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TOP の中の転職研究室 の中のあの本を書いたあの人が教えるキャリアの極意 の中の第19回「自分のために」の志が、プロフェッショナル人材になる鍵[講師:山本 真司氏]

あの本を書いたあの人が教えるキャリアの極意

急がない、焦らない。10年後に笑おう
講師:山本真司氏

「自分のために」から「人のために」へ その志が、プロフェッショナル人材になる鍵

この厳しい社会の中で生き残るために、自分を成長させなくては……。そんな危機感からの頑張りだけでは、必ず限界がやってくる。自分のためでなく、人のためにベストを尽くす。その発想転換が、あなたを本物のプロフェッショナルに導くのだ

山本真司/1958年、東京生まれ。戦略コンサルタント。慶応義塾大学経済学部卒業後、シカゴ大学経営大学院にて修士号(MBA with honors)取得。東京銀行、ボストン・コンサルティング・グループを経て、A.T.カーニー株式会社ヴァイス・プレジデント、戦略・組織グループアジア代表を歴任。2005年4月、有限会社山本真司事務所を設立。本業に加え、慶應義塾大学大学院の非常勤講師や講演、執筆など、何足ものワラジで精力的に活動中
生徒:佐藤タイチ/IT企業の営業職、30歳。最近、自分に停滞感を感じている。「このままでは負け組になるかも」不安から逃れられない。ビジネス本をあれこれ読んで勉強しているが、ここまで頑張れば大丈夫との確信がもてない。

「人のため」の気持ちでベストを尽くせば
結果として、成功・お金・名誉が付いてくる

―― 僕が最近、「以前のように突っ走れなくなった気がするなあ」と感じるのは、自分の欲を満たす働き方から、他人のために最大限の努力をする働き方へ、方向チェンジした方がいいというシグナルなんでしょうか?

そうだと思いますよ。私の場合もそうでした。30歳で外資系コンサルティング会社に転職したばかりの頃は、「超一流のコンサルタントとして成功し、十分な金銭的報酬を得て、前の職場の同僚などに圧倒的な差をつけた成功者になりたい」「将来に保証なんてない。それに備えるためには、今のうちに人よりも多く稼がなくては。それにはビジネススキルを学ばなくては」と自分の欲をエンジンに、突っ走っていたんです。

努力はしているのに目指す姿に辿り着けない壁に何度もぶつかるうち、30代後半から次第に「結果や評価はどうでもいいから、お客様のために全力で働こう」と思えるようになった。すると、どんどんうまくいくようになったんです。

―― でも、「人のため」へハンドルを切って働くのって、自分の置かれている状況や収入に満足できていないと、なかなか難しい気がします。

安定や満足できる状況が欲しいのなら、むしろ「人のため」という方向へいった方がいいんです。ビジネスは、他者との関わりで成り立つものだから。それは、前回の講義でも話しましたよね。お金を払ってくれるのはお客様(=他者)。自分よりお客様を大事な位置に置かないと。「お客様は手段、目的は自分の欲を満たすため」となると、それは相手にも伝わると思いますよ。

「目的はあくまでお客様に貢献すること。その副産物としてお金や地位や名誉が付いてくる」と発想転換しないと、結果として得るものも得られないと思う。

せこい腹のうち、相手から見え見えでは
人からの信用は得られない

―― 僕は今、会社からちゃんと評価されていない。同世代の人たちと比べて、恵まれた環境にいない気もする。もちろんお客様のために頑張りたい気持ちはあるけれど、心からはそんな気分になれない……。

それはまさしく、前回説明した「模範優等生型」ですね。がんじがらめで動けない。お客様も大事、自分も大事、どちらもそこそこに。

そうじゃなくて、どちらか一方を100%大事にするんです。お客さんの方を100%大事にすると決めたら、「自分のことはどうでもいいや」というところまで思い切って割り切るんです。

―― むむむ……(沈黙)。

じゃあ逆に、相手の立場で考えてみましょう。タイチさんに何かしてくれるビジネスパートナーがいたとする。その人に、「自分の出世のために、このプロジェクトに協力しよう」という腹の内が見えたら、どう?

