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TOP の中の転職研究室 の中のあの本を書いたあの人が教えるキャリアの極意 の中の第6回 「この転職は失敗だった?」と思ったとき、どうすればいい?[講師:秋山 進氏]

あの本を書いたあの人が教えるキャリアの極意

「こんなはずじゃなかった」にならないための転職者の作法
講師:秋山進氏

「この転職は失敗だった……」と思ったとき、どうすればいい?

転職すると会社のルールやカルチャーは一変。さまざまな葛藤が生まれ「こんなはずでは……この転職失敗!?」と後悔が頭をよぎることも。そんなときこそ、実は転職の成功と失敗の分かれ目。辞めるべき? 残るべき? と迷ったあなたに送るヒント。

秋山進/大学卒業後、株式会社リクルートに入社。商品開発や戦略策定に携わり、98年よりインディペンデント・コントラクターとしてさまざまな業種・業界の企業で事業開発、マーケティング戦略の立案、コンプライアンス教育、CEO補佐などに従事。現在も複数の企業と契約し、多忙な日々を送っている。
インディペンデント・コントラクター(IC)とは・・・雇わない、雇われない働き方のこと。複数の企業と契約して、特定の業務遂行を請け負う。
生徒:小林サチヨ/35歳。これまでに3つの会社で働き、この度、4社目に転職決定。即戦力として採用されたため、「一旗揚げねば!」と鼻息が荒いものの、一方で「新しい職場に馴染めないかも」という不安も抱えている。

カルチャーギャップに直面して、
前の会社が急に恋しくなったときは?

―― 前回までのお話で、小さな実績を積み重ねていくことの大切さがわかった気がします。新しい会社に行く前に秋山さんのお話が聞けて本当にラッキーでした! でも、ひとつ不安なことがあるんです。これまでの3回の転職を振り返ってみると、入社後に「この転職は失敗だったかも」って悩んじゃうときがあるんですよ。こんなことで悩むなんて、私が弱いから……?

その気持ち、わかりますよ。新しい会社に心身共に慣れるまでの数カ月間は、さまざまなカルチャーギャップに直面し、「この会社でやっていけるのだろうか」「この転職失敗だったかも」という焦燥感が押し寄せてくるものです。これは誰でも経験することで、決してサチヨさんだけじゃないんですよ。そうやって転職したことを悔やんでいると、前の会社が急に恋しく思えたりするでしょ?

―― そうなんです! 「戻れるものなら戻りたい」って思っちゃうんです。

結論からいえば、「諦めること」です。転職者は、(少なくともしばらくの間は)新しい会社で生きて行くしかないのですから。前の会社の仲間に会いたくなっても、グッと我慢。会ってしまうと、気持ちがどんどん後向きになります。とにかく前に進みましょうよ。

後向きな気分になったときは 「どこが嫌なのか?」と考えてみよう

前回、辛いときの対処法として「相手をクライアントと思え」と言いましたが、もうひとつ、いい方法があるんです。それが「自分を取材する」というやり方なんです。

―― 自分を取材するって……どういうことですか?

「こんなはずじゃなかった」「この転職、失敗かも」と後向きな気分になってしまったときに、辛い、嫌だ、辞めたい……と延々と考えてしまうと、どんどんマイナス思考にハマってしまいます。そんなときは「なぜ、どこが嫌なのだろう?」と、自分で自分にインタビューしてみるんですよ。そうすることで、「心(ハート)」の不快な思いを、「知(マインド)」で処理することができる。取材者の立場で物事を見ると、不思議と気持ちがラクになるし、「なぜ?」に対する答えを探すことは新しい会社を知ることにもつながるんです。

―― なるほど。自分を客観視することで、落ち込まずに済むんですね。でも秋山さん、新しい会社に入ると、「そうはいっても、これは変だ!」ってことが多々ありませんか? そんなときも、ひたすら我慢して、自分で自分を取材するんですか?

