キャリア&転職研究室|あの本を書いたあの人が教えるキャリアの極意|第17回「負け組になりたくない」と…

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あの本を書いたあの人が教えるキャリアの極意

急がない、焦らない。10年後に笑おう
講師:山本真司氏

「負け組になりたくない」と焦りすぎると 早い、安い、うまくない……人生に

20代~30代前半で起業したり、執行役員や部長という肩書きのもとに活躍する人の話を聞くと、「すごい人たちに比べて自分は……」と焦る気持ちがわいてくる。しかし、「早く自分も成功しなくちゃ」は罠だった。20代、30代の本当の成長戦略とは

山本真司/1958年、東京生まれ。戦略コンサルタント。慶応義塾大学経済学部卒業後、シカゴ大学経営大学院にて修士号(MBA with honors)取得。東京銀行、ボストン・コンサルティング・グループを経て、A.T.カーニー株式会社ヴァイス・プレジデント、戦略・組織グループアジア代表を歴任。2005年4月、有限会社山本真司事務所を設立。本業に加え、慶應義塾大学大学院の非常勤講師や講演、執筆など、何足ものワラジで精力的に活動中
生徒:佐藤タイチ/IT企業の営業職、30歳。最近、自分に停滞感を感じている。「このままでは負け組になるかも」不安から逃れられない。ビジネス本をあれこれ読んで勉強しているが、ここまで頑張れば大丈夫との確信がもてない。

生き急ぎでは、小さな成功しかつかめない
安い手で早あがりする人生で、ホントにいいの?

―― 先日、30歳になりました。仕事で自分なりに成果を出せるようになったし、会社の中でもそこそこ期待はされています。でも……自分なりに頑張っているだけでは、どんどん遅れを取ってしまう気がするんです。僕と同世代で、自分で会社を興している人、執行役員や部長として大きな権限を持って活躍している人がたくさんいて、差をつけられているのを感じます。同世代のすごい人たちがたくさんいる中で、この先自分が生き残れるかどうか……正直、ぼんやりとした不安が拭えないんです。

タイチさんと同じ不安を抱えている人が、ものすごくたくさんいるのが今の世の中なんだと思いますよ。まず、時代背景を考えてみましょう。97年以降、中長期的な視点に立った日本型経営に代わって、グローバル・スタンダードという言葉がもてはやされるようになった。でもこれ、お金だけをモノサシに勝ち負けを測るアメリカ型経営標準だったんです。

それまでの日本企業は、すぐお金に結びつかなくても「お客様にこれだけ貢献している」とか「会社の中で、これだけの役割を果たしている」など、多様な価値観で自分の仕事の意義を確かめられた。でも、グローバル・スタンダードが日本を席巻して以降、個人のキャリアも「お金をいくら稼げるか」のモノサシで勝ち負けを測るような風潮が芽生えた。タイチさんは、そんな時代になってから社会に出たわけですね。

―― 仕事をするのは、お金のためだけじゃないです。でも、終身雇用は崩壊し、いつまで働けるか保証がない。年金も貰えないかもしれない。父の世代とは時代が違う。だから、できれば早く稼いで楽になりたいと思っているだけなんです。

どうしてそんなに生き急ぐのかな。その考えでは、安い手で早あがりする人生を送ることになるかもしれませんよ。

「負け組になりたくない」という危機感をバネに、自分を伸ばしていこうというポジティブさは評価できます。問題は、そのあとの行動です。30代は、自分の器をどこまで大きくすることができるかが重要なんです。「負け組になりたくない」との思いが強すぎると、「お金を稼げる人になるためには、どうすればいいのか」と短絡的な思考・行動に走りがちになる。それは、すごくマズイ。そこにばかり気を取られていると、小さな成功しかつかめなくなってしまうんです。

「ブームに乗り遅れてはならない」が
負け組一直線のもとだった

―― でも、今の時代、若い人でも成功を手にするチャンスが転がっているといわれている。だったら、それに乗らなくちゃいけないんじゃないかと。

「これ、よさそうだ」とあたりをつけて最初に動いた人間には、大きなビジネスチャンスがあるものです。しかし、「あの人がうまくいっているあの土俵がよさそうだ」と後から追うフォロワーは、実は、もうチャンスがなくなった場所へと出て行っているわけなんです。だから、100人中99人が失敗します。

企業の場合を例にとると、伸びる企業は既存サービスの抜け漏れを探し、よそがやらないことを徹底的にやって差別化をする。そうしない限り、中長期的に利益を出し続けられない。個人の成長戦略も同じです。

