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魂の仕事人 第28回 其の四
「スポーツで社会貢献」を胸に 医療、教育、スポーツ、ビジネス さまざまな分野で奮闘
いくつかの運命的な出会いを経て、38歳で独立した辻氏。組織を立ち上げ懸命に取り組んでいると人が集まり、次の構想が生まれ、そこからまた新しい組織が誕生していく。そんな連鎖でこれまで立ち上げた組織は5つ。しかしまだ辻氏の激走は終わりそうもない。  
スポーツドクター・エミネクロス代表 辻 秀一
 

病人を診ないクリニック

 
辻氏の周りには自然と人が集まってくる。「オフィス・ドクター辻」の関係者の皆さんと

 独立を決意した当初はまだ、今の「スポーツという素材を使ってさまざまな人々のQOLを豊かにし、世の中をよくしたい」という理念が完全に固まっていたわけではなかったんです。まずは、それまで医者をやってましたから、ユニークなスポーツクリニックをつくろうと思い、「エミネクロス・メディカルクリニック」を立ち上げました。

 ちなみに「エミネクロス」とは優秀、高貴という意味の“EMINENT”と交差させる、交わるという意味の“CROSS”を足して作った造語です。“CROSS”には精神×肉体、西洋医学×東洋医学、人×情報などの意味も含め、さまざまな発想と活動を通じて、人々のセルフイメージを高め、素晴らしい人生を歩むお手伝いをする集団でありたいとの思いを込めて名づけました。また、「エミネ」には「笑みネ!」というパッチ・アダムス(※1)の精神を忘れないという意味も含んでいます。さらに、“EMINENT”は「秀一」、“CROSS”は「辻」という意味なので、僕自身の氏名を表してもいるんです。

 その「エミネクロス・メディカルクリニック」は医療機関のような名称ですが、普通のいわゆるクリニックではありません。決定的に違ったのは、「病人は診ない」という点です。どういうことかというと、マイナス=病気の状態をゼロ=通常の状態に戻すことによって患者のQOLを向上させるのは、世の中にすばらしいお医者さんがたくさんいるので、彼らに任せましょうと。僕は普通の人のQOLを向上させる、つまり、ゼロベースから少しプラスにもっていくというコンセプトでやっていこうと。それを実現するために、これまで研究や実際の指導を通して身につけたカウンセリングやメンタルトレーニングの技法を使っていこうと思ったんですね。

 また、人のQOLを豊かにするための健康の3要素は、栄養・休養・運動ですが、メンタルな部分は僕ができるので、フィジカルな面で「プラスにもっていく」という僕の発想を理解できる新しい栄養士やトレーナーと協同することも始めました。

 もう一つのコンセプトはOne on Oneでやること。やっぱり考え方や感じ方が違う不特定多数の人々に対しては、いいたいことをいくらうまく伝えられたとしても、伝えたいことが薄まってしまいます。だから、QOLをもっと個人として真剣にとらえたいと思っている人に対しては1対1でやるのが理想的なんです。ただこのOneにはチームも含まれます。ひとつのチームは複数人で構成されていますが、勝つという共通の目的をチーム員が共有しているので、1チーム30人だとしてもOneとして扱うんです。

 現在はスポーツ選手だけじゃなく、芸術家、一般のサラリーマン、OL、学生、主婦など多種多様な人々のメンタルトレーニングをしています。要するに、人間を動かしているのは心だから、勝ちたいとか、うまくなりたいとか、美しくなりたいというQOLは人それぞれ違っても、心を強くするためにやることは基本的に同じなんです。アスリートだろうと芸術家だろうとOLだろうと主婦だろうとね。

※1 パッチ・アダムス──笑いで患者のQOLを上げ、回復させることを提唱したアメリカの医師。辻氏がスポーツで人々のQOLを上げることに目覚めたのもパッチ・アダムスの影響が大きい。詳しくはインタビュー其の三を参照。

