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TOP の中の転職研究室 の中のあの本を書いたあの人が教えるキャリアの極意 の中の第18回 今のあなたはどのタイプ?30歳からの本当の成長戦略とは[講師:山本 真司氏]

あの本を書いたあの人が教えるキャリアの極意

急がない、焦らない。10年後に笑おう
講師:山本真司氏

今のあなたはどのタイプ?30歳からの本当の成長戦略とは

「とにかくスキルを身に付けたい」と突っ走るだけでは、壁にぶつかる。といって、「ほどほどでいいや」じゃ、成長は止まるだけ。いつか大きな仕事を成し遂げたいと願う若手ビジネス・パーソンがとるべき本当の成長戦略とは

山本真司/1958年、東京生まれ。戦略コンサルタント。慶応義塾大学経済学部卒業後、シカゴ大学経営大学院にて修士号(MBA with honors)取得。東京銀行、ボストン・コンサルティング・グループを経て、A.T.カーニー株式会社ヴァイス・プレジデント、戦略・組織グループアジア代表を歴任。2005年4月、有限会社山本真司事務所を設立。本業に加え、慶應義塾大学大学院の非常勤講師や講演、執筆など、何足ものワラジで精力的に活動中
生徒:佐藤タイチ/IT企業の営業職、30歳。最近、自分に停滞感を感じている。「このままでは負け組になるかも」不安から逃れられない。ビジネス本をあれこれ読んで勉強しているが、ここまで頑張れば大丈夫との確信がもてない。

伸び悩み、行き詰まりの原因は
成長戦略にあった

―― 20代30代のうちは、自分というマシンの性能を高めることが重要だとよくわかりました。山本さんのいう「極端に働け」「人並み外れた努力をしろ」の意味も、わかっているつもりです、頭では。

でも気持ちが……最近、付いてこないんです。頑張らなくちゃ、今は突っ走る時期だと思いつつも、反面、醒めた自分がいる。「そこまで頑張る必要あるの? ホントはみんなそこそこにやってるだけ。そっちに合わせた方がいいんじゃないか」という思いが拭えなくて。

タイチさんは「模範優等生型」なんですね。

―― 何ですか? それ。

成長したいと思うのは、「これがしたい」という動機と「こんなふうになりたい」との目指す姿があるからです。動機と目指す姿をもとに成長戦略をタイプ化すると、タイチさんの場合は「模範優等生型」になるんですよ。成長戦略のタイプそれぞれに、行き詰まりや伸び悩みの原因があるんです。

まずは基本となる2つのタイプから見ていきましょうか。

【成長戦略タイプ】

(1)「欲の亡者型」 このタイプは、「人よりも成功したい、いい年収を手に入れたい、成功した人として認められたい」とか「負け組になりたくない、一歩でも人より抜きん出たい、できるだけ早く老後の心配をしないだけの稼ぎがほしい」など「我欲の追求」が動機となって突き動かされている。他人と比較して「勝ち組になりたい」と願うタイプですね。
ビジネススキルなどの勉強や情報のインプットに熱心で、短期間でお金を稼ぎたいと、いつも人との競争に明け暮れる。成果・結果を出すためには徹底的に努力する反面、「失敗はできない」とその成果・結果に極めてセンシティブです。

(2)「現実逃避ぬるま湯型」 このタイプは、「なるようになるさ」と戦うことを好まず、他人と違う自分をつくることを目指します。サラリーマンなら出世など諦め、個人の楽しみを他に探す。
お金、出世、名誉といった欲がない。無欲なんです。これは、目標に向けて自分を突き動かす動機(エンジン)がないという意味でもあります。走れないから、成長する機会をつかめない。これをずっと続けていると、浮世離れしてしまいます。フリーターやニートもこのタイプに入ります。

この2つは両極のタイプですが、どちらもどこかで行き詰まりが出てくる戦略を取っているんです。

【行き詰まりの原因】

(1)「欲の亡者型」 「自分が自分が」とエゴが前面に出るので、人の共感を得られなくなったり、創造性もなくなりがち。欲の向い先が自分だから視野が狭くなりがちで、お客様の視点でビジネスを生み出す感性が鈍くなる。自分の主張を押し出す分、他人との軋轢も多く、嫉妬やねたみの的になることも。差別化の視点がないのも行き詰まりの大きな原因です。

(2)「現実逃避ぬるま湯型」 努力して学ばないので力が付かない。これは、非常にまずいです。人との間で軋轢は起きないけれど、成長しないというマイナス面は致命的ですね。時として、欲の亡者型戦略に行き詰まったときの逃避先として、この現実逃避ぬるま湯型にはまり込んでしまうことがあります。

この2つのタイプの折衷案が、タイチさんの「模範優等生型」なんですね。

そこそこの結果を意識した
そこそこの努力で、終わっていませんか?

