私は実は一度しか転職経験がありません。社会人３年目のときに、当時の上司が独立することになり、声をかけられたのがきっかけでした。もちろん悩みましたよ。何しろ大企業から立ち上がったばかりの会社への転職ですから……。お給料や待遇面など、条件を挙げだしたら、すべてにおいて転職しない方が有利なように思えてきます。先輩や同僚に相談しても、みんな口を揃えて「絶対に辞めない方がいい」と言う。しかし、直感は「転職した方がいいよー」と言うのです。

で、転職することに決めました。決め手となったのは５年後の自分です。

当時２５歳だった私は３０歳になったときの自分を想像しました。会社のブランド力もあり、時代をとらえる力も、ビジネスのスピード感もあって、お給料もいいし、手を挙げる人間にはやりたいことをやらせてくれる社風。しかし、条件の整った会社には、それなりに優秀な社員が多いのも事実です。当時営業職だった私が周りを見渡すと、先輩社員はほとんど営業部の中でキャリアを積んでいました。一方、企画などのビジネスを生み出す仕事に就く人たちは、新人時代からすでにそのキャリアを歩いているのですよ。官僚でいうキャリアとノンキャリアの如くです（決して営業職がノンキャリアだってことではないのですが……）。でも、私が朝から晩まで飛び込み営業をしていたとき、同期のキャリア組（笑）は着々と未来の人脈を築いているのでした。

もちろん、営業は素晴らしい仕事です。営業の仕事が今の私を創ったと言っても過言ではないほどです。が、他の先輩社員を見ていて、閉塞感を感じたのも事実。５年後の自分がなんとなく描けてしまいました。それは営業以外の仕事にも関わってみたかったからです。

「どんな環境でも自分次第でチャンスはつかめるものだ」という意見もあります。しかし、競争相手が多いと時間がかかりそうですね。特に女性の場合は結婚や出産といったライフイベントがあるので、できれば早めにさまざまな経験を積んでおくのが理想です。

そこで、なるべく早くやりたい仕事への経験を積みたいなら、小さな組織です。もちろん、いつ倒れるかわからないというリスクはあるものの、大企業にいるよりもライバルが少ない。さらに、仕事の幅や裁量権が大きいのも小さな組織の特徴。そこでの実績は確実にあなたの糧になるはずです。経験者は語る（笑）。

さて、今回の主役ikumiさん。この後、R社より内定をもらい、心を決めたようですよ。

「あなたが選んだ道があなたが歩くべき道です」

ikumiさんへ、エールを送ります。