子供のためのスポーツ塾
 

 このクリニックを作ろうと思っているときに、またしても僕の運命に大きな影響を及ぼす男と出会いました。

 その男とは東野智弥といって、高校時代はバスケのインターハイで日本一、実業団大会では準優勝という輝かしい成績を誇っていた男でした。また、コーチとしても優秀で、アメリカにコーチ留学して、スポーツの本場で一流のコーチ学を学び、帰国してからはトヨタのチームのアシスタントコーチや、全日本のアシスタントコーチを経験し、今は「レラカムイ北海道」という日本初のプロバスケットボールチームのヘッドコーチをやっています。ニックネームはクラッシャーというんですけどね。「壊し屋」という悪い意味ではなく、「固定概念を壊しながら人生を切り開いてしていく」男という意味です。

 東野と会ったのはちょうど彼がコーチ留学から帰国してきたころで、話してみたらすごく気が合ったんです。まず僕と同じくらいバスケを愛していたし、バスケットボールだけじゃなくてスポーツはただ勝つことだけを目的に根性でやるもんじゃなくって、もっと人生を豊かにするためにあるんだと考えていました。だから会ってすぐに意気投合してふたりで何か一緒にやろうということになったんです。ふたりの大きな絆はバスケでしたから、バスケで何ができるか考えたときに、医療であり芸術でありコミュニケーションであり教育であるスポーツの中で、みんなに分かりやすくてインパクトが強そうなのが「教育」だろうと。それで、子供のためのバスケのスポーツ塾(※2)をつくろうということにしたんですね。

 スポーツ塾というと、オリンピックに出られるようなエリート選手を育成するためのものだと誤解されがちなんですが、僕らの共通理念はQOLの向上だったので、バスケットボールを通して豊かな人間をつくることを目的として掲げました。

※2 スポーツ塾──気合と期待に反して、設立から半年間ほどは、子供は4人しか集まらなかった。しかし東野氏が知り合いの読売新聞の記者にたまたま活動内容を話したところ、それが夕刊に載り、その結果60人くらいに増えた。

さまざまなバスケチームが誕生
 
車椅子バスケチーム「ノー・エクスキューズ」(写真提供:辻秀一氏)
 

 しばらく子供たちだけのスポーツ塾活動をしていたのですが、そのうち子供の模範となる国内トップクラスのバスケチームを作ろうということになって「エクセレンス」というチームを作りました。いち企業や大学の体育会に属さない選手たちのチームなのですが、設立6年目で国内バスケの最高峰の大会、ALL JAPANの出場を目指し、クラブチーム日本一に挑戦しています。過去最高の成績は全国に400とも500ともいわれているクラブチームの中での3位です。

 また、車椅子バスケットボールチームの「ノー・エクスキューズ」、耳の不自由な人たちのバスケチームの「ラフ」、部活以外でバスケがやりたい高校生のバスケチームの「チーム湘北」など、活動していくうちにどんどん増えていきました。さらに誰でも参加できるクラブとかパークみたいなものもつくったりして、バスケットワールドを展開し始めたんです。

 でもこういう活動ってクリニックで運営するのもおかしいし、僕個人の会社で運営するのもおかしい。それに僕の理念である「スポーツは医療であり、芸術であり、コミュニケーションであり、教育である」、そして4つのビタミン「元気・感動・仲間・成長」に賛同する人が意外に多いから、この理念を全国に展開しようと。さらに実際にプレイするだけじゃなく、スポーツを「見る・聞く・読む・支える」など、いろんな形のスポーツをつくって、多くの人々に伝えて行こうと、2004年に「NPO法人 エミネクロス・スポーツワールド(以下ESW)」を立ち上げたんです。

 ESWの中にあるいろんなチームは「理念共有型のスポーツクラブ」と呼んでいます。僕の理念を、地域、会社、学校などの枠を飛び越えて共有し、活動する人たちのスポーツクラブです。

しかし現在のESWはほとんど空の状態になっているという。そこには辻氏のNPOというあり方と自らの理念に対するある思いがあった。

バスケットボールの会社を設立
 

 ESWはNPOになってからさらに活動は充実して規模も大きくなり、港区でもスポーツといえばエミネクロス、エミネクロスといえばバスケ、バスケと言えば辻、みたいなイメージが強くなっちゃったんですね。でも本来の僕の原点の、「スポーツで世の中を良くする」という理念より、「バスケットボール」や「辻」という色が強すぎるのは、NPOとしてどうなんだろうって疑問を持ち始めたんです。

