キャリア&転職研究室|あの本を書いたあの人が教えるキャリアの極意|第23回 好きなことなんて簡単には…

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あの本を書いたあの人が教えるキャリアの極意

自分らしく、働くために。仕事をおもしろくする方法
講師:佐藤友美子氏

好きなことなんて簡単には見つからない それより目の前の仕事を好きになろうとしてますか?

今の世代の若い人たちはとかく「好きを仕事に」という呪縛にとらわれているけど、好きなことなんてそうそう簡単に見つかるもんじゃない。逆に言えば、別に好きなことをしていなくったって、仕事を楽しめている人は沢山いるのだ。

佐藤友美子/サントリー次世代研究所部長 1975年立命館大学文学部を卒業、同年サントリー株式会社に入社。1989年サントリー不易流行研究所の設立メンバー、1998年3月より部長。サントリー不易流行研究所は2005年3月次世代研究所に名称変更。次世代が希望を持って幸せに生きていくための調査研究を行っている。 現在、国土交通省交通政策審議会委員、文部科学省中央教育審議会委員、国際日本文化研究センター客員教授など、各方面で活躍中だが、現在特に力を入れているのが若手起業支援の草分けNPO法人ETIC.とのコラボプロジェクト「Work-Life Innovators'」。「働くを取り戻せ」をスローガンに、若手起業家、社会人、学生が集まり、自分らしく豊かに働くために、新しい働き方を創っていくことに挑むプロジェクト。
生徒:市川健太/32歳。中堅会社の総務職。大学卒業後、第一志望だった会社に採用されず今の会社に就職。実家から通える範囲の会社に就職したため、一人暮らしの経験もない。今の仕事はスタートから妥協だった、という意識が強く、なんとなく続けてはいるけれど全くおもしろみを感じられない。このまま続けていいのかどうか、という漠然とした迷いはあるが、年齢的にヤバいのではないかと焦りつつも具体的にどう動いて良いかわからなくて悶々とした日々を送っている。

好きなことは探して見つかるもの
ではなく偶然出会うもの

—— 僕、今年で32歳になるんですが、もうそろそろヤバいんじゃないかと思って焦ってるんですよね。

え? 何をそんなに焦ってるんですか?

—— そもそも今の会社に入社したのは、第一志望の企業に最終面接で落されちゃったから仕方なく、なんですよ。妥協して入って惰性で続けているような状況がずっと続いている感じなんですね。毎日がただ過ぎて行くという感じで……。かといって他にピンとくるものもないし……。とにかく早く自分が打ち込める好きなことを見つけないと将来がない、みたいな感覚に襲われてしまうんです。

今の仕事が楽しくないということと、「自分には好きなことがない」っていうことがプレッシャーになっているんですね。どうしてそんなに「好きなこと」にこだわるんでしょう?

—— だって、好きなことを仕事にしてる人って輝いてみえるじゃないですか。僕の場合、好きなことじゃないから今の仕事も楽しくないような気がして……。

なるほど。確かに私が取材してきた若手ビジネスパーソンも市川さんと同じようなことをいう人はたくさんいます。そして総じて同じように元気がない(笑)。でもね、市川さん含め、皆さんにまず最初にいいたいのが、好きなことなんてそんなに簡単に見つかるものじゃないということ。私自身もそうですが、40代、50代になって初めてこれだと思えるものに出会えたという人も多いんですよ。案外、「好きなこと」は探したり見つけたりするもんじゃなくて、変なところで偶然出会うような、そういうものなんだと思います。

また、好きなことなんて、無理して見つける必要はないんじゃないかとも思いますね。

—— ええ? どういうことなんですか?

そもそも「好きなこと」を見つけてそれを仕事にしなきゃ、っていうのは、社会的な呪縛となって若い世代の人を縛っていると感じます。
・ 今好きな仕事をできていない
・ そもそも好きなことがなんだかわからない
・ 今の仕事は自分には合ってなくて、もっと他に「好きなこと」があるんじゃないか
これらは一種のトラウマみたいになって、多くの若い人たちを悩ませているっていうことが、これまでの調査でわかったんですよ。

「好きを仕事に」の呪縛に
捕らわれてはいけない

その元凶の一つは教育です。今、日本の学校では、自分に何が向いているのか調べましょう、好きなところにいってみましょう、ってことを教えています。これだと子供たちは、好きなことを仕事にしなきゃって刷り込まれてしまう。

でもね、本来、仕事って生活するために、生きていくためにするという側面がものすごく強いということを忘れてはいけないと思うんです。

つまり、日本の今の教育体制だと、現実に「働く」っていうところの前に高いハードルがあるようなものです。たしかに好きなことだったらモチベーションが上がるでしょ、だから自分の好きなことを見つけましょ! というのはあまりにも短絡的過ぎるとは思いませんか?

