中小企業の「強い組織」のつくり方

FFS理論と海兵隊に学ぶ

株式会社ヒューマンロジック研究所 代表取締役 古野 俊幸氏

[profile] 関西大学経済学部卒 新聞社、フリージャーナリスト、出版社・教育会社を経て、組織能力開発を専門とする株式会社CDIヒューマンロジックの設立に取締役として参画。小林博士のもとでFFS理論の活用、商品開発、組織変革コンサルティングに従事。これまでFFS理論を三百数十社へ導入、組織の最適化、チームビルディングを担当してきた。著書に「人材の適正配置と最適組織編成マニュアル」(共著)、「組織変革への12ステップ」(組織人事監査協会)その他論文多数。

はじめに(強い組織の創り方 FFS理論と海兵隊に学ぶ)

人材開発システムの設計のポイント

「企業は人なり」と、よく言いますが、まさに中小企業のためにあるようなものです。大手企業は、「人・モノ・金・情報」の資産を、規模や数の議論で戦ってきました。今は人や不良債権化したものを減らすことで、利益の拡大を狙っています。

では、中小企業はどうでしょう?規模や数で戦ってきたわけではありませんし、不良化していないため、減らすことで、大きく利益に貢献したわけではありません。では、ずっと好調か、と聞かれれば、可もなく不可もないという状態なのではないでしょうか?

つまり、勝負するには十分な資産はあるものの、なかなか一気に勝負に出られない。新規事業や新しいビジネスモデルの構築の必要性もあり、意欲もあるが、「出来ていない」というのが現状のようです。ややジリ貧状態と言ってもいいのかもしれません。

現在、皆さんの会社と資本や規模が近しい中小企業数十社の組織変革や人材開発システムの構築を支援していますが、ほぼ似通った状況のようです。では、なぜこのようなことが共通して起こっているのでしょうか?我々がトップインタビューすると「中小は大手企業のよう人がいない」という声を聞きます。人事部門の現場責任者に聞いても、ほぼ同じです。

しかし本当にそうでしょうか?
ちなみに、我々が「組織体監査」(FFS理論に基づき、全社員の思考行動パターンの分析と組織全体の風土や人材の分布、関係性分析をおこなう)という組織・人材分析をすると、やや同質化している傾向が強く、力を発揮しているかいないかを示すストレス値もアンダーストレス状態(慢性化及び、気が抜けたディモチベート状態)です。しかし、出現率は低いものの、変革や改革の推進、事業の立ち上げを得意とする人材は結構いますし、異質性という意味での多様なバランスもあるのです。ただし、現状維持を得意とする人材が多勢に無勢のため、このままいけば現状を維持し続けて、「ゆで蛙状態」で沈んでしまうのでしょう。それは、一人ひとりの持ち味・強みを活かしきれていないからなのです。

ではなぜ活かしきれていないのか? それは戦略と組織・人材のミスマッチ、配置のミスマッチがあるからなのです。
特に、ハイテク企業でない限り、戦略よりも戦術優位な取り組みが成功のためのポイントになります。戦術とは「最前線対応」ですから、現場の人が活き活きと働ける環境を創ることが一番なのです。その限りにおいて「人を活かす取り組み」が必要なのでしょう。

では、人を活かす取り組みとは? それは、「採用」「教育」「配置」「評価」「処遇」「キャリアパス」という一連の流れを、その企業の戦略・戦術に合わせて最適化することなのです。この一連の流れを「人材開発システム」と呼んでいます。人事制度を見直す会社が多いですが、人事制度は、どちらかといえば「評価と報酬+キャリアパス」が主で、採用や教育、配置(組織デザインとチームビルディング)に言及することはほとんどありません。

また採用戦略を考える上でも、一連の流れが構築されていないと、採用すべき人材像が不明確でお金をかけた割に欲しい人材が採れなかった。採れたはいいが、活かしきれずに辞められた、等々の無駄な損失が出ています。つまり、現場の皆さんは精一杯しているのでしょうが、そもそも片手落ちの制度や運用のため、どんなに頑張っても、ほどほどの成果しか出ていないのです。

実は米国海兵隊は、最強組織と呼ばれていますが、その基本は「現場主義」にあります。最前線が戦場(企業で言えば顧客)を一番よく知っているため、現場の判断、意思決定を重視し、そのための組織創り、チーム編成を徹底しています。採用から教育、配置、評価、処遇の一連の流れは、まさに「最前線で意思決定できる人材育成」であり、それを支える組織創りに他ならないのです。

我々は、海兵隊が最強組織へと変貌を遂げた理論とノウハウである「FFS理論及び、コンビネーション・マネジメント・メソッド」を持っている唯一の会社であり、民間企業の最適化、最強化を支援しています。この連載では、最小のコストで最大の効果を出すための「強い組織」の創り方を、海兵隊で実績や多くの企業で成果を出してきた方法やノウハウをご紹介したいと思います。

株式会社ヒューマンロジック研究所
コンビネーション・マネジメントのメソッドを活用して、経営支援(組織の最適化、組織変革、チームビルディング、チームマネジメント)、経営代行(労働集約型企業の経営請負)、事業開発(新規事業開発、FC化)を手掛けている
URL:http://www.human-logic.jp/
2003.10.21 update

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