 それともうひとつ、これまでは草の根的な活動によって僕の考えを世の中に広めていくという戦略だったのですが、やっぱりそれだけじゃ波及力も弱いし、時間もかかるなと。だったら山のてっぺんから叫ぶようなことをすれば、目立つし、より多くの人びとに伝わるんじゃないかと思ったんです。今、クラブチームとして日本一を目指している「エクセレンス」というチームがありますが、東野ともう一段上のことをやりたいねと話し合った結果、東京をホームとするバスケのプロチームをつくろうという話になったんです。ちょうどそのとき東野に、北海道で「レラカムイ北海道」というプロチームができるからそのヘッドコーチに就任してほしいというオファーが来たんです。

 
東野氏が監督を務める「レラカムイ北海道」のメンバーと一緒に。辻氏も定期的にメンタルトレーニングを行っている(写真提供:辻秀一氏)
 

 バスケのプロチームをひとつ作ると大体年間で3億円くらいかかるんですよ。ちなみにJリーグでJ1のチームをつくろうとすると30億、プロ野球では60億くらいかかるから、それに比べれば安いですよね。だけどすぐに3億円は集められないし、将来、俺たちのプロバスケチームを作るための勉強にもなるから、東野はそのオファーを受けて札幌に行ったんです。僕も「レラカムイ北海道」のメンタルトレーニングのため、月に一回札幌に通ってるんですけどね。

 だけど、いろいろ考えたんですが、東京がホームのプロバスケチームをつくるのは、NPOでは限りなく不可能に近いんですよ。

 また、当時は講演や取材や書籍執筆の仕事も増えていたので、僕個人としてやる、僕でなければできない仕事に対応するための会社「オフィスドクター辻」を設立していました。でもこの会社は僕が死んだら終わりです。でも僕の理念やアイデアから生まれたものは、それを共有してくれる人々の手によって、僕の死後も活動して、世の中に一石を投じ続けてほしいという願いが強くなっていきました。

 以上のようないろんな思いが交錯して、思い切ってバスケの会社をつくってしまおうと、東野と2006年6月に「株式会社 東京エミネクロスクラッシャー」を設立したんです。ここはバスケットボールの会社で、将来僕が死んでもバスケ好きが集まって、僕の思いをバスケで伝えていく。将来的にはトップにプロチームがあって、その傘下に日本トップクラスのクラブチームがあり、子供のバスケ塾があり、障害者のチームなどがある、バスケワールドの会社。そこで「NPO エミネクロス・スポーツワールド」の中に入っていたバスケ事業を、昨年(2007年)の春から、全部こちらに移したんです。

プロバスケチームの夢は5年後に
 

 この会社の大きな目的である「東京にプロバスケチームを作る」という夢は5年後くらいに叶えたいと思っています。ただやっぱり、プロチームをもつと莫大なコストがかかるので、企業も自前のチームを廃部にしたり、スポーツにお金を出すことを躊躇していますよね。だから僕らの作るプロチームは従来とは違うオリジナリティや価値を生み出さないといけないから、当然容易なことではありません。

 でも、2006年にできた、東野がヘッドコーチを務めているプロチーム「レラカムイ北海道」は、日本バスケットリーグの中で唯一、複数の地元の企業から少しずつ資金をもらって立ち上げた、地元に根ざしたプロチームなんです。

 この先駆者チームをひとつのいい例として、「東京エミネクロスクラッシャー」も僕らの思いに共感、思いを共有してくれる複数の会社で作ることができればいいと思っています。100万円ずつでも300社集まれば3億だし、その程度なら企業側の負担も軽くすむかなと。「元気・感動・仲間・成長」という、他のチームがもっていない文化としてのスポーツという理念を掲げて活動していけば、5年後くらいには実現可能なんじゃないかなと、今のところは思っていますね。

バスケットボールは人生の縮図
 

 なぜこれほどまでにバスケにこだわるのか? バスケットボールというスポーツは、人生の縮図だと思ってるんですよ。人間社会で起こることは、すべてバスケで起こると思ってるんですね。バスケは1チーム5人ですが、人間のチームワークの原点が、5人だと思うんですよね。一人ひとりの役割を意識しながら、かつ5つすべてがそろわないとうまくいかないんです。

