今の仕事がぴったり？　それとも別なぴったりがある!?　進むべき道を生き生きと歩むには 「自分を知ること」が欠かせない。人材バンクのカウンセリングで、ぴったりルートを見つけよう

ネットワークエンジニアの菊池康介さん（仮名・32歳）。もっと技術力を身に付けたり、大規模ネットワークに携わる経験を積みたいのだが、運用・保守がメインの仕事で、なかなか機会が作れず「このままでいいのかなあ」とちょっと不安に感じていた。とはいえ、自分に転職できるだけのスキル・経験があるとも思えない。なんとなく八方塞がりな気がしている。

菊池 康介さん（仮名）

株式会社ファーストキャメルコンサルタント 本社 広田ゆり氏 コンサルタント歴8年。しっかりとしたヒアリングを行い、転職希望者の潜在的な願望を引き出すカウンセリングには定評がある。また的確なマッチングを行うためにフットワーク軽く、常に新しい情報を入手している。得意分野は、ＩＴ業界、コンサルティング、経営企画。

人間関係がいい職場にいて、これといって不満なく働いています。でも、ひとつ気掛かりなことがあるんです。30人ほどの事業会社の中でネットワークの運用管理をしているのですが、今の職場にいても新しい技術を身に付けられない状況です。このまま年齢を重ねていったら、他で通用しなくなってしまうのではとの不安が少しあって。今の仕事は、過去に構築したネットワークの運用が8割で、新しく提案することは年に１、２回です。 ということは、もっと提案業務に携わりたいという気持ちがあるわけですね。 そうですね。同時に、もう少し突き詰めた技術を持ちたいという気持ちもあります。自分の技術は、広く浅い気がしていて、自信がないんです。 なるほど、わかりました。それではまず、菊池さんの志向性を確かめるために、少々極端な質問をさせてください。もし転職するとしたら、より大きな規模のネットワークに携わりながらマネジャーの経験を積み、3年後には少しでも上のポジションに付いているのがいいか、それともずっと現場にいて技術を極められるのがいいか。どちらの志向が強いですか？ 本心では、技術を突き詰めたいですね。でも、その道は選択できないだろうなとも思っています。これまでやってきたことを考えると、より大きな規模のネットワークに携わり、のちのちマネジメントもするという方向になってしまうだろうなと。 コア技術をもっと身に付けていくことにチャレンジしたいという気持ちはどのくらいあるのですか？ うーん。 「どうかなあ」と迷っているということは、リスクを負う選択よりは、自分の売りであるサーバ分野や運用の経験で評価されたいという気持ちが強いのではないでしょうか。これからコア技術を身に付けたい、リスクを負ってでもそのための転職がしたいというなら、もちろん、まだ可能だと思いますが、受け入れてくれる企業は限られてくるし、勉強させてもらう立場になるので年収も下がる可能性は高いですよ。 あと2歳若くて30歳だったらチャレンジしたかもしれないけど、今の自分には飛び込めそうもないかもしれません。 そうすると、リスクを負わない選択として、菊池さんの強みであるサーバ分野や運用の経験を生かしながら、より大きなネットワークに携われる選択をした方がよさそうですね。キャリアパスは３つ考えられます。1つ目が成長中の事業会社です。まさに今大きくなろうとしつつある会社なら、ネットワークの規模もそれに合わせて大規模になっていくでしょう。2つ目が、もともと大規模ネットワークを持っている会社での運用。3つ目が、NIer。いろんな業界に対して「こうしたらどうですか？」と提案できるし、場数も踏めます。すでにあるネットワークを再構築することもあれば、ゼロから構築していくこともあるため、新しい技術に接する機会もあると思いますよ。 なるほど。ただちょっと不安が……。性格的にマネジャーに向かいない気がしているんですね。やれといわれればやるけれど、積極的にやりたいとも思えなくて。 マネジメントが好きじゃないということですか？ というよりは、自信がないんです……。 きっと「完璧にやらなくちゃ」との思いから、不安になっているのでしょう。でもマネジメントの第一段階は、部下の話にきちんと耳を傾けることなんです。部下たちの意見、困っていること、不満などを汲み取って「こういうことを求めているんだな」を知り、それに答えていくことから始めればいいんですよ。要するに、相手の気持ちを察すること、そして壁にぶつかっても頑張ってマネジメントをやっていこうとする精神的な強さを持つことが、まずは大切なんですね。 なるほど。そのくらいなら、自分にもできるかもしれない。 じゃあ、さほど不安に思う必要ないですよ。気持ちがあれば、あとは経験を積んでいけば業務知識は身に付きます。きっと大丈夫ですよ。

