キャリア&転職研究室転職する人びと
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一年間に転職する人の数、300万人以上。
その一つひとつにドラマがある。
なぜ彼らは転職を決意したのか。そこに生じた心の葛藤は。
どう決断し、どう動いたのか。
そして彼らにとって「働く」とは―。
スーパーマンではなく、我々の隣にいるような普通の人に話を聞いた。
第50回(後編)杉田美鈴さん(仮名)44歳/営業事務
逆境を楽しむ前向きさと コンサルタントとの出会いで 希望通りの転職を実現

大手教育会社の販売代理店で働いていた杉田美鈴さん(44歳・仮名)は、勤続13年目に会社の自主廃業によって突然職を失ってしまう。もちろん、転職先の当てはない。これまでのキャリアは一般的な事務職。専門的なスキルもないし、資格もない。さらに44歳という年齢に加え、状況は100年に1度と言われる大不況。何一つ明るい材料が見出せない中始めた転職活動だったが、ある「出会い」により、杉田さんの運命は劇的に好転していった。

譲れない条件
 

 杉田さんが今回の転職に関して譲れない条件として掲げたのは

  • 正社員であること
  • 事務職であること
  • 堅実で長く勤められそうな会社
  • 自宅から無理なく通勤できる範囲にある会社

の4つだった。

 年収はできれば400万円はほしかったが、正社員で堅実な会社の事務職として働ければ、300万円台でも構わないと思っていた。

まずはハローワークへ
 

 これまでまともに就職・転職活動をした経験がなかったので、まずは転職のいろはを学ぼうとハローワークを訪れた。すると職員は履歴書や職務経歴書の書き方や面接の受け答え方など、転職活動の進め方を基礎から教えてくれた。また、人材バンクなどの民間の転職支援企業や【人材バンクネット】などの転職情報サイトについても教えてくれた。それを頼りに人材バンクに登録したりと本格的に転職活動を開始した。

「次の転職先も、ある程度安定した企業での事務的な仕事を志望していましたが、やっぱり求人検索してもなかなか条件が合う求人はないんですよね。ある大手人材バンクのコンサルタントからは『申し訳ありませんが、あなたに紹介できる求人はありません』と登録すらさせてもらえませんでした。ハローワーク(※1)や人材バンクからも何件か応募しましたが、どれも内定までにはいたりませんでした」

 これまでの主な職歴は誰にでもできるような一般事務だと思っていた。強みとなる特別なスキルや専門知識、資格もない。そこで少しでも武器を身につけようと決断する。

「会社が閉鎖になったときの年齢は44歳。これまでのキャリアを振り返ってみると、ただひとつの会社に事務職として長く勤めたというだけでしたから、苦戦するのは当たり前。そもそも転職活動を始める前からとにかく自信がなさ過ぎたので、せめて少しでも売りとなる専門知識を身につけようと簿記の専門学校に通うことにしたんです」

久々にログインした【人材バンクネット】で
思わぬ幸運が
 

 応募していた案件がすべて不採用になり、手詰まりになった夏の終わり頃、久々に【人材バンクネット】にログインしてみた。【人材バンクネット】は退職してすぐハローワークから教えてもらい、登録だけは済ませていたのだが、慣れないインターネットを使用しての転職活動に消極的だったので、そのまましばらく放置していたのだ。

 しかしこの行動が思わぬ幸運を呼び込む。久々に求人検索をしたところ、「製薬会社の営業事務で45歳まで」という条件の求人がヒットしたのだ。

「こんな求人が本当にあるんだと思って、びっくりしました。神様が降りてきたって感じでしたね(笑)」

 早速、その求人のエントリー元である人材バンクに連絡を入れ、面談に赴いた。

面談以降はトントン拍子
 

 きっと応募者が殺到するし、一般的な事務の経験しかないから難しいだろうなと思っていた杉田さんをコンサルタントは暖かく迎えた。

 コンサルタントはこの企業と長年の付き合いがあり、社風も社長もよく知っていた上に、過去に何度か紹介実績があった。気になるところは包み隠さず教えてくれた。

「『これだけの経歴があれば大丈夫ですよ』と言って元気付けてくれたりして、親切でとても感じのいい方でした。面談を通して私のこれまでの職歴や今回の転職の希望などを的確に把握した上で、この求人を勧めてくださったので応募することにしました」

 そこからはまさにトントン拍子だった。面談したその週に早くも面接が行われ、その翌日に内定の知らせが届けられた。人材バンクに面談に赴いてからわずか2週間のスピード内定。これまでの苦労が嘘のようだった。

「それまでに受けた会社は応募から2回の面接を経て結果が出るまで1カ月以上かかっていたのに、あまりの早さに驚きました。今回は面接も1回で、和やかな雰囲気の中行われました。面接で聞かれたことは、これまでの職務経歴とかどんな仕事がしたいかとかありきたりのことです。面接官から自己PRをお願いしますと言われたときも、私の長所は明るくて真面目なところですと、まるで子供のようなことを言ってしまいましたから(笑)。でも今考えると飾らず素で受け答えしたのがよかったのかもしれません。内定の手応えは全く感じなかったのですが、あまりの気持ちよさに、これで落ちても悔いはないと思っていたほどです(笑)」