 手の指って5本じゃないですか、普段小指って意識してないですけど、小指1本なくなるだけで、とても困るんですよ。それぞれの指すべてにアイデンティティがあって、それぞれがそれをしっかり守っていれば、全体としてうまく機能しようなんていちいち思わなくてもちゃんと手として機能する。

 こんなふうに5という数字はチームワークのあらゆる基本的原則を、僕たちに知らしめてくれると思うんですね。バスケって4人が死ぬほど頑張っている時に1人さぼっていたら、絶対チームは負けるんですよ。常に5人それぞれのアイデンティティの重要性がすごく高いんですね。だから深いんですよ。アメリカの言葉で“Five of Beauty”というのがあって、まさにバスケの美学とでもいいましょうか……。バスケの中に人生のすべてがあるとすら思っています。

NPOを埋める作業
 

 そんなわけで「株式会社 東京エミネクロスクラッシャー」にバスケ事業をすべて移管したので、今、NPOはほとんど空の状態になっています。だから今、NPOの方でもいろんなことを模索しています。ひとつは「エミネランド」という、いろんなスポーツを一日に渡って体験できる遊び場、いわばスポーツのディズニーランドのようなもの。「サッカー」、「野球」、「ゴルフ」といった各スポーツコーナーに一流の選手やコーチがいて、各種目について教えてくれる。このような、ひとつの種目に限定しないでいろんなスポーツを親子で体験できるスポーツランドの構想をまずは港区がおもしろがってくれて、助成金がつきました。

 このスポーツランドを全国展開していく事業が今の「NPOエミネクロス・スポーツワールド」のメインです。あとは、スポーツの持っている本来の価値や定義を変えるようなことをやりたいと思っています。日本ではスポーツといえば勝利至上主義とか体育至上主義とか根性至上主義という印象があるから、スポーツといえば「元気・感動・仲間・成長でしょう」みたいな、定義を一新してしまうような仕掛けをこのNPOでできないかなと。そしてその先にあるのはスポーツによる世界平和です。今、その目標に向けて僕の考え方に賛同してるスポーツ好きの連中と一緒にブレインストーミングをやってるところです。つまり、今はNPOの中身を埋める作業中なんです。

独立から2年後には『スラムダンク勝利学』が大ヒット。さらにビジネスマン向けに『ほんとうの社会学』を上梓し、ビジネス雑誌で連載を開始したことで、徐々にビジネス界から注目されるようになる。2002年には三菱総合研究所「スポーツをビジネスに活かす研究会」の講師を務め、エミネクロス主催のコーチングセミナーを定期的に開催。2003年には企業でのセミナー・研修が年間50回を数えるなど、ビジネス界にも活動の場を広げていった。

ビジネスの世界にもスポーツ心理学を応用
 

「株式会社 東京エミネクロスクラッシャー」を設立した同じ年に、「株式会社エミネクロス・クリエイツジャパン」という会社も立ち上げました。一言で言うと、これまでスポーツで培ってきたメンタルトレーニングの手法を使って企業を元気にする会社です。

 独立当初から、QOLを上げて豊かな人生を送るためには心を豊かにする必要があって、そのやり方を習得するにはトレーニングが必要だということで、いろんなシーンでメンタルトレーニングを普及していこうと考えていました。

 もちろん大多数の人が働くビジネスシーンでも十分活かせると確信していたので、「一人ひとりの社員にも心があって、その心をトレーニングすることによってパフォーマンスが向上して、結果的に会社全体の生産性がアップする」ということを講演やセミナーで話したり、経済誌で連載したりしていました。そしたら意外に大きな反響があって、「我が社のメンタルトレーニングをやってほしい」という問い合わせも来たんです。

 うつ病になった社員をケアするためにメンタルヘルスが必要だという考えから一歩進んで、僕の話を聞いて、会社全体が元気になるために通常の状態の社員の心のトレーニングをする必要があると考え始めた企業が少しずつ増えていったんです。

 それで「カンパニーチームドクター」(※3)という新しい概念を打ちたて、エミネクロスグループのひとつのビジネスとしての柱として取り組んでいこうと会社を立ち上げたわけです。

 
某生命保険会社でのメンタルトレーニング中のひとこま(写真提供:辻秀一氏)

