「シニア・プロフェッショナル」採用後の期待
森村 学
「ワークライフバランス」という言葉をよく耳にするようになってきました。「働き方の柔軟性を追求し、仕事とプライベートを調和させ、相乗効果を及ぼし合う好循環を生み出す」という意味のようです。
ここでいう「プライベート」とは、休日や業務終了後の時間の充実ということだけではなく、育児や介護等、通常の勤務形態では業務に支障をきたす可能性がある私的な事情ということも含まれるようです。我々のような仕事をしていると、介護と仕事が両立できずにやむを得ず退職された方にお会いすることもあります。逆に、仕事のことや会社での人間関係に悩み、誰にも相談できず鬱病になり、仕事だけでなくプライベートにも支障をきたすという例を耳にすることもあります。
人材確保が困難になっている状況からすると、採用による人員の補充だけでなく、社員を定着させていくことが重要になってきます。新たな世界に踏み出すための転職は避けられないにしても、上述のような要因で、貴重な人材が離れていくことは、企業としては絶対に避けなければならないことです。
昨今では、「メンタルケア」専門の部署を新設したり、専門コンサルタントと契約する企業も増えてきているようですが、中小企業やベンチャー企業が同じことをしていくことは、コスト面を考えると現実問題として難しいと言えるでしょう。
そこで期待されるのが、シニア・プロフェッショナルの存在です。
ビジネスだけでなく、人生経験が豊富な方々ですから、悩んでいる若い世代の相談相手としては貴重な存在であることは間違いありません。
産業カウンセラー資格をお持ちの方を人事部で採用する方法だけではありません。資格はなくとも、何らかの職種で採用した方に、そういった役割も担っていただけばよいのです。
そこで重要となってくるのが人間性です。人格力を持ったシニア・プロフェッショナルだからこそ務まる役目です。
専門家の方からすると、「そんなに簡単な問題ではない」との意見が出るかもしれません。しかし、気軽に悩みを相談できるような雰囲気を創り出すための第一歩とするには十分ではないでしょうか。逆に、ビジネスマンの、人生の大先輩として、そのような役割を担えない方であれば、採用する意味が無いといっても言い過ぎではないかもしれません。
シニア・プロフェッショナルの存在は、実際の実務だけではなく、様々な方面で重要となってくるでしょう。
成功も失敗も数多く経験し、人格力を兼ね備えた「シニア・プロフェッショナル」の採用を、是非ともご検討ください。
長期に渡って連載してきたコラムも、今回を持って終了させていただきます。
今後もプロフェッショナル・マスターズでは、常勤監査役や顧問・アドバイザーを中心に、シニア・プロフェッショナルの方々に活躍していただける場面がますます増えていくよう、様々な情報を配信してまいります。
今後とも、よろしくお願い申し上げます。