それが自覚できたことは大きな前進です。自ら変わるということは成長への第一歩です。変わるためには、今の自分にプラスアルファして太っていくっていうのではなくて、何かを捨てなきゃダメです。今持っているものをただひたすら守ろうとしがみついているのではなくてね。捨てる勇気はすごく大事。それは自分がステップを踏んで上がっていくための大切な一つのスキルみたいなものです。
そう。例えばこれまでもっていた「自分らしさ」をいったん捨ててみる。これまで自分で自分を規定していた枠を壊してみるんです。するとまたいろんなものが見えてきて、これまで手をつけられなかったことにチャレンジできる。その結果、成長につながるんですね。
いわゆる「MAP」をしっかりもってる人ですね。
いえいえ。そのMAPじゃなくて(笑)。「M」はモチベーション。仕事に対する意欲、動機づけですね。「絶対やってやる」という強い気持ち。志ともいえます。「A」はアドバンテージ。総務だったら、人の名前を覚えるのが得意とか、丁寧に仕事をこなせるとか。他の人にはない自分の優位性をもっているかどうかっていうのが大事。これがないと他の人に取って替わられちゃうから。でも最も大事なのは、「P=プラス」なんです。
やっぱり人って、なにか自分にとってプラスになる人と仕事をしたいわけですよ。おいしい仕事は全部自分のものにしちゃって他人には何も与えない人や、全部自分がやったような顔をする人とは一緒に仕事をしたくないでしょう? 人のために何かをやってあげたり、いいポストをゆずってあげたりしてると、結局長い目で見ると自分に返ってくるということなんですよ。
ね、なんとなくわかるでしょう? 仕事だって、ちゃんとやって、できたらそれに固執しない。手放すとそれよりもっとおもしろくてやりがいのある仕事がやってくるんですよ、不思議と。
大体利己的な上司で好かれている人はいない。それは先輩でも一緒。そこはすごく大事って思いますね。だからその「P」を時々自分で見直してみるのが大事ですね。
今の市川さんの場合は動かない方がいいと思いますよ。なにが問題なのか、その根本が分かってないとどこにいっても同じですからね。市川さんの場合、まず目の前の仕事に本気で取り組んでみるという課題ができましたよね。それをやった後でも遅くはないです。
確実にできることから一つひとつやっていくっていうことが大事ですね。転職に関して言えば、自分が変ることによって会社の器がちっちゃくなったと感じた時に考えればいいじゃないですか。もっとやりたい仕事、なりたい自分がでてきて、今の会社では実現できそうにないと思ったりしたときに真剣に考えればいいと思いますよ。
これまで取材してきた若いビジネスパーソンの中には、煮詰まっちゃっていきなり今までのキャリアに全然関係ない資格を取ってみたりする人、けっこういるんですよ。それで何かが変わるんじゃないかってね。でもね、そんなもので本質的な問題は何も解決しないんですよね。だからいきなりガラッと変えるんじゃなくて、少しずつ、目の前のことから変えていった方がいいと思います。
悩むこと自体は悪いことではありません。悩んだり苦しんだりするからこそ、未知の自分と出会えるんですから。大事なのはそこで止まっちゃいけない。そこで「自分探し」をしてもそこからはなにも出てこないってことですね。そもそも「仕事探し」は「自分探し」の過程にあるものではなく、確かな生活の一部なんですから。
ぜひ「変化」への一歩を踏み出してください。仕事を好きになれば自分のことだって好きになれるはずですから。
1975年立命館大学文学部を卒業、同年サントリー株式会社に入社。1989年サントリー不易流行研究所の設立メンバー、1998年3月より部長。サントリー不易流行研究所は2005年3月次世代研究所に名称変更。次世代が希望を持って幸せに生きていくための調査研究を行っている。
現在、国土交通省交通政策審議会委員、文部科学省中央教育審議会委員、国際日本文化研究センター客員教授など、各方面で活躍中だが、現在特に力を入れているのが若手起業支援の草分けNPO法人ETIC.とのコラボプロジェクト「Work-Life Innovators'」。「働くを取り戻せ」をスローガンに、若手起業家、社会人、学生が集まり、自分らしく豊かに働くために、新しい働き方を創っていくことに挑むプロジェクト。 佐藤氏のメッセージはこちら ・サントリー次世代研究所の「Work-Life Innovators'」に関するページはこちら