その転職は、本人の人生にとって本当に有為なものか

なぜ、キャリアコンサルタントをはじめようと思ったのですか？

自動車および医療・福祉業界で約40年間、人事・労務業務に従事してきました。当時から感じていましたが、若い人の中には力がありながら埋もれしまっている人がいます。それは企業側にも問題があります。経営を行う中で、企業の将来と人材の将来の相互作用を意識して人材を育成するべきだと思っていました。そこで定年を機に、これまで培ってきたさまざまな業界での人事・労務の経験を生かして、次世代のキャリア形成・発展に貢献したいと考え、キャリアコンサルタントとしての活動を始めました。

キャリアコンサルタントとしてのポリシーをお聞かせください。

求人企業の本音の条件、業界の動向、期待されている職務姿勢などの情報を提供し、求職者の自己理解と仕事理解を深めた上で、より良いマッチングを目指しています。求職希望者が転職活動を行うことや実際に企業応募することが、本人の人生にとって有意義なものかどうかをじっくりと判断し、それを踏まえてコンサルティングを行うようにしています。ただし、あくまでも意思決定は本人が行うものです。判断に必要で信頼のおける情報を提供することが、基本的な役割であると考えています。

冷静に、自身と周辺の状況を理解することが重要

転職支援で印象に残っている話がありましたらお聞かせください。

転職だけをお勧めするようなことはしていません。転職を考える何らかのきっかけが必ずあります。きっかけを丹念に拾い出し、より前向きな気持ちで仕事に取り組める環境はどこにあるかについて考えていきたいと思っています。

多くの方々に新しい仕事の場を得ることができ喜んでいただいていますが、キャリアカウンセリングを通じて自己理解を深め、現職継続となった方もいました。リストラが進行している業界で将来に不安を抱えての転職相談でした。よく話をうかがうと退職を希望する一番の理由は、上司と意見が合わないことでした。転職してこれまでの環境をリセットすることの難しさを理解いただき、現職での業務見直しの話し合いを続けることを提案しました。結果、現職を続ける意思決定をされました。

別の例では、会社から退職を迫られ方からの法的対応や自身の身の処し方などの相談にお答えしたこともあります。きっかけとなったことやその後の経緯を詳細にお聴きしました。この例では相談者が最も利益となる対応方法を一緒に見つけました。他にも同業他社への転職を考えている方から、同業へ転職する際には、どう対応すればよいかと相談されることもあります。

いずれの場合も私がお話をうかがうことで、求職者の方がご自身の状況や周辺の状況を理解され、冷静に判断されるよう、お手伝いをしたいと思っています。最後は納得の上で、ご自身が道を決めていただくことが重要です。

納得のライフキャリアプランを立てる

これから転職しようとされている求職者にメッセージをお願いします。

現状がネガティブな状況となり、転職サイトをチェックすると「転職することは是である」と考えがちですが、決して踊らされず道を誤らないようにしなければなりません。転職することがキャリアアップではないからです。「キャリアアップ＝転職」という言葉が良く聞かれますが、一部の方に向けられたものです。キャリアアップは地位を上げる以外に、今の仕事を深める、仕事の幅を広げるという3次元で言われます。求職者の方にはご自身の現状分析したうえで、「やりたいことは何か」「できることは何か」「やるべき責任のあることは何か」を考え、納得のいくライフキャリアプランを立てていただきたいと思います。

最後に、休日の過ごし方やオフにこだわっていることはありますか？

最近はキャリアコンサルタント仲間のほかコンサルタントの資格を取ったときや学生時代の仲間たちとのネットワーク作りを積極的に行っています。できるだけ自ら出会う場をつくって、つながりを持とうと活動しています。また、最近は勉強することの楽しさを味わっています。周囲に興味関心を持つことは、仕事だけではなく、自分の人生においても有意義なことだと思います。