 年収も前職キープの450万円。ハローワークでは300万円でも難しいと言われていただけに、この結果には満足している。

「今回はお金の話は一切しませんでした。私は性格的にそういう話をするのが苦手なので、そういう意味でも私の代わりに企業と年収交渉をしてくれる人材バンクを利用してよかったと思います」

種をまくことが大事
 

 内定の翌月から新天地で働き始めてそろそろ5カ月が過ぎようとしている。仕事内容、社風ともにコンサルタントの説明通りで、人間関係も良好。前職以上に生き生きと働いている。

「今回の転職はキャリア的にも年齢的にも厳しいだろうと覚悟していましたが、人材バンクのコンサルタントが親身に相談に乗ってくださったので、安心して転職活動ができました。いい企業を紹介してくださった上、条件なども交渉してくださり、感謝の一言です。その人材バンクに出会えたのも【人材バンクネット】のおかげです。本当に感謝しています」

 また今回の経験から得たものも多いという。

「転職活動はまず情報を集めることと、苦しい時期も焦らず、精一杯動くことですね。私はハローワーク、民間の人材バンクなど多くの転職のプロの方に相談したり、勉強会にも行きました。まずは可能な限り“種をまく”ことが重要だと思います。どこにどんな縁があるかわかりませんからね。こんな私でも転職できたのだから、今、苦戦している中高年の一般事務の女性もあきらめずに頑張ってほしいです」

「私のように、この不況下で、何の専門スキルも資格もない44歳でも転職できたということが、現在転職活動で苦戦している方にとって少しでも希望になればと思い、取材を受けることにしました」

今回、登場していただいた杉田さんは取材前にこう語りました。

確かに職務経歴書だけを見れば、不利となる要素も少なからずあるでしょう。しかし、それだけでは決まらないのが人材バンクを利用した転職です。

杉田さんはご自身で思っているほど、売りとなるスキルがなかったわけではありません。例えば、前職では企画から管理系の職務まで幅広くこなし、マネジメントの経験もありました。見る人が見れば売りとなる立派な経歴です。

そういった強みは意外と本人には見えにくいものです。特になかなか自分に自信がもてない謙虚な人ほど、「私なんかを採用してくれる会社なんてあるのかしら…」と思ってしまいがちです。自信のなさは職務経歴書や面接にも現れてしまい、なかなか採用までに至らない。そしてますます自信をなくす。こういった負のスパイラルにいったん陥ってしまうと、脱出するのは困難です。

しかし、客観的な目でその人のキャリアを精査し、本人すら気付いていない強みを抽出し、欲している企業にアピールしてくれる人がいたらどうでしょう。

それが人材バンクのコンサルタント。今回の杉田さんのケースも、担当したコンサルタントが杉田さんのこれまでの経歴から得たスキルと人間的な魅力・能力を面談から感じ取り、それを欲している企業に紹介したことで、とんとん拍子で採用が決定。杉田さんにとっても、条件的に申し分のない、まさに両想いマッチングとなりました。

運やタイミングがよかったといえばそれまでですが、杉田さん自身の努力も決して見逃せません。資格を取るために専門学校へ通い始めたり、ハローワークでどんなに厳しい言葉を浴びせられてもいたずらに悲観したり落ち込むことなく、逆にそれも含めて楽しむという前向きな気持ちで転職活動を続けました。

そういった前向きさと行動力が幸運を呼び寄せたと言えるのではないでしょうか。何もしない者には何も起きません。杉田さんの転職体験から、行動することの大切さを改めて感じました。

(山下久猛)

 
プロフィール
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※写真はイメージです

1987年、都内の私立大学卒業後、中堅建築資材メーカーに入社。営業事務として5年間勤務した後、結婚退職。3年後、社会に出て働きたいとの思いが募り、大手教育企業の販売代理店に再就職。一般事務からスタートし、セミナー企画、市場開拓の業務等の職務を経験、その仕事ぶりが認められ、9年後には課長に昇進。しかしその頃から業績は悪化の一途をたどり、2008年、社長が自主廃業を決断。転職活動をスタートした。

杉田さんの経歴はこちら
 

ハローワーク(※1)
「ハローワークで相談すると、『あなたの年齢とキャリアなら年収で300万円ももらえたら成功だと思ってください』と言われました。また、当時は1カ月に1件応募というスローペースだったのですが、ハローワークの相談員に『1カ月に5件も6件も応募している人もいるのに、そんな甘いことじゃダメだ』と怒られました。そのおかげでもっと真剣にやらなきゃと気持ちが引き締まったので感謝しています」

 
 
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取材・文/山下久猛
※写真はイメージです
 
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