(3)「模範優等生型」 このタイプは、仕事の能力も高くて、わりといい人。なのに、どこかピリッとしない。そこそこの結果を意識して、そこそこの努力をする。仕事で成功するのも大事だけど、人とも仲良くしなければ。軋轢は起こしたくない、恨まれたくない。でも自分はかわいい、評価もほしい……。
中途半端なんですね。フリーターになることはないけれど、突っ走って仕事することもない。いわば「努力はしたいけど、不完全燃焼」の罠にはまっていて、結局、一歩を踏み出すことができないんです。

―― ……(沈黙)。思い当たる節があります。

バランスをとろうとするから、「模範優等生型」になる。そうではなくて、両極にあるものを併せ呑む。これができるタイプが「着眼両極・着手単極型」なんです。

車の運転にたとえてみると、よりイメージしやすくなると思いますよ。「欲」は、エンジンのようなもの。欲が強いことはある種の才能で、「欲の亡者型」には、高性能のエンジンがついている。ただし、車の向かう先は「自分」。ハンドルは自分の方に切っているんですよね。

タイチさんのような「模範優等生型」は、エンジンの性能もハンドルを切る方向も、中途半端。今日は自分にハンドルを切ったかと思うと、明日は他人へ微妙に向ける。時には「欲張りすぎかな……」と、エンジンの回転数を下げたり。この中途半端さが、行き詰まりの原因です。

―― じゃあ、エンジンとハンドルは、どうコントロールすればいいんですか?

「欲の亡者型」のように高性能のエンジンを持ち、ハンドルは「自分のために」ではなく「人のために」へと切ればいい。ビジネスとは、他者との関わりで成り立つもの。向かう方向は、人(他者)であるべきなんです。

「着眼両極・着手単極型」は、人の成功、利益、幸せのためには極限まで努力します。でも、結果や自分の評価には無頓着、無欲です。人を利するのに懸命な人間だから、軋轢やねたみが生じるわけはありません。

―― 「着眼両極・着手単極型」だけマイナス面がないということか。

走るときは、振り切るとこまで突っ走れ

ここで大切なのは、「走るときは思いきり、振り切るところまで一方向に走る」こと。思いきり走ってある域を超えることで、大きな成果や使える成果を手にすることができるんです。ここで、両方同時に手を出そう(着手両極)とか、バランスをとろうとすると、ある域を超えられない。模範優等生型は、走りが不完全燃焼ゆえ大きな成果を手にすることができず、伸び悩む。

「バランスなんか崩しちゃいなさい!」が私の持論。足して二で割る妥協からは、小さな果実しか得られないから。私は戦略コンサルタントとして15年間仕事をしてきた過程で、この両極を行き来した。そして「人に貢献するためには精一杯の努力をしよう」という欲と、「やるだけやり尽くしたんだから、結果はどうでもいいじゃないか」という無欲の両方を併せ呑む境地に立てた。

きっと最初から、併せ呑む境地に達することは難しいでしょう。まずは欲の亡者型として突っ走り、限界にぶつかって現実逃避ぬるま湯型になり、「でも、無欲だと働く気がなくなっちゃうからバランスかな」と模範優等生型になり……と、一人の仕事人生の中で試行錯誤のプロセスを辿るんじゃないのかな。

それでも「いつかは着眼両極・着手単極型の併せ呑む域に達するんだ」とゴールが見えているかいないかは、個人の成長にとって大きな意味を持つんじゃないかと思うんですよ。

山本真司氏から学んだ、胸に刻んでおきたい3つのこと

1.行き詰まりの原因がわかれば、解決策が見えてくる

2.欲のエンジンで走り、「人のため」へハンドルをきれ

3.極限まで努力するけど自分の評価には無頓着が、成長の秘訣

「負け組になりたくない」と焦りすぎると 早い、安い、うまくない…人生に

「自分のために」の志が、プロフェッショナル人材になる鍵

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