—— 言われてみれば確かにそうかも……。

「見つけましょう」ったって、見つからない人は見つからない。じゃあどうするか。目の前の仕事を好きになるしかないんですよ。実際に、元々好きな仕事じゃなくたって、本人がその気になればおもしろいことなんていくらでも見つかるんですよ。今、イキイキと仕事している人の中にはそういう人もたくさんいます。最初はあまり興味がなかったのに、やってくうちに好きになってった、みたいなね。

—— やってくうちに好きになる……ですか。

そう。それは私自身もそうなんです。私は社会に出て20年以上経ちますが、仕事の内容は何度も変わってきてますし、今の仕事も、好きだからやっているというより、暮らしの中で感じていた問題意識がたまたま仕事になったという感じです。でも仕事は楽しくて、毎日充実してますよ。

—— え? 面白くない仕事ってなかったんですか? 元々好きと思えない仕事をしている間、つらかったり悩んだりしたことはなかったんですか?

全く悩んだことがなかった、っていうとウソになりますが、とにかく目の前の仕事に全力で取り組んだのが、今考えればそれがよかったと思います。

—— 好きでもないのに?

目の前の仕事に
本気で取り組んでいますか?

ええ。そもそも仕事をしなければ生活していけないでしょう? だったらとりあえず仕事を生活するための手段として自分の中で位置づけるんです。で、どうせやらなきゃならないんだったら、本気で取り組んだ方がおもしろくなるんですよ。いろんなことが見えてきますからね。好きなことが見つからない間はそれでいいと思うんです。

—— 本気で取り組む……。

そう。本気で。市川さんは、これまで本気で仕事に取り組んできましたか?

—— ……。いえ、とてもそうとはいえません。どうせ好きな仕事じゃないからって惰性でこなしてきたような気がします。しかも今実家暮らしでとりあえず衣食住には困りませんから。

うーん、それもこれまで惰性で過ごしてきたひとつの大きな原因でしょうね。今まで多くのビジネスパーソンに取材してきましたが、やっぱり実家で暮らしてる人はどこか考え方が甘いところがある人が多いですね。仕事に対しても、生活に対しても。

—— (ムッとして)そうですかね。僕は僕なりに真剣に考えてたつもりなんですが。

だけど、思うばかりで具体的な行動は起こさず、惰性でこれまで来たことは市川さんご自身がよく分かっていることですよね?

—— ま、まあそれはそうなんですが……。でも実家の方が経済的なメリットが大きいんでつい……。

経済的なメリットよりも、自立という意味ではデメリットの方が大きいかもしれませんよ。実家にお住まいだったら、生活のために働かなきゃっていう危機感がない分、仕事に対する真剣味が薄れてくる可能性は高いんですよ。だから私個人の意見としては、男女ともに若いうちは実家の近くでもいいから独り暮らしをした方がいいと思います。ひとりの人間として経済的にも精神的にも自立するためにね。

—— ……確かにこれまで甘えすぎていたのかもしれません。親にも自分自身にも。

仕事に関しても、好きじゃないからといって、惰性でこなしていたのでは、仕事を好きになることもできませんし、楽しくなるわけがありません。第一スキルが上がらないので、もし転職しようと思っても難しいですよ。だから、好きなことがなければ、今、やらなければならない目の前の仕事を好きになればいいんですよ。

—— なるほど。今、ちょっと新しい視点ができたような気がします。でも具体的にはどうすればいいのでしょうか?

次回は私自身の経験や取材経験からそれをお話しましょう。

佐藤友美子氏から学んだ、胸に刻んでおきたい3つのこと

1.「好きを仕事に」の呪縛に捕らわれるな!

2.仕事とはまず生活していくための手段だと心得よ

3.好きなことが見つからなかったら、目の前の仕事に全力で取り組んでみよう

成長とは今の自分を超えること おもしろい仕事は自分の手でつかめ!

自分らしさはいったん捨てる 変化を恐れず一歩踏み出せ!

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