キャリア&転職研究室|あの本を書いたあの人が教えるキャリアの極意|第14回 最初の仕事はくじ引きみた…

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あの本を書いたあの人が教えるキャリアの極意

転職のタイミングと会社の見極め方
講師:山崎元氏

最初の仕事はくじ引きみたいなもの?28歳までに「自分の職」を見極めろ

学生時代の就職活動で、「これだ!」との仕事と運命的な出会いができる人なんて、ほんの少数。でも、大丈夫。28歳までに「これぞ私の進む道」を見極めればいいのだ。「今の仕事、違うかも」と思ったときこそ、実は大きなチャンスなのだった。

山崎元/1958年生まれ。東京大学経済学部卒業後に就職した三菱商事を皮切りに、社会人生活20年間で11回の転職(→野村投信→住友生命→住友信託銀行→シュローダー投信→バーラ→メリルリンチ証券→パリバ証券→山一證券→DKA→明治生命→UFJ総研)を経験。今年に入り、12回目の転職をし、現在は楽天証券経済研究所の客員研究員。一橋大学大学院非常勤講師も勤める。ファンドマネジャー、コンサルタント等での資産運用分野が専門。
生徒:鈴木大介/30歳。25歳のとき、飲食チェーンの店舗スタッフからシステムエンジニアに転職。5年間がむしゃらに働き、スキルアップに励んできたものの、ここ最近は「転職した方が活躍の場が広がるのでは?」と考え始めている。

最初の仕事は「くじ引き」みたいなもの
違うと思ったら早めに見切りをつけろ

―― 今の会社に転職してきて5年。システムエンジニアとしてスキルを磨き、プロジェクトリーダーも任されるようになりました。社風もアットホームで働きやすい。でも最近、なんか物足りなくて……。自分が活躍できるフィールドが、もっとほかにあるような気がするんですよね。

鈴木さんは、エンジニアの仕事そのものには満足しているのですか?

―― はい。自分にとても合っていると思っています。実は新卒の時は、ダイニングバーの店舗スタッフの仕事に就きました。でも、自分には合わない気がして。もともとコンピューターが好きだったこともあり、25歳のときにシステムエンジニアに転身したんです。

なるほど。社会人3年目にキャリアチェンジをしたわけだ。それは賢明でしたね。学生のときは「何となく興味がある」といった漠然としたイメージで仕事を選ぶから、入社後に「なんか違う」ということも十分にあり得る。ある意味、最初に就く仕事はくじ引きみたいなものです。一発で自分に適した仕事にめぐり合う確率はそう高くない。だから、「明らかに自分に合わない」と思ったら早めに転職した方がいいんです。

―― そうですよね! 僕も「あのとき転職しておいて本当によかった」と思っているんです。でも辞めるときには、上司や先輩から「まだ早い」とか「もう少し頑張ってみろ」とか、かなり強く引き留められましたよ。

人を使う側は、無責任に都合のいいことをいうものです(笑)。「3年は我慢してみろ」とよくいうけれど、私には無理な我慢をさせているような気がしてなりませんね。

「自分はこの仕事でやっていく」といった方向性、つまり「自分の職」を決めるのは少しでも早い方がいい。だからこそ、違うと思ったら早めに方向転換し、興味のあることに挑戦して、自分に合うかどうかを試してみるべきなんです。

28歳くらいまでは、「自分の職」を決めるための試行錯誤やコース変更が可能な時期です。この時期の試行錯誤のための転職なら、サイクルは短くてもいいというのが私の持論です。転職1回、25歳という比較的早い段階で自分の職と出会い、エンジニアとしてスキルを磨くことができた鈴木さんは、それだけ有利に時間を使ってきたことになるんですよ。

20代の転職と、30代の転職
同じ転職でも中身が違う!