※3 これまでにカンパニーチームドクターとして全社員のメンタルトレーニングを行った企業の中には、ジャパネットたかた、全日空、ファイザー、キリンビールなど一流企業も多い

現在は「オフィスドクター辻」を中心として、4つの組織がそれぞれ有機的に結合して「スポーツで社会貢献」という大きなミッションのために活動している。独立から9年間で知名度も高まり、成果を出せるようになってきたが、ここまでの道のりは決して平坦ではなかった。

独立当初は持ち出しも
 

 これまでには、いろんな困難もありましたよ。やっぱりお金の面では相当苦労しました。NPOを作った頃は、当然ですが利潤目的ではないので、なかなかお金が入ってこなくて、人件費や運営費など、家内には内緒でかなり持ち出ししました。保険を解約したり、物も売ったり。独立して3、4年は相当苦しかったですね。

 僕の場合、いつもお金がなくて、今でもお金がないんですけどね(笑)。常にやりたいことがあって、ちょっとお金ができるとすぐ次のことにつぎ込んじゃうから。

 当然家に入れるお金も減るんだけど、家内は、僕が医者を辞めて新しいことをやりはじめて、あまりに生き生きしてるもんだから文句は言わなかったですね。でも、独立してエミネクロスを立ち上げたころになると、いよいよこれでは家計的に困ると言って外に働きに出始めたんです。そしたら自分の天職を見つけちゃって、今は逆にそれで盛り上がって生き生きと働いているんですよ。ビジネスウーマンになっちゃって。そんな才覚があったのか、みたいな(笑)。

 家内や子供に対しては迷惑かけて悪いなと思ったことはありますね。あのまま慶應で内科医をやってれば、お金のことで心配かけたり、苦労かけたりしなくてもよかったんじゃないかってね。ちょうど慶應の医学スポーツセンターを辞めてフリーで好きなことをやってるときに、上の娘が小学校のお受験だったので、お金の面でいろいろ心配や迷惑をかけたなという思いはあります。

 でもその都度、いい出会いに恵まれてなんとかなってるんですよね。NPOを立ち上げたときは、僕がメンタルトレーニングをやっていた聖心女子大のラクロス部の部員で、当時大手企業で働いていた子がNPOのことを話すと給料安くてもいいから僕と一緒にNPOの仕事をやりたいといって来てくれたり……。

「クリエイツジャパン」も、そもそも僕が積極的に作ろうとしたわけじゃないんですよ。学習院大学のラグビー部員だったころに僕のメンタルトレーニングを受けた男は、卒業後は大手企業に就職したんですが、ずっと何か違うなと思って働いていました。そして企業のメンタルトレーニングの必要性を感じて無給でいいから一緒にやらせてくださいってことで僕のところに来て、それからどんどんクライアント企業を増やしていった。それが元になり、「エミネクロス・クリエイツジャパン」という会社にしたんです。だから会社にできたのは彼のおかげなんです。また、慶應大学野球部出身で某大手商社で働いていた布施努という男は、アメリカで応用スポーツ心理学の博士課程まで修了して今一緒に働いてくれています。だから僕の周りにも転職者がたくさんいるんですよ。僕の思いに共感した人がどんどん集まってきて、彼らに助けられてここまで来たんです。心強いですね。本当に彼らには感謝しています。

 

「スポーツで社会貢献」という理念を胸に、大きな目標に向かって走り続ける辻氏。しかし彼には「東京にプロバスケチームを作る」ことのほかにも夢があった。それは日本を変えてしまうかもしれない大きな夢だった。

シリーズ最終回の次回は、辻氏のもうひとつの大きな夢、そして辻氏にとって仕事とは何か、何のため、誰のために働くのかに迫ります。乞うご期待!