「おかしい!」と思っても 口に出して指摘してはいけない

はい、我慢です。少なくとも入社半年まではね。間違っても違和感を口に出して、指摘してはいけません。
この時期は、会社のルールや文化を静かに観察し、素直に従うべきなんです。なぜなら、転職者にとって「おかしいなぁ」と思うことでも、実はそれなりに合理性があることが少なくないから。違和感を抱いたときは口に出すのではなく、メモをとりましょう。何について、どんなところに違和感を持ったのか。なぜそう感じたのかまで、詳細に記録しておいてください。

こうした「違和感メモ」に対する答えは、入社して数カ月経ってからわかってくるものなんです。
たとえばあなたが稟議を通すのに、稟議書にたくさんのハンコを必要とする会社に転職したとします。前の会社は、現場レベルの業務のほとんどがその場で決まっていたベンチャー企業。きっとあなたは、「おかしい、時間の無駄だ」と感じるでしょう。でも、数カ月たってみると、稟議書を作成する意味がわかってくるんです。たとえば、転職先は社会的信用のある上場企業で、多くの取引先を抱えるメーカー。社内手続の記録を逐一残しておかないと、発注ミスや汚職につながり、関係各所に迷惑をかける。だから面倒でも稟議書が必要なのだ、と。

―― うーん、どんなに「おかしい」と思っても、早まっちゃいけないんですね。

解決案を提案するのは、社内のルールや文化を理解した上で、それでも「おかしい」と思ったときです。ただ、何度もいうように、入社半年まではグッと我慢。動き出すのは、あなたが周囲の信頼を獲得し、評価され、発言力を増してくる入社半年以上経ってからにしてくださいね。

会社に貢献できるようになるまでは 転職者は会社に「借金」をしている!?

―― 会社のルールや文化を理解して、周囲の信頼を獲得して、時機を見て解決案を提案して……それでも「ここでは自分の力を発揮できない」と思ってしまったら?

自分が今の会社に転職してきた目的、つまり自分が本当にやりたいことについて改めて考え直してみることです。転職先で自分のやりたいことが実現できそうもないなら、活躍の場を他に移してもいいかもしれませんね。ただ、目的は常に変化していくもの。1つの目的に固執しすぎないほうがいいですよ。その会社で何かしら得るものがあるのなら、途中から目的を変更しても構わないのですから。

でも、転職は年齢が高くなるほど不利になるじゃないですか。だから、「この会社じゃ活躍できないかも」と思うとすごく焦っちゃうんです。「だったら一刻も早く動かなくちゃ!」って。

うーん……。会社って、かなりのコストをかけて中途採用を行っているんですよね。だから転職者は、会社に貢献できるようになるまでは会社に「借金」しているのと同じなんです。そう考えると、「せめて借金くらいは返さなきゃ」と思いませんか? それに、頑張って借金が返せる自分、つまり会社に貢献できる自分になれば以前より仕事力が付いているはず。転職市場における価値も高くなっているかもしれません。だから、「早く動かないと転職できない」なんて、焦る必要はありませんよ。

結局、大切なのは「自分が何をやりたいのか」です。転職したら、会社のルールやカルチャーは変わって当然だし、そこで「合う・合わない」「好き・嫌い」とウジウジしていては時間がもったいない! 新しいルールや文化は、割り切ってサッサと身に付けましょう。そして、やりたいことを実現するためにはどうしたらいいか、常に考えて行動しましょう。それをできる人が、真の転職成功者なのです。

秋山進氏から学んだ、胸に刻んでおきたい3つのこと

1.嫌な気分になったときは「自分取材」で客観的になってみる

2.「これっておかしい」は口に出さずに違和感メモ。数カ月後に再考を

3.悩んだときこそ、「何がやりたくて転職したのか」の初心を思い出そう

転職を成功させるには「入ってから」が肝心です

自分の力を発揮するための環境作りのステップ

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