キャリア&転職研究室|キャリレボ|「逃げ転職」はホントに失敗の原因なのか

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キャリレボ

第13回 「逃げ転職」はホントに失敗の原因なのか

自分のキャリアで迷ったり、煮詰まったり、悩んだりと壁にぶつかっているなと感じたときは、もしかしたら自分の判断基準や価値観を、一度、疑ってみることが必要かもしれない。壁を乗り越えるとは、それまでの自分を乗り越えるということだから。日々の小さな自分レボリューションで明日をつくろう

「逃げ転職」はホントに失敗の原因なのか

「この会社が嫌だ」「この上司の下では働きたくない」との不満から、「転職しようかな」との思いがふとわいてくることは少なくないだろう。でも、「この会社が嫌だ、と辞めることは逃げでしかない」といわれると、こんな気持ちで転職しても失敗するんじゃないかとも思う。不満の気持ちから転職を考えることは、本当に失敗につながるのだろうか。

「会社への不満がずっとたまっていた。30歳になったのを機に転職でもしてみようかなと軽い気持ちで考えた」という桜井圭輔さん(仮名・31歳、技術職)は、初めての転職の動機をこう振り返る。「会社に活気がない、偉い人たちは口は出すけどお金は出さない、転職してきた上司は命令すれば部下は動くと思っている。現場と上司の間に挟まって、調整役に明け暮れているのが嫌になった」と、転職活動をした。するとすぐに新しい会社が見つかったのだが、転職したその会社は4カ月で辞めてしまった。

「入ってはみたものの、ちょっと違うかなあと。新しく入社した人間に対しての研修・教育もないし、課長が役員との間のクッションになってくれないし、ワンマン経営の社風だし。ここで我慢して時間を費やしても意味がないんじゃないかと、当時は思ったんです」。そして、次の会社を決めないまま、あっさり退職。

この桜井さんのケースのように、「転職したものの入社3、4カ月でまた転職した」という話を意外と耳にする。その多くは「会社と合わなかったから」とその理由を語るのだが、なぜ「合わない」となってしまうのだろう。逃げ転職は、ホントに失敗の原因なのか。

「次の仕事で得たいもの」をはっきりさせていないことが、失敗転職の原因

「そもそも今の仕事や会社に不満がなければ、転職したいなどと思わないものです。失敗を招く原因は、不満から逃れることにあるのではなく、とにかく早く今の環境を抜け出したいあまりに仕事内容をあいまいにしたまま、次の転職先を決めてしまうことにある。つまり、『次の仕事の決め方』に問題があるだけの話です」と12回の転職経験者である楽天証券の山崎元氏は指摘する。

「今回の転職で、自分は何を手に入れたいのか」ではなく、転職すること自体が目的になっていることが一番の問題なのだ。実際、前出の桜井さんも「とにかく嫌だから、転職したい」が目的になっていたという。

ではどうすればいいのか。
今回の転職で、自分の求めていることは何かを具体的にすることだ。「〜〜の経験を積みたい」「このテーマについてかかわりたい」など仕事内容、「もっと厳しい環境で、切磋琢磨したい」「従業員が自由に動いているような環境がいい」など職場環境、「年収をいくら上げたい」などお金など、「これを手に入れたい」をいくつか挙げてみる。そして、絶対に譲れないこと、譲ってもいいことに分け、自分の中の優先順位をはっきりさせる。そのうえで、最優先したいことが満たせるかどうかの視点で会社選びをするのだ。

「これを手に入れたい」を満たせる職場であれば、他の条件が満たされなくても、折り合いは付けられる。また、「ここで頑張ってみよう」と思えれば、会社に馴染む努力も自然にするはずだ。

桜井さんは、4カ月で退職した後、2度目の転職活動をした。「転職活動中に、いろんなことを考え、『自由な環境で、責任もって仕事を任せてもらえること』を求めていたんだと思うようになりました」。

今回決めた会社は、みんなが楽しそうに働いている自由な雰囲気の職場だ。面接で「入社したら、こんな仕事をしてもらう予定です」と詳しく話してくれたことも大きな決め手になった。「入社してから、考えていきましょう」と言われた会社の内定を、きっぱり断ったのがよかったのかもしれない。

年収は下がったが、「お金にこだわるよりは、働く環境を重視したい」とさほど気にならない。「4カ月で会社を辞めた経験から得た教訓は、100%の満足を得ることはどんな職場でも難しいということ。妥協できるラインを見つけて折り合いをつけ、あとは頑張ることが大切なんだと思っています」と語る。

転職の目的は、内定を取ることではない。会社を移ることでもない。「自分が得たいことを手に入れるための手段なのだ」ということさえ忘れなければ、納得のいく転職はできる。

取材・文/中村 陽子(編集部)
デザイン/東 聖子(編集部)

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