 
第1回 2008.1.7リリース 個人のQOLを上げて 豊かな世の中に
第2回 2008.1.14リリース自分と向き合い内科医から スポーツ医学の道へ
第3回 2008.1.21リリース QOLの重要性に開眼 運命的な出会いで独立
第4回 2008.1.28リリース スポーツで社会貢献 次々と組織を設立
第5回 2008.2.4リリース 5年後の夢は学校創立 仕事とは楽しんで生きること

プロフィール

つじ しゅういち

1961年生まれ、46歳。東京都出身。「スポーツで社会貢献」という理念の下、4つの会社、1つのNPOを運営するスポーツドクター。大学卒業後、慶應義塾大学付属病院の内科医となるが、医師としての適性に疑問を抱き、スポーツ医療の道へ。映画「パッチアダムス」でクオリティ・オブ・ライフの重要性に開眼。慶應義塾大学スポーツ医学研究センターを経て、37歳のときに独立。以降、トップアスリート、芸術家、ビジネスマン、企業などのメンタルトレーニング、複数のバスケットボールチームの運営、講演、セミナー、書籍執筆など、スポーツ、医療、教育、芸術、ビジネス等の世界で八面六臂の活躍を見せている。

【主な資格・役職】

  • 日本体育協会公認スポーツドクター
  • 日本医師会公認スポーツドクター
  • 認定産業医
  • 医療法人杏会理事
  • NPO法人キッズチアプロダクション理事
  • 都立三田高校学校連絡協議会委員

【主な監督チーム】

  • バスケ・クラブチーム「エクセレンス」監督
  • 車椅子バスケ「No Excuse」アドバイザー
  • 聾バスケチーム「Rough」監督
  • チアリーディングチーム「ライブリーズ」監督

【主なサポートチーム】

  • レラカムイ北海道バスケットボールチーム 2007〜
  • ラグビー日本代表チーム 2006〜
  • NECラグビー部 2005〜
  • 慶應義塾大学バスケットボール部 1990〜2001
  • 全日本車椅子バスケットボールチーム 1999〜2004

【主なサポート選手】

  • 和智健郎 / 喜理子(競技ダンス) 2005〜
  • 柳沢将之(プロサッカー) 2005〜
  • 小池葵(プロボディボーダー) 2002〜2004
  • 芹澤信夫(プロゴルファー) 2000〜2004
  • 佐藤文机子(プロライフセーバー) 1998〜2004
  • 平澤岳(プロスキーヤー) 1995〜2003
  • 野田秀樹(プロレーシングドライバー)1999〜2000

【カンパニーチームドクターとしての主なサポート企業】

  • 株式会社東京スター銀行
  • 株式会社ジャパネットたかた
  • 全日本空輸株式会社 客室本部
  • 株式会社ドリームコーポレーション

【主な書籍】
『仕事に活かす集中力のつくり方』(ぱる出版)
『感じて動く』(ポプラ社・指揮者佐渡裕氏との共著)
『スラムダンク勝利学』(集英社インターナショナル)
『ほんとうの社会力』(日経BP)
●そのほかの書籍についてはコチラ

【関連リンク】
■オフィスドクター・辻

■公式ブログ・元気!感動!仲間!成長!DIARY

■エミネクロスグループ

 
おすすめ!
 
『スラムダンク勝利学』(集英社インターナショナル)

社会現象にもなった井上雄彦氏の漫画作品『スラムダンク』を題材に、スポーツの社会的価値、人生との共通点を伝えようと、渾身の想いを込めて書き上げた一冊。2000年の発行から現在もなお版を重ね、30万部を記録しているベストセラー。

『仕事に活かす集中力のつくり方─“辻メソッド”でフローに集中する人生を獲得する』(ぱる出版)

長年研究してきたスポーツ心理学をビジネスに応用し、「最高の集中力を生む、揺らがない、とらわれない心のつくり方」、「ここ一番で集中するための方法、切れた集中を取り戻す方法」、「降格人事等でモチベーションが維持できないときどうするか?」などのメンタルノウハウを伝授。仕事の成果を挙げたい、充実した職業人生を送りたいと願っているビジネスマンは必読!

『ほんとうの社会力』(日経BP)

「社会力」とは「自分を元気づけ、自分らしく社会で生き抜く力」だと辻氏は定義している。その「社会力」を自分軸、他人軸、時間軸という3つの観点から分析し、更にアメリカバスケットボール界のスーパースター、マイケル・ジョーダンと、『スラムダンク』や『リアル』で大人気の井上雄彦氏の漫画作品『バガボンド』の宮本武蔵を実例にする事で、人生に必要な「社会力」をわかりやすく解説している。自分らしく生きたいと思っている人は必読。

 
 
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