―― だけど最近、物足りなさを感じていて。直属の上司が管理型のタイプで、現場レベルで気付いたことを「もっとこうしたらどうでしょう?」と提案しても、「そのうち考える」の一点張りで、なかなか通らない。だから、ガラスの天井があるような頭打ち感があって。

そう感じ始めたのは、鈴木さんがエンジニアとして着実に能力を蓄えてきた証拠かもしれません。職種や個々人によって差はありますが、ビジネスパーソンとしての能力は、だいたい30代前半でピークに達すると私は思っています。そして、力がついてくるに従い、器としての会社、つまり会社が自分に与えてくれる環境に満足できなくなってくることは、よくあることなんです。

―― 器としての会社が自分に合っていないと思ったとき、どうしたらいいんですか?

いろんな選択肢がありますよ。妥協して自分が会社に合わせるというケース、周りを巻き込んで環境を改善していくケース、そして環境そのものを変える、つまり転職するというケースです。

―― 妥協はしたくない、環境を改善するためにいろいろ努力したけどダメ……となると、残された道は転職ってこと?

鈴木さんの場合だと、そろそろ転職を前向きに考えてもいいかもしれませんね。20代の転職は、自分の職を決めて、仕事を覚えるための転職だった。そして30代の転職は、仕事を通じて得た能力をさらに発揮できる場を選ぶための転職になる。特に35歳以降は、その傾向が強くなります。同じ転職でも、中身が違うんですよ。

―― なるほど! そういわれると、転職を前向きに捉えることができる気がします。とはいえ、もう30歳。あまり転職回数を増やしたくないし、できれば次を最後にしたいのが正直なところ。こんなこと、12回も転職した山崎さんに対して失礼だとは思うんですけど……。

いえいえ。私だって転職するときはいつも「これで最後にしたい」と思っていたんですから(笑)。鈴木さんがそう思うのは当然です。転職は引っ越しと同じで、ものすごいエネルギーを費やしますからね。なるべく少ない回数で終のすみかにたどり着けた方がいいに決まっている。

でも、それはあくまでも結果論です。結局、会社なんて入って初めてわかることも多いし、「いい会社に入ったな」と当初は思えていてものちのち状況が変化することもある。つまり、この会社を最後にできるかどうかは、自分の都合で決められるものではないんです。

「この会社を最後に」と思うと、期待値も高くなる。すると不満も抱きやすくなりますから、「いい環境があればまた転職するかも」くらいに、どこかで思っていた方がいいですよ。

「自分の強み」さえ確立できれば
35歳限界説にこだわらなくていい

―― そうなんですか? でも巷では転職35歳限界説という話も聞きます。だから、35歳までに終のすみかを探さなくちゃ! との焦りもあって。

たとえば、同じ職種の求人に33歳と38歳の応募者がいて、2人の能力が全く同じなら、長く働けて、入社後のスキル向上の可能性が大きい33歳の方が有利という現実はあります。だだし、これはあくまでも全体の傾向であって、個々人は必ずしも35歳に縛られる必要はないんです。

―― でも、一般的にはやっぱり若い方が……。

ああ、そんなにネガティブに考えないでください。年齢が高くても、企業にとって魅力的な人材なら大丈夫ですから。つまり、「35歳を過ぎたら転職できない」ではなく、「35歳までに人に負けない自分の強みを確立する」と考えればいいんです。

―― 自分の強み……ですか?

そうです。35歳くらいまでに「自分にはこの仕事ができる」といえるように、知識やスキルを身に付け、それを示す実績を出しておくわけです。私はこう考えています。まず、28歳までに自分の職を決める。2年かけて仕事を覚える。そこから5年で「これだけのことをやった」という実績を積み上げていく。すると35歳になる頃には、「人に負けない強み」が持てる。

―― なるほど。

今回の転職では、終のすみかを探すことを目標にするのではなく、今まで培ってきたスキルに自分なりの専門分野をプラスしたり、実績を残せる環境を手に入れるんだと思って転職活動する方がよさそうですね。

35歳になったとき、「戦力1人分」としてカウントされるのではなく、「鈴木さんだから、この仕事を任せたい」といってもらえような、そんなエンジニアになっていれば心配ありませんよ。

山崎元氏から学んだ、胸に刻んでおきたい3つのこと

1.28歳までは、自分の職を決めるために試行錯誤しても許される時期

2.器としての会社が合わないなら、転職を1つの選択肢として考える

3.自分の強みを確立できれば、転職35歳限界説も怖くない

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