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教育考

経営コンサルタント 佐藤 修一

今の日本で最大の問題は、義務教育段階から学力や教育機会の格差が広がっていることだと思います。日本は高度成長期まで教育環境整備の予算を拡大しましたが、その後は政治が教育に力を注いできたとは言えません。今回は、“教育考”についてお伝えしたいと思います。

人は才能・努力・業績によって評価されるべきだ、という考え方を「メリトクラシー」と言います。これに対して親が情報収集し、指導し、環境をつくることが重要になる、との考えを、英国の学者は「ペアレントクラシー」と言い、日本における慣習もこれに当てはまります。受験重視・テスト重視が強まる中で、人々の学力観や人間観をゆがめる枠組みになってきました。
小中学校段階での学校選択は、親の意向や家庭の経済力に大きく規定されます。日本は方向転換しないと、ペアレントクラシーが今以上に拡大して「格差教育から格差社会」の悪循環が進むことになります。
それは、子供の留学や「お受験」のような選択行動が増え、一方では公教育のシステムが格差的・差別的なものに再編されてきたことによるものです。
選抜や振り分けの時期は遅いほど好ましいと思います。現状、重大な選抜が高校入試から中学受験、そして小学校の習熟度別授業へとどんどん低年齢化しています。
子供は、自分が属するグループに合わせようとする力を持っています。通常のクラスで学べば、小学校高学年、中学生から伸びる子もいるのに、そうした機会を奪われ、下のクラスになった子は中高生になっても上のクラスに上がることは難しくなります。これは、伸びる機会が閉ざされ、将来の人材を浪費しているともいえます。

各国家計の教育費負担の割合を見ると、

教育費負担の割合

(子のいない世帯、子が独立した世帯などを含む各国全世帯の家計支出の中で、教育費の占める割合で、日本の平均を1とした場合。国際労働機関の資料などをもとに作成)

このようになります。

さらに、具体的な教育費は、

各国の教育費
韓国 約660万円(小学校から大学までにかかる費用)
アメリカ 約190万円(低所得層)
約330万円(中所得層)
約700万円(高所得層)
日本 約865万円(幼稚園から大学まですべて国公立の場合)
約2,300万円(幼稚園から大学まですべて私立の場合)
オーストラリア 約390万円(高校まで公立の場合)
約1,270万円(高校まで私立の場合)
イギリス 約770万円(高校まで公立の場合)
約1,890万円(高校まで私立で通学制)
約2,740万円(私立で寮制の学校の場合)

(リバプール・ビクトリア・フレンドリー・ソサエティー調査 2009年1月発表)

であり、子供(個人)の才能を伸ばしてくれそうな個性ある学校(私立)が注目されており、その分教育費も負担増となっています。

子供の将来に対する親の期待は、

親が期待する子供の人物像
  東京 ソウル 北京
リーダーシップのある人 6% 46% 16%
のんびりと生きる人 10% 33% 26%
社会のために尽くす人 10% 20% 26%
まわりから尊敬される人 13% 26% 46%
仕事で能力を発揮する人 20% 20% 46%
自分の家族を大切にする人 70% 70% 73%
他人に迷惑をかけない人 70% 23% 3%
友人を大切にする人 73% 13% 13%

(ベネッセ教育研究センターの東アジア都市調査 2005年実施)

3都市とも「自分の家族を大切にする人」が高い値を示しましたが、東京では「友人を大切にする人」「他人に迷惑をかけない人」が抜きんでて高く、北京では「仕事で能力を発揮する人」、ソウルでは「リーダーシップのある人」が高いのが特徴的です。

問題は、能力や個性を測る道具として、「テスト」という、ものさししかないと考え、それを重視し過ぎることだと思います。
日本には、部活動や生徒会活動など、学校の中に多様なものさしが根付く可能性があり、海外の専門家からも評価されていました。ところがいま、テスト・進学という一つのものさしが偏重されています。教育方針には「個性を伸ばす」と掲げながら、特に中高校では進学実績を競い合っています。受験戦争の弊害が問題になった60〜70年代よりも学校の序列化が進んでいます。

上記の視点から、教育機会の格差に対応するには、三つ考えられます。

  1. アメリカ型
    自己責任と市場原理を基本とし、格差や貧困には慈善的な救済策で対応する。
  2. 北欧型
    「高負担・高福祉の社会」 国民が高率の税金を払い、最善の教育を受けられる。
  3. 英国・ドイツ型
    「中負担・中福祉の社会」 上記の中間。

日本が進むべきは、伝統的な文化や社会のあり方、人口規模や資源を輸入に頼る制約からみて三つ目の道だと思います。

佐藤 修一(さとう しゅういち)/経営コンサルタント・シニアカウンセラー

住友ビジネスコンサルティング(現 日本総合研究所)にて人事戦略コンサルティングに従事。経営人事に注視し組織欲求と個人欲求の統合を目指す。
※組織変革、人事労務管理、トータル人事システムの構築、能力開発等。
[ アウトプレースメント会社 ]人事コンサルティング事業の構築、求職へのキャリアマッチング、社内カウンセラーの能力開発、スーパーバイザーを担当。
[ 行政機関・大学 ]キャリアカウンセリング、キャリアデザイン、キャリアディベロップメントの講義

[ 資格 ]経営士、経営情報診断士、帳票管理士、監督士、シニアカウンセラー、販売士養成講師、 余暇生活開発士、余暇生活相談員、心理相談員、東京都中高年齢者福祉推進員、東京都アドバイザリースタッフ等
[ 大学/学会等 ]中小企業大学校、千葉工業大学、千葉商科大学、上武大学各講師 国際TA (交流分析)協会名誉会員、日本産業精神保健学会 認定専門職

  • 探究心旺盛なことから、日本でただ一人いる、フロイトの孫弟子に師事し臨床経験からカウンセリング、カルテ、薬等様々に学ぶ
  • 官公庁及び電力会社など公的企業、大手企業を中心にコンサルテーションを実施する
2009.10.7 update

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