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2.転職市場動向
営業職の転職市場動向と今後の予測 2008-2009

100年に一度と言われる世界同時不況の中、営業職の転職市場の現状はどうなっているのか、今度どうなるのか、そして今求められている人材像とは。営業職に特化している人材紹介会社のコンサルタントに解説してもらった。

営業職の求人は2008年の春ころから徐々に減少傾向になり、金融危機と急激な円高の影響で9月以降、ほぼ全業界、全職種に渡って営業職の求人は減少しました。特に金融・不動産業界の求人は激減しました。

製造業も北米市場の冷え込みと円高で厳しい状況です。特に自動車業界は裾野が広いので、完成車メーカーを頂点として末端の部品メーカーまでかなりの影響を受けています。真っ先に影響を受ける広告、人材業界の求人も減少しました。

そんな中、比較的求人ニーズを維持しているのはIT、医療、コンシューマー関連です。ITはまだ開発案件は多いし、医療はなくてはならないものですから。それでも決して堅調というわけではなく、他の業界に比べるとそれほど落ち込みは激しくないという程度です。また、同じ業界の中でも明暗がはっきり分かれています。今は業界・業種ごとではなく、企業単位で好・不調を判断する時代です。

不況に強い3タイプ

ではこの不況下で、求人を行っているのはどういう企業か。3つのタイプに分類されます。

まずひとつは「内需型」。急激な円高で輸出産業は軒並みダウンしていることでもお分かりのとおり、ひとことでいうと日本国内のマーケットを主戦場にしている企業です。不況に強いと言われている消費財系、コンシューマー系がこれにあたります。特に今は安くて高品質の商品を提供している企業が強い。代表的な例がユニクロです。この不況下で過去最高の利益を記録するなど大躍進中です。これまで少し価格帯の高い衣料品を購入していた層がこの不景気で財布の紐を締め始め、安くて高品質の商品を大量に提供している衣料店に殺到しています。不況だからこそ伸びている企業と言えるでしょう。

2つめは「ストックビジネス型」。優良顧客を複数抱えている企業、もしくは顧客から一定額の料金を定期的、継続的に徴収できるビジネスです。携帯電話などの通信ビジネスがこれにあたります。携帯電話は一回契約すると毎月顧客から一定額の料金が入ってきます。仮に今月の新規契約がゼロになっても売り上げはゼロにはならない。あとはASPのビジネスを展開している企業なども同じです。こういった企業は体力に余力があるし、営業力を強化したいと思っているので採用意欲は衰えていません。

3つめは、「ソリューション型」。不況になるとどの企業もリストラなどコスト削減に走ります。しかしそれでは先細るだけなので、同時に内部強化を図ろうとします。例えば顧客を囲いこむために従来は営業個人で顧客管理していたものを会社全体で囲い込んでいき、アップセルを狙う。または、他社への切り替えを防ぐという目的でCRMを導入しようとしたり、営業力強化のために今まで使っていたのとは違う、コストが安くて効果のある営業支援のソリューションツールなどを導入しようとする動きになります。つまり、景気が悪くなると企業は営業や顧客との接点強化を図ろうとする。そこが狙い目。したがって営業支援システムや顧客管理システムのASPを開発しているソフトウェア会社などが好調。実際に積極採用を行っている企業もあります。給料も比較的高いです。

採用のハードルは高くなっている

そういった企業は求人を継続していますが、ただし、採用ハードルは高いのも事実です。重視されているポイントは即戦力として使えるかどうか。実績を見られる傾向は強まっているように感じます。これだけは負けないという軸となるスキルに加え、いくつか卓越したスキルが必要で、それを実績で示すことが重要です。

人物面もかつてないほどに見られる傾向になってきました。最近採用側のリクエストで多いのが、「自ら率先して仕事をどんどんしていく人」です。今、企業には余裕がないので中途採用者を手取り足取り教えてられません。だから指示がなければ動けない人は厳しい。去年よりもその傾向は強まっています。言い方を変えれば、「自分で考えて自分で動ける人」が即戦力ということです。

