高校卒業後は付属の大学に進学しました。そのころ将来の夢なんてなくて、ただ化学が得意だったから、付属の大学の工学部に入っただけのことです。まったく平々凡々、何も変わったところはなかったですね。
18歳で普通自動車の免許を取ったんですが、なぜか自動車部には入りませんでした。大学の自動車部って体育会系で、すぐに車を運転できるわけじゃないでしょ。1年生とか2年生の間は車の整備とかナビゲーター(注1)しかやらせてもらえないから、全然興味がなかったんです。だからって、自分で運転して走りたかったわけでもない。
そもそもモータースポーツには全く興味がなかったんです。というかね、モータースポーツなんてまるで知らなかったし、ラリーという言葉も全然聞いたことがなかった。まだまだ一般的じゃなかったしね。ほんとにごく一部のお金持ちがサーキットでレースをやる。モータースポーツってそういうものだったんだね。
そんな僕がラリーの世界に入ったのは、まさに偶然だったんです。たまたま大学の友達がラリーをやっていて、通学のバスの中で、「今度ラリーに出るんだけど、一緒に出ないか?」って誘われて。そのときは、「ラリー何だ???」って感じでしたよ。
レースには興味はなくても、車自体は昔から好きだし好奇心もあったから、参加することにしました。それで初めてラリーに出たんですが、初めてだからドライバーじゃなくて、ナビゲーターとして助手席です。その時に、車が走行中にスライドするというのを初めて体験したわけですよ。それが衝撃的におもしろくて「ウオォー!」って感じでしたね。別にその友達が速かったとかすごかったというわけでは全然ないんだけど、そこそこ車がスライドするわけですよ。
へぇー、こんな走り方が世の中にあるのかと、もうびっくりしてね。自分の中に全く経験のなかったことだからね。車が横滑りしながら走るなんて、考えられないでしょ。そうなると、当然今度は自分で運転してみたくなっちゃったのね。
それからは、ラリー一色の生活ですよ。ラリー仲間の中に家が自動車屋をやってるやつがいて、普段はそこに溜まって、自分たちなりに適当に車をいじくりまわしたりしてね。暇があればアルバイトして、お金が貯まると一緒にラリーに出る、そういう生活がスタートしたわけです。 |