―― 本当に大事なプロジェクトだったら、そういうビジネスパートナーとは付き合いたくないな……。

でしょう? イザという時に、グッと力を入れて協力してくれない人はイヤですよね。逆に「たとえ最終的に持ち出しになっても、徹夜になっても、プロジェクト成功のためには全力で協力します」くらいの心持ちがある人だと、「この人なら!」と信頼するものだと思うんです。

あなたがお客様のために最大限の努力をすれば、その人は、あなたにプラスになるよう、後で社長や上司に働きかけてくれるかもしれない。他のお客さんを紹介してくれることだってあるわけです。

―― そうですね……。その都度その都度、直接の評価や利益を求めるのは、せっかち過ぎるのかも。だけど、自分の気持ちをどう持っていったらいいのかな。

「究極の自己中心主義」でいきましょう! 「自分にいい結果になるかどうかわからないけど、それは運だから、まっいいや」と思うのは、人から見た自分、人と比べた自分を忘れること。つまり、「究極の自己中心主義」。自分の価値基準を作り、それに従って素直に生きるんです。

―― ちょっと、難しそう……。「今の自分の役割は周りと比べて損だ」とか、悪魔のささやきが聞こえて心が揺れ動きそうです。

普段は揺れ動いていてもいいと思いますよ。「ここぞ」という時に、自分で作り上げた価値基準に従えるかどうかが大切なんです。自分の評価が不当だと思うことは、ビジネスパーソンなら誰でもしょっちゅうあるでしょう。頭にもくるけれど、最後には「やるだけやったんだから、評価なんかどうでもいいや!」と達観できるよう、心のトレーニングをすることです。

私にとっては「ここまでお客様のために頑張ったんだ。報われなかったら悪い時代に生まれたと思って諦めよう。いずれ、いいこともあるさ」と、結果を達観できるようになったことはとても大きい変化でした。すると、長期的には結果がついてきたんです。

世の中って、人のつながりって不思議
ベストを尽くせば、巡り巡って返ってくる

私は最近、若手ビジネスパーソン向けの講演会に呼んでもらうんですが、時には予算のない講演会もあって、身銭を切って駆けつけることもある。でも、絶対に手は抜きません。聴衆の最大満足を狙って、準備も夜遅くまでとことんやる。報酬を考えて、それに見合った仕事をするなんてことは、しません。お客様のためにいい仕事をするという一点は、どんなときも貫くんです。

そんなことをしているうちに、どんどんいい仲間が増えてきた。精神的な満足も大きい。楽しいから、エネルギーも出る。

しかも中長期的に、自分に返ってくるんです。すぐその場で返ってくるのではなく、私の行動を見ていた人が応援してくれた結果、「また本を書きませんか?」と声が掛かったり、さらにその本が売れたり、複雑な経路を辿って返ってくる。好循環が生まれると、自分で稼いでいるという感覚じゃなくなるから不思議。「世の中は不思議だな。お金のことはあまり心配しなくても済むな」「みなさんのおかげで、ありがたいなぁ」という境地になるんですよ。

本業のビジネスでも同じですよ。最初から儲けなど考えずにお客様のために最大限努力すると、あとでケタ違いのビジネスの話が舞い込んできたりしますから。

―― なんだか、山本さんの話を聞いていたら、「損して得とれ」とか「金は天下の回りもの」って諺を思い出しちゃいました(笑)。最大の努力をすると、その結果はすぐにではなく、中長期的に複雑な経路をたどって自分に戻ってくるんですね。僕も今日から、結果に関して達観できるように心のトレーニングを始めます。

山本真司氏から学んだ、胸に刻んでおきたい3つのこと

1.お客様は手段、目的は自分の成功……では、人からの信用は得られない

2.人と比べて自分を見ない。究極の自己中心主義が自分を一回り大きくする

3.尽くしたベストは、巡り巡ってやがて自分に戻ってくる

「負け組になりたくない」と焦りすぎると 早い、安い、うまくない…人生に

今のあなたはどのタイプ?30歳からの本当の成長戦略とは

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