また、人気企業場合、1名の募集にそれこそ何百名もの応募があります。その意味で競争が激しくなっていますので、能力だけでもダメで、やはり志望理由も大事になります。

第二新卒・キャリアチェンジは厳しい

2008年前半まで高かった第二新卒のニーズは、現在は少なくなってきています。求人はあったとしても採用基準は高い。また、第二新卒の募集に経験者が応募をしてくるようになり自然と経験者採用になってしまう、というケースをよく聞きます。可能性があるのは地頭がいい人。といっても学歴ではなく、裏返せばこれも「自分で考えて自分で動ける」人。上司の期待してることを察知して自ら考えて動ける人。知識集積型じゃなくて集積した知識を応用できる人なら可能性はあります。

異業界・異業界からの転職、いわゆるキャリアチェンジも同様に厳しい状況です。未経験だけどやりたい仕事なので2〜3カ月研修させてくださいというのは、この不況下では通用しません。そんな手間ひまをかけなくても経験者をいくらでも採用できますから。それでも採用される方は、面接前からその企業、業界の事をしっかりと研究し、今までの経験で活かせる部分は何かという事を事前にしっかりと準備をされる方は可能性が高いです。

退職理由を重視

面接で企業が重視するのは退職理由です。こんな不況下で採用するわけだからすぐ辞められたら困るわけです。そこはかなりこだわっていて、退職理由を聞いてまた辞めるんじゃないかと思われる人は絶対に採用しません。

今の仕事がきついから辞めるという理由では、なかなか採用してもらえないでしょう。まず肝に銘じてほしいのはこの不況下ですので、どこの会社もハードだということです。業績が良好な会社も苦しい思いをしています。業績を上げるためにほかの企業の何倍も危機感をもって努力しています。その分一人ひとりの社員の負担は増大しています。そもそも転職して環境を変えること自体たいへんなことです。したがって中途半端な気持ちであれば、転職は思いとどまった方がいいと思います。

今、最も大事なのは熱意です。先日、書類選考には通るのですが、面接で必ず落ちるという人がいました。書類が通るということはスキル・能力的には問題がなさそうだと企業が判断しているということです。企業に不採用理由を聞いたところ「熱意が感じられない」という答えでした。今は能力×熱意の時代なのです。

自分をどれだけ客観視できているかということも重要です。自分はどんな仕事に向いているのか、これからどんな仕事をしていきたいのか、そういう状況を背景にしてあなたはどうして弊社を選ぶのですかと問われたときに、自分を主語にしてはっきり答えらないと内定を勝ち取るのは難しいでしょう。

20代から30代前半までがニーズ高し

年代的に最もニーズが高いのはやはり20代後半から30代前半くらいの即戦力ゾーンです。今は40代前半までなら可能性はあります。40代後半から50代になってくると求人数は落ちます。生活費が一番かかる年代なので、あまり業界・業種にこだわらずに、まず就業の機会を重視して仕事を探すべきでしょう。マネジメント経験が問われますが、管理のみという求人は少なく、プレイングマネージャー的なポジションが多いです。そういう意味では営業の現場が好きな人じゃないと難しいでしょう。

2009年はさらに厳しくなる予想

2009年、特に上半期は求職者、企業の双方にとってさらに厳しくなると思います。企業の業績が何度も下方修正をされる中で、全体の求人数が減少をしています。1件の求人に対して多く応募が殺到する。厳しい1年になると言わざるをえません。

しかし、個人的には2010年は回復に転じると予測しています。日本の場合、団塊の世代が2010年にまた大量に退職するので、その分雇用が増えると見ています。

もう一度自分を見つめ直すことが大事

今転職しようと思っている人、実際に活動している人は、根本的に自分自身の仕事観を見つめ直すべきだと思います。自分にとって仕事とは何か、何のために仕事をするのかということです。それが固まっていないと次が見えてきませんし、中途半端な気持ちで転職すると必ず後悔します。

また、転職を成功させるために工夫をすることが必要です。例えば応募書類の書き方。今はひとつの募集に100人も200人も応募者が殺到する時代です。採用側から見ると、その中に魅力的な応募者がいたかもしれないけど、たまたま書き方が悪かったために見逃しているケースがあります。そこをまずは目に留まらせる工夫をする。営業の場合はまず実績が重視されるので、具体的な数字で示す必要があります。また、見た目の点でいえば、すべて手書きで作成するのもひとつの方法でしょう。今はほとんどの応募書類がPCで作成されているので、手書きだと目立つし温かみも感じられるからつい手に取ってしまうんです。まずは見てもらわなければ始まらないので有効な手段でしょう。