もうひとつ、相談したいことがあるんです。ネットワークエンジニアとしてのスキルについてです。広い範囲をカバーしているけれど浅いスキルしかないんじゃないかと気になっているんです。 UNIX（Solaris系）にかなり早い時期から携わっているし、Windows NT/2000/XP、Linuxも手掛けている。さらに、Cisco-IOS、Oracle8なども経験している。ネットワークエンジニアとしてのキーワードはしっかり押さえていて筋の通ったスキルを身に付けてきていると思いますよ。システムを広く知っているのが、運用をしてきた人の売りでもありますから。 ただ……。自分では「このくらいまでは深掘りすべきだろう」と思うラインがあるんですが、そこまでいっていないものもいくつかあるんですよ。 スキルをもっと深めたいけれど現場ではその機会がないというなら、自分で学ぶ必要がありますね。資格取得の勉強をするのもひとつの方法です。LPIなどのLinux資格やCCSP、CCIEセキュリティ、情報セキュリティアドミニストレータといったネットワークセキュリティに関する資格などは、今まで経験したことを深められる内容だと思いますが、いかがですか。「資格を取るぞ」と思えば勉強するきっかけができます。まずはどんどん知識を増やして、それを生かせる環境をつくっていけばいいわけです。また、転職に資格が必須ということはありませんが、学ぶ姿勢のアピールにはなるんです。NIerなどの場合は、クライアントから受注する際に資格取得者がプロジェクトの中にいること自体が売りになるケースもあります。持っていて損はないですよ。 じゃあ、取れそうかなと思うものから挑戦してみようかな。 これまでの経験で培ったスキルにまず自信を持ってください。資格を取れば、さらに自信が深まると思いますよ。

ここ数年、転職ってほとんど考えたことがなかったんです。自分に力を付けるなら、転職して環境を変えた方がいいんだけど、自信がなかった。転職する人って、自分のスキルに自信があるからできるんだろうと思っていたんですよ。 そんなことないですよ。「スキルや経験に自信があります」という人はほんの一部です。多くの人が「通用するだろうか」と不安ながらも、「このままではいけない」との切迫した気持ちから、情報だけでも集めてみようかと人材バンクを訪れてきます。それで菊池さんのように、自分で思っていたよりも転職市場では評価されそうだということに気付くんですね。 ちなみに菊池さん、セキュリティの経験も十分強みになるんですよ。 Firewallはもちろん手掛けていますが、セキュリティポリシーを作って、組織の中に浸透させようとしているのですが、なかなか大変です。 セキュリティはここ数年、特にこの1年の間に必要性が高まってきた。対応できる人がまだまだ少ない分野です。そのため、セキュリティポリシーを策定したことがある、プライバシーマークの取得に貢献したなどの経験は、企業側の興味をひきます。セキュリティはこれから知識・スキルを身に付けていっても十分間に合う分野です。しっかり勉強していけば、将来的に「このネットワークには、こういうセキュリティが必要」と提案するセキュリティコンサルタントの可能性も見えてくると思います。 なるほど。自分のこれまでの経験が思ったより評価されてるんだなという気がしてきました。 そうです。自信を持ってください。32歳の今は、転職を考えるにはちょうどいい時期かもしれません。今いる環境では自分の力を伸ばすのに限界があると感じるなら、より大きなネットワークに携わりながら、スキルも深め、少しずつマネジメントの経験をしていけるようなポジションをお勧めしたいですね。 話を聞いてもらって、もやもやとしていた不安が解消された気がします。これから先のこと、ちゃんと考えてみようと思います。ありがとうございました。