キャリア&転職研究室|キャリレボ|自分の気持ちが見えなくなってしまったとき

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キャリレボ
自分のキャリアで迷ったり、煮詰まったり、悩んだりと壁にぶつかっているなと感じたときは、もしかしたら自分の判断基準や価値観を、一度、疑ってみることが必要かもしれない。壁を乗り越えるとは、それまでの自分を乗り越えるということだから。日々の小さな自分レボリューションで明日をつくろう

自分の気持ちが見えなくなってしまったとき
 「転職やキャリアを考えるときには、自分の気持ちや率直な思いを大切にした方がいい」といわれているけれど、「自分の率直な思い」が見えなくなってしまうことはよく起こる。

 「今よりもっといい場所があるはずだ」と転職活動を決意した宮本昇さん(仮名・27歳)は、意気揚々と転職活動を始めたが、思わぬ迷路に迷い込んでしまった。

 新聞やネットで求人情報を眺めていると、「これもやってみたい」「あれもやってみたい」との思いがどんどん膨らんできた。「27歳だし、まだいろんなことにチャレンジできるはずだ」との気持ちも手伝って、知名度が高く、勝ち組といわれる企業を中心に業界や職種を問わず応募していた。安定していて、将来性のある企業に行きたかったのだ。面接に行き、内定が取れたこともある。友人は「よかったじゃないか。業界では評判の会社だよ」という。でも「何かが違う」と内定辞退を繰り返していた。

 なんとなく転職活動を始めた堀杉恵子さん(仮名・26歳)も、同じような経験をした。【人材バンクネット】で自分のキャリアを公開したら、スカウトがいっぱい届いた。「比較的幅広くいろんな仕事を手掛けていた私には、いろんな職種のスカウトメールが届きました。あれもできるし、これもできるんだと思えたのは嬉しかったのですが、そのうちだんだん辛くなってきてしまって……」。選択肢の多さに混乱してしまったのだ。

迷いながらも動き始めれば、きっと何かが見えてくる

 求人情報を見ていると、いろんな仕事が世の中にはあったのだということに改めて気付かされるものだ。こんな可能性も、あんな可能性もあるのかもしれないと思えることは楽しい反面、自分が見えなくなってしまうことも起こるようだ。

 恵子さんは、何がやりたかったのかをもう一度見つめ直してみることにした。自分がやってきた仕事を紙に書き出し、何をしているときに楽しさを感じたのかを一つひとつ洗い出していった。すると「あ、私はここにもっと力を入れたいと思っていたんだ」ということが見えてきた。

 「何のために転職したいのかがわからないまま、転職活動を始めてしまったんですね。自分自身を振り返って、何を大切にしたかったのかを知ることは本当に大事だなと痛感しました」

 昇さんはいろんな企業の面接に行くことで、迷路から脱出した。「有名企業=将来的に安定しているというイメージしか持たないまま、転職したい気持ちだけが先走っていたんだと思います。だから、あの業界の方が将来性はあるんじゃないかとか、この職種の方が先々いいんじゃないかとかなり脈略なく応募してしまった。効率の悪い転職活動だったかもしれないけれど、僕の場合は受けてみて落とされたり、面接に行って話をしたり、内定をもらってから悩んだりと自分の体でぶつかってみることでしか、選べなかったんだと思います。もしかしたら隣の芝生が青く見えて転職したかっただけかもしれないけれど、体当たりの転職活動に、悔いはありません」

 「何のために転職したいのか」がわからないままの転職活動にも、意味はある。「他にもっといい何かがあるのではないか」との思いが強まって、目の前のことに力を注ぐことができずにいるよりは、「もっといい何か」が本当にあるのかどうかを確かめてみる方が前に進めることがある。動いてみて、「もっといい何か」が見つかったならラッキーだし、たとえ見つからなかったとしても「なんだ、幻想だったんだ」とわかって、今、目の前にあることを大事にしようと思えれば、それは大きな一歩前進なのだ。


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文/中村 陽子(編集部)
デザイン/東 聖子(編集部)

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