経営ソリューションツールとしての「人材モデル」・8/12
株式会社クイック ヒューマンキャピタル総合研究所
最後に「人材モデル」を組織に関する課題に用いた事例をご紹介します。「人材モデル」をリプレースメント(人材の適性再配置)で用いる場合、様々な方法があります。ここでは人材を「成熟度」と、職務遂行に関する「有能感」のマトリックス上にプロット(点を打つ)し、組織構成員の関係性を分析した結果から人材の組み合わせを検討し、再配置(異動)したケースを説明します。
リプレースメントは、図7〜10を用いて説明いたしますが、これらの図は人材の「成熟度」を横軸に、「有能感」を縦軸としてできています。「成熟度」とは、人間が成長する過程で未成熟から成熟へと[表5]のような変化が生じます。
この「成熟度」は、「人材モデル」の「パーソナリティ傾向」「欲求傾向」「行動傾向」を構成する30の因子に重み付けをし加重して得ています。「成熟度」は、ビジネスシーンにおいては、マネジメント適性やリーダシップの発揮度、また各種職務等への適応の幅(範囲)として表れます。
次に「有能感」ですが、これは自分の職務遂行上の有能さに対する自己認識であり「職務に関する成熟度」とも言い換えることができます。内容的には、やはり「人材モデル」の被験者に実施したアンケートの中で、「対人能力」「思考能力」「意欲」に関しての自己評価を訊いたものです。ケースに応じて、縦軸は人事考課の結果などに置き換えることもあります。 この、「成熟度」と「有能感」のマトリックス上の位置に応じて[表6]のような傾向を示します。
成熟度 | |
低い(未成熟) | 高い(成熟) |
他律的な状態 | 自律的な状態 |
他者依存 | 相対的独立 |
狭い活動範囲 | 広い活動範囲 |
対象に対しての関わり方が浅く移り気 | 対象に対しての関わり方が深く安定的 |
短期的な見通ししか立てられない | 長期的な見通しを立てられる |
従属的立場の状態を甘受する | 上位の立場を占められるように励む |
自己意識の欠如 | 自己意識の認識と統制 |
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<有能感=高い、成熟度=低い> 適性に合う職種の幅は狭いが、現在その範疇で自信を持って職務遂行している可能性が高い。ただし自尊心が高かったり、自己認識が不足している場合は、これらの信頼性は低くなる。実際の業務成績が高い時は、経験と学習を通し努力を重ねた結果といえるが、この成果は環境変数の影響を受けやすいともいえる。 |
<有能感=高い、成熟度=高い> 有能感に対する自己認識が高く、実際的な職務遂行の実現性が高い。オールマイティに職務をこなせる可能性があるが、周囲の人材とのプロット上の距離がある場合、組織のなかで突出し、調和が保てない場合がありうる。環境の影響は比較的少ない方ではあるが、有能な上司のもとでないと、活かしきれない場合がある。 |
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<有能感=低い、成熟度=低い> 実際の業務成績が低い場合、仕事への熱意や組織への帰属意識が薄れている可能性が高い。 ただし、新たな組織や職務について間がない場合はこの限りではない。パーソナリティ傾向で内閉性が高い場合は、集中力や持続性を活かせるルーチンワークなどで一定の成果を挙げさせることがよい。自己成長の為の努力を要す。 |
<有能感=低い、成熟度=高い> 個人特性的には潜在能力があるが、自己認識が不足しているのか、まだ現在の職務に関しての経験が少ない場合が考えられ、能力の発揮が充分になされていない可能性がある。自覚を持ち、自信も持って仕事に取り組む事ができるような指導と環境整備が求められる。 |