。また、何のために仕事をするのかと問われたら、二つ返事で自分のためと答えます。この仕事、大好きですからね、私。そして自分のために頑張ることが他人のためにもなっていると思う。政治家のみなさんもお国のためとか言ってるから国民は彼らの言うことを真剣に聞かないんですよ。「自分はこうしたいからこうする、みなさんもそう思いませんか?」というのが共感を得るための基本スタンスだと思うんです。

仕事とプライベートの垣根はない 支えてくれる人がいるから壁を乗り越えられる
 
 私にとって仕事とは「戦い」です。我々のいる現場は常に人と人の主張がぶつかりあいます。製作、プロダクション、タレント、スポンサーなどさまざまな人の思惑・理想が絡みますから、みんな真剣です。でもここで逃げたり妥協したりしてはいけません。すべてはいいものを創るためです。真剣勝負の場からこそ、いいものは産まれるんです。

 常に仕事のことを考えているので、「ここからが仕事でここからがプライベート」という垣根はありませんね。ですから、私にとって仕事とは人生そのもの。だからこそ長く楽しくやっていけてるんだと思いますよ。

 とはいえ、仕事ですから楽しいことばかりじゃなく、もちろんイヤなことやつらいこともあります。これまでも「これはヤバイな〜」という危機的状況がいくつもありました。出版社をつぶしたとき、脱税疑惑をかけられたとき、そして、イエローキャブから別れたとき……。

 

 でもそんなときは四の五の言わずにとにかく頑張る。今まで以上に頑張る。これしかない。特にトラブルに見舞われたときは、謝れることは謝った上で今やれることを最大限やるというやり方を続けてきました。特に有効なのが、いろんなところに出かけていっていろんな人に会って話をすること。そうすることで新しいアイディアや忘れていたことなどが浮かんでくるんです。自分一人じゃ思いつかないことってたくさんあるでしょ。そういうパターンで苦境を切り抜けることも多いんです。また、今はイエローキャブと別れたばかりだから経営的に厳しいけど、そんなときでも人と会って話すことで元気になれたり、次の仕事につながったりするんです。

 私は独りじゃない。つらくて厳しいときでもついてきてくれるタレントやスタッフ、助けてくれる人がいるんです。本当にありがたいことです。今まで越えられないかもしれないと思った危機的状況なんていくらでもありましたが、その都度彼らに助けてもらいました。だから今後どんなピンチが来てもあきらめないで働ける自信があるんですよ。

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人脈は増やす努力よりも減らさない努力を これからやりたいこと、大きな目標が山積み
 
 やっぱり大事なのは人と人とのつながり。人脈です。もちろんピンチのときだけではなく、攻めるときにも人脈は重要です。我々の仕事はどこでどんな人脈が好転に結びつくか分からない。だから人脈を増やすよりも減らさない努力をしています。これはやらなきゃいけない仕事であるんだけど、楽しいことでもあるんです。だから仕事を楽しめる私は幸せだと思いますよ。

 私はよく仕事を山登りに例えるんだけど、もう八合目まで登ったなと思っても実際には五合目だったり、もう頂上だと思ったら九合目っていうのが仕事というものだと思うんです。特にこの仕事はなかなか頂上まで登れる人はいないんだけど、毎日頂上を目指して頑張ることそのものが楽しかったりするんです。たいへんさ、しんどさ含めてね。

 今後の目標は、息の長いスタータレントを作りたいってことですね。「最近売れてるね」ではなく、誰が見てもスターと呼ばれるような。今で言うと森光子さんとか中村玉緒さんなどですね。あと歌ね。売れる歌が作れるアーティストを作っていきたいという夢はありますね。

 それからマネジャーとしては次の時代に動いてくれるスタッフを何人作れるかってことも大切な仕事になると思う。これは会社を存続させていかなくてはならない経営者としての使命であり目標ですね。

 いずれにせよ、死ぬまで仕事しているんじゃないですか? いろんなことがあるけど、この仕事がものすごく好きだからね。

 
現在も雛形あきこ、山田まりや、MEGUMI、小林恵美、瀬戸早妃といった人気タレントを擁するプロダクションの社長として日々エネルギッシュに奔走している野田社長。人と会って話すことが好きという生来のマネジャー(営業にも置き換えられる)体質の彼は、逆境にあっても委縮せず、負けが込んでいるときこそ攻めの姿勢を崩さない。型にはまった仕事をよしとせず、ときに損得勘定抜きにタレントを守る姿勢が、彼女たちからは信頼という形で返ってきたりする。あらゆる物事に対してポジティブ思考で挑み、目標に向かってがむしゃらに頑張るその姿は、まさしく「魂の仕事人」そのものであった。
 
 
2005.9.5リリース 1.役者からのスタート
2005.9.12リリース 2.堀江しのぶの死に絶望
NEW! 2005.9.19リリース 3.仕事とは人生そのもの

プロフィール
 

野田 義治
(のだ・よしはる)
1946年富山県生まれ。広島市の高校を卒業後に役者を志し上京。数々のアルバイトを経験しながら劇団に所属。モダンジャズ喫茶やクラブでバンドのブッキングなどに携わり芸能界との接点をもつ。その後、大手芸能プロダクションからマネジャーとしてスカウトされいしだあゆみの担当に。1980年にイエローキャブを設立。第1号タレントの堀江しのぶの逝去を乗り越えて、かとうれいこ、雛形あきこ、山田まりや、MEGUMIなどの人気タレントを育てた。2004年11月、イエローキャブを離れ、サンズエンタテインメントの代表取締役に就任。現在でも現場至上主義社長として辣腕を奮う

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