キャリア&転職研究室|キャリレボ|自分のキャリアを手にするために取った選択

TOP の中の転職研究室 の中のキャリレボ の中の自分のキャリアを手にするために取った選択

キャリレボ
自分のキャリアで迷ったり、煮詰まったり、悩んだりと壁にぶつかっているなと感じたときは、もしかしたら自分の判断基準や価値観を、一度、疑ってみることが必要かもしれない。壁を乗り越えるとは、それまでの自分を乗り越えるということだから。日々の小さな自分レボリューションで明日をつくろう

自分のキャリアを手にするために取った選択

「転職をする決断をしたことは、自分でも不思議」
と語る藤原静夫さん(仮名・34歳)は、この春、初めての転職をした。

転職を決めた時、同僚に言われた。「お前なら、社内にいてうまくやりながら偉くなっていくんじゃないかと思っていたよ」。

就職戦線が厳しくなり始めた95年、藤原さんは信託銀行に入社した。社会人になるにあたり「10年は会社を辞めない」と、自分の中で誓いを立てた。ずっとこの会社にいるのだろうと思っていたわけではなかったが、積極的に転職を考えたこともこれまでなかった。

「もうすぐ10年の節目になる。これを機に、一度キャリアの棚卸しをしておこう」と思ったのが昨年末。どんな仕事をしてきたのか、そしてこれからどんな仕事をしたいのかを整理するのが目的だった。しかし、出た結論は「この会社に残るリスクは、転職するリスクより高い」。自分でも驚いた。

出世よりも大切な、ベストを尽くし続ける人生

きっと会社が潰れることはないだろう。同期の中でも人事の評価は高い方だったと思う。この10年で身に付けてきた知識、スキル、経験に自信もある。社内人脈も豊富だ。しかし——。会社の5年後、10年後を予測してみたとき、大きな変革が、個人が築いてきたキャリアなどいとも簡単に吹き飛ばしてしまう気がした。3年後にはグループ内の都市銀行、信託銀行、証券会社が個人向け銀行として一つに合併されることになるだろう。そのときこの会社で、自分が望むようなキャリアを積んでいけるのだろうか。

グループ内の力関係では、主導権は都市銀行が握っている。一般的に考えれば、信託銀行より都市銀行の方が序列が上。合併後、自分たちの処遇に響くことになるかもしれない。しかし、「それが気になったわけではなかった」と藤原さんは否定する。

合併することで、社風が変わってしまうことが嫌だった。グループ内の都市銀行には、年功や学歴などで序列が決まるカルチャーがあるような気がした。仮に合併後も順調に昇進できたとしても、それが自分の出した成果以外のもので決まっていく序列だとしたら……自分の望むキャリアではない。

一円でも報酬をもらうからには、プロにならなくては。仕事で成果を出せるようにならなくては。自分がその時点でできる最良のアウトプットを出さなくてはと思いながら、これまで個人向け商品の開発などを手掛けてきた。「あなたは何ができるんですか?」と問われたとき、「これができます。こんな成果が上げられます」といえるようにベストを尽くす——その積み重ねが、自分にとってのキャリアなのだ。

内定が出てから、悩んだことがあった。転職をすることで、「この会社を、自分が支えるんだ」との思いや、10年かけて築いてきた人と人とのつながりを、ある意味、会社という中での家族的な関係を捨ててしまうことになるのではないかとの思いもあった。

転職することにも、もちろんリスクはある。それでも自分が築きたいキャリアのために、残るリスクではなく出るリスクを選んだ。 後悔は、ない。


次回は6月27日配信予定
「キャリレボ」バックナンバー一覧へ
取材・文/中村 陽子(編集部)
デザイン/東 聖子(編集部)

TOP の中の転職研究室 の中のキャリレボ の中の自分のキャリアを手にするために取った選択