でも、君たちの世代には「人と違う戦略を取って自分を差別化する」という意識があまりなく、みんなが同じ方向に走りがち。「負け組になりたくない」→「ブームに遅れてはならない」→「流行のビジネススキルをマスターしなきゃ」「MBAを取らなくちゃ」とね。

しかし、みんなが同じ方向に走れば、同じスキルを持つ人はごまんと出てくる。すると永遠に自分を差別化することができないだけでなく、「同じサービスなら、より安く」と価格競争に巻き込まれることになる。

みんなと同じスキル・知識を持っているだけでは、価値は上がらないんです。

20代30代は、極端に働き、人並み外れた努力をして
自分の器を大きくすることに全力投球を

もちろん、ビジネススキルの基本を知っておくことは必要です。でも、ザッと目を通すくらいでいい。私の本『30歳からの成長戦略』に「三十分MBA講義」と題してエッセンスを書きました。知らなきゃいけないけど、人との差別化にはならないわけだから超効率で学ぶこと。30歳なら、知識よりも学習能力を身に付けることが大事ですよ。

もっと中長期的に価値を出すことを考えましょう。それには、中身が伴わないとダメ。みなさんが今、「やれマーケティングだ、ファイナンスだ」とか「この資格がいい、このスキルがいい」と必死に勉強しているビジネススキルは、パソコンにたとえるなら「アプリケーション」でしかない。数年後には新しいものが出て、古くなる種類のものなんです。

本当の意味で大きな仕事ができるのは、40代に入ってからです。「社会人になって20年後に、大きな花を咲かせるんだ」と長い視点でキャリアを考えたとき、若いうちにすべきことは、「マシンの性能」を磨き、鍛えて、自分の器を大きくすること。「自分の頭で考える力」や「壁にぶつかったときに克服する力」、「人の気持ちを理解する力」を、経験の中で磨き、学び取っていくことです。

これは、5年経ち、10年経ってどんな世の中になっても使える能力です。一方、アプリケーション(スキル)には、流行り廃りがある。10年後にどんなアプリケーションが流行るかなんて、予測できない。もし、簡単に未来が予測できるなら、みんなが株で大儲けするはず(笑)。予測できないからこそ、マシンの性能を鍛えるんです。土台がよければ、そこへ新しいアプリケーションを次々と乗せられるので、どんな時代にも適応できる。

―― どうやって「マシンの性能」を磨けばいいんですか?

「今、どんな仕事をしているか」は、一切関係ありません。大切なのは「どんな働き方をするか」です。まずは、「極端に働いてみる」こと。まんべんなく何でもやるのではなく、特定の分野だけ死ぬほど頑張ってみたらいい。

2番目は、「人並み外れた努力をする」こと。その経験がある人は、状況が変化しても、自分は人の数倍も努力するから早く学べるという自信が持てる。3番目は、「失敗を恐れない」。失敗しそうな場面では、すごく苦労する。わざわざ苦労するようなシチュエーションに身を置いた方が、大きな学びが得られます。4番目は、「受け入れる」こと。仕事でうまくいかないことは多いので、頑張ってうまくいかなかったら、「それでいい」と受け入れられなければやっていけません。

―― でも、僕らの世代は、若くして成功している人が多いんです。競争も、激しい。だから、失敗なんてしていられません。

う~ん……。負け組になりたくない→失敗したくない→失敗しないように守りに入るという魔のサイクルに、はまっているかもしれませんねえ。でも皮肉なことに、それが失敗への一番の近道。だって、失敗を経験していないんだから、失敗に対して自分をコントロールする力が付かないんです。それに、守りに入ってしまうと「自分が今できることで何とか点数を稼ごう」としてしまい、それ以上自分を伸ばすことができなくなるんです。

上記の4つは、マシンの性能を鍛えるための最も有効な行動です。常に、この4つの行動を取っていれば、あなたの学習能力と基礎体力に磨きがかかり、5年後、10年後、確実に大きな器になっている。最終的に目指したいのは、自然体の上に努力が乗っているような人。20代から30代の間は、そんな人間になるための基本作業をやってほしいですね。

山本真司氏から学んだ、胸に刻んでおきたい3つのこと

1.「早く、稼ぐ人にならなきゃ」は、安あがり人生を招く

2.流行のスキル、業界、職種ばかりを追っても、いいことなし

3.20代、30代は失敗を恐れず、自分の器を大きくすることに全力投球を

今のあなたはどのタイプ?30歳からの本当の成長戦略とは

「自分のために」の志が、プロフェッショナル人材になる鍵

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