もっと視野を広げよう

求人検索をする際、もっと視野を広げて企業を探してみましょうということも強く言いたいです。近年のインターネットで求人を検索している方が大多数です。どうしてもホームページの見た目が綺麗、企業規模が大きい、オフィスビルが綺麗、売上高が大きい、などついついブランドに目を奪われます。しかし、ホームページの見た目が綺麗ではない、オフィスビルがいまひとつ、勤務場所が少し遠い、という事で敬遠されるケースがありますが、世の中には隠れたいい企業、あまり名前は知られていないけれど世界一という企業がたくさんあります。

私事で恐縮ですが、最初に勤務したメーカーは、規模は150名ほどで、場所も車でないと通えないけれど、実は日本シェアNO.1で特定分野での世界シェアは80%以上という会社でした。そういう企業は2007年までの売り手市場でも人材の採用が思うようにできず、現在でも継続的に採用をしている企業が多くあります。歴史もあり、優良顧客も多く保有し、技術力やノウハウを独自でお持ちの会社も多いので、もっと選択の幅を広げてほしいと思います。そういった企業の採用ハードルは有名大企業に比べてそれほど高くないですし、競争も激しくない。また、顧客基盤や技術もしっかりしている企業も多い。こういった企業を知りたい方は、相談にお越しいただいたらご紹介します。

また、転職するなら働きながらが原則です。次の転職先が決まっていないのに安易に会社を辞めてしまって、その後なかなか決まらず、生活に困窮してしまった人を幾人も見てきました。こんな状況だからこそ、あくまで「生活の基盤を確保した上で」が基本です。

転職すると決めているなら早く動いた方が得策でしょう。求人数、競争率ともにこれからより厳しくなっていくと思われます。仮に応募してみて不採用だったとしても、自分の客観的な市場価値がわかるし、足りないものがわかります。今の会社で頑張るしかないんだと思えれば腹も括れます。そして今の会社で研鑽を続けて、チャンスが来たら再び挑戦すればいいのです。そのときはぜひ相談にお越しください。

 

■2008年後半から営業求人も全業界・全職種で30〜40%減

金融・不動産業界の営業求人は激減。自動車関連の製造業、広告、人材業界の求人も減少している。比較的、落ち込み幅が小さい求人のキーワードはIT、医療、コンシューマー。ただし、求人を継続している企業もターゲットを即戦力に絞っており、採用のバーは高い。人物面へのリクエストもかつてなく強まっている。

■内需型・ストックビジネス型・ソリューション型は不況に強い

国内で商戦を展開する「内需型」、特に低価格商品を武器にした企業の業績が好調。通信ビジネスやASPビジネスを展開している「ストックビジネス型」は安定した利用料金が見込めるので堅調な求人ニーズあり。また、営業支援システムや顧客管理システムの案件が増加しているので、ソフトウエア会社など「ソリューション型」も採用意欲が高い。

■第二新卒・キャリアチェンジは大逆風。25〜35歳の即戦力はニーズ高い

2008年後半より第二新卒ニーズは激減し、60%減といった冷え込みだ。採用のハードルもかなり高くなっており、キャリアチェンジといった未経験での応募は厳しい。比較的好調なのが25〜35歳の即戦力ゾーン。35〜40代前半ならまだまだ採用の可能性あり。

■2009年も厳しい転職市場が続く

2009年も厳しく、1件の求人に応募が殺到する状況が続く。今の転職活動は就業しながらが鉄則。営業実績を具体的な数字で示すなど、応募書類でも工夫が必要だ。また規模は小さくても特定分野ではトップシェアの企業など、無名の優良企業に目を向けると選択肢が広がる。厳しい転職市場も2010年以降は回復に向かうというのが専門家の大方の予想だ。

アドバイスをくれたコンサルタント
田中聡氏
株式会社ジェイック
取締役
人材紹介事業部長
上島隆司氏

メーカーや通信系企業の営業職、IT企業の事業部長などを経て現職。特にメーカー・広告・IT系の営業職に強い。「私自身、採用側と転職者側の両方を経験しているので、両者の気持ちを理解した上でのコンサルティングができます」



取材